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「いいね」「リツイート」が子どもの感受性に影響を及ぼす!? 小児期のSNS利用と脳発達の関係

 更新日:2023/03/27
小児期のSNS利用が脳発達に影響との研究結果

アメリカ医師会が発行する医学雑誌「JAMA Dermatology」にて、小児期におけるソーシャルメディア(SNS)の利用と脳発達の影響についての研究結果が公表されました。研究によると、「小児期の頻繁なSNS利用は、社会的報酬および社会的罰に対する脳の感受性に影響を及ぼす可能性がある」とのことでした。このニュースについて郷先生にお話しを伺います。

郷 正憲医師

監修医師
郷 正憲(医師)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。

小児期のSNS利用と脳発達への影響の関係は?

今回「JAMA Dermatology」にて発表された、小児期におけるSNS利用と脳発達への影響の研究内容について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

アメリカのノースカロライナ大学チャペルヒル校のMaria T. Maza氏らは、小児期におけるSNSの利用頻度と脳発達の関連について調べるため、3年にわたり機能的MRI(fMRI)を用いて、児童の脳活動の変化について調査をおこないました。ノースカロライナ州の中学校に通う169人(平均年齢12.89歳)の児童が研究対象となりました。

対象の児童たちに対して、Facebook、Instagram、Snapchatの3つのSNSのチェック頻度を尋ね、それをもとに頻繁にSNSを利用する児童とそうでない児童に分けました。その結果、頻繁にSNSを利用する児童は、社会的フィードバック(社会的報酬と罰)に対する脳の感受性が3年間で増加していくことが判明しました。反対に、SNSを頻繁に利用していない児童は、社会的フィードバックに対する脳の感受性が3年間で減少していったとのことです。

この研究結果から、「小児期における頻繁なSNSの利用は、社会的報酬および社会的罰に対する脳の感受性に影響を及ぼす可能性がある」ということが示唆されました。

社会的フィードバックとは?

「頻繁なSNS利用により、社会的フィードバックに対する脳の感受性が増加する」とのことですが、そもそも「社会的フィードバック」とは何か教えてください。

郷 正憲医師郷先生

社会的フィードバックとは、社会(他者)から受ける評価や反応のことです。小児期は他者からの評価や反応に対する脳の感受性が高く、脳の発達において重要な時期であると言われています。小児期だけでなく大人であっても、他者から良い評価をもらったり、認められたりすること(社会的報酬)は大きな喜びにつながります。

今回の研究では、SNSを頻繁に利用する児童は、SNSでの「いいね」や「リツイート」などの他者からの評価が社会的報酬となり、脳の感受性に影響を及ぼしたのではないかと考えられます。

小児期のSNS利用と脳発達への影響についての受け止めは?

今回「JAMA Dermatology」にて発表された、小児期のSNS利用と脳発達への影響についての受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回の研究結果をどう捉えるのかは難しいところです。この研究で明らかになっているのは、「SNSを頻繁にする子どもは、周りからの評価を気にする傾向が強い」ということであり、それが脳の学習や成長、発達にどのような影響を与えるのかについては触れていません。もちろん、それが良いことなのか悪いことなのかも触れていないのです。

少なくとも、これまでの児童の精神的な発達に関する研究で「他者との関わりが重要である」ということは、再三にわたって述べられてきました。他者とよく接する子どもは、そうでない子どもと比べて社会性が高い子どもになり、コミュニケーションをよく取る傾向に成長するということは周知の事実です。

今回の研究結果は、「他者との関わりがSNSという形であっても、社会的フィードバックを強く受けることができる」のを明らかにしたという意味で、従来から言われている社会性の獲得と整合性が取れていると言えます。そのため、例えば「病気などで外出が困難な子どもや田舎などで他者と接する機会が少ない子どもなどには、SNSを通じて他者と関わる機会を増やすことで社会性を伸ばせる可能性がある」という風に、今回の研究結果をポジティブに捉えることはできるでしょう。

ただし、社会的報酬を得るために行動がエスカレートしたり、ほかの学習時間を削ったりしてしまうマイナスの面が出現する可能性も大いにあるので、無条件に子どもがSNSを利用するのは避けた方が無難だと思われます。まとめると、今回の研究結果はあくまで1つの可能性として捉えるべきでしょう。

まとめ

ノースカロライナ大学チャペルヒル校のMaria T. Maza氏らの調査によると、「小児期における頻繁なSNS利用は、社会的報酬および社会的罰に対する脳の感受性に影響を及ぼす可能性がある」ということが分かりました。昨今、日本においても小児のSNS利用については様々な見解がある中で、頻繁なSNSの利用が小児の脳や心理的発達にどのような影響を及ぼすのか、今後さらなる研究に注目が集まります。

この記事の監修医師