【親必見】子どもの「不安症」の症状を精神科医が解説 じつはあなたも昔患っていたのかも?
コロナ禍で子どものメンタルヘルスに注目が集まるようになりました。大人が「こころの風邪」としてメンタルヘルスに問題を抱えるのと同様に、子どものこころも同じように不調を来します。子どものメンタルヘルスの問題として最も多く見られる「不安症」について、児童精神科医の岡琢哉先生に解説してもらいます。
監修医師:
岡 琢哉(株式会社カケミチプロジェクト)
子どもでもメンタルの不調ってあるの?
編集部
子どもでもメンタルヘルスの不調を来すことがあるのでしょうか?
岡先生
もちろんあります。大人とは表出の仕方が若干異なるため、気づかれないことも多いのですが、過去のWHO(世界保健機関)の報告では、10~20%の子ども達がメンタルヘルスの問題を抱えているとされています。
編集部
子どもはどんな形でメンタルヘルスの不調を表出するのでしょうか?
岡先生
年齢やその子の発達の状況によって、表出の仕方は異なります。大人のようにこころの不調が「言葉」で表出することはほとんどなく、心理的・身体的な症状あるいは行動として現れます。
編集部
具体的にはどんな症状や行動で現れるのでしょうか?
岡先生
心理的な症状としては、主に不安や抑うつといったものが挙げられます。強い不安は緊張感を高めるため、疲れやすくなったり、ソワソワと落ち着かない気持ちに駆られて動き回ったりしてしまいます。また、子どもの抑うつでは「自分を責めてしまう気持ち」が強くなることで、イライラしたり、感情的になりやすくなったりもします。身体的な症状としては、お腹の痛みや吐き気といった消化器症状、頭痛やめまい、胸がドキドキする、よく汗をかくといった自律神経症状などが現れます。そのほかのよく見られる行動として、両親に対する急な「赤ちゃんがえり」を起こしたり、強く甘える一方で反抗的な態度や暴言を発したりすることがあります。
子どもの不安症ってどんな病気?
編集部
うつ病はよく聞く病名ですが、不安症とはどんな病気なのでしょうか?
岡先生
米国精神医学会の診断基準である「DSM-5」では「過度の恐怖と不安、そしてそれらに関連した行動上の障がいを特徴として共有する疾患」と定義されています。恐怖や不安というどんな人間でも持っている感情があまりにも強く生じてしまい、生活上の困難さに繋がってしまう病気です。
編集部
子どもの場合、不安症はどんな症状が現れるのでしょうか?
岡先生
不安症は、年齢によって現れやすい症状が異なります。幼稚園から小学校低学年の頃に現れやすいのは、恐怖症と分離不安の症状です。恐怖症の症状は、動物や虫、暗い場所といった特定の対象に近づく(もしくはその可能性がある)場面で強く泣いたり、その場を避けたり、家族にしがみつくといった行動で現れます。分離不安の症状は、家の中でも家族が目に入る場所にいないと落ち着かなくなったり、家族が出かけるのを強く拒否したりという形で現れます。
編集部
年齢が上がるとまた症状が変わるのでしょうか?
岡先生
10歳前後から、対人場面や人前での食事に対する不安として、社交不安の症状が現れ始めます。給食を嫌がる子どもの中には社交不安を持っている子どももいるので、単なる好き嫌いで片付けないことが重要です。そのほかにも、思春期に近づくにつれて、学業や外見、将来に対する過剰な不安が生じる全般性不安と呼ばれる症状が現れます。このような不安は、周りに上手く話すことができずに、疲れやすさや落ち着きのなさといった形で表出されます。
不安症の子どもにはどう対応したら良いの?
編集部
もし子どもに不安症の症状が見られる場合にはどうしたら良いのでしょうか?
岡先生
まずは身体的な問題がないかどうか、小児科の先生に診察してもらうことが重要です。メンタルヘルスの問題のように見える身体疾患もあるため、まずは身体の病気でないことを評価することが最も大事です。
編集部
その上で不安症とわかった場合は、何をすべきでしょうか?
岡先生
不安症で重要なことは子どもが「不安を乗り越えられるように」サポートしていくことです。一定の休息期間は必要ですが、不安をずっと避けてしまうと症状がよくなる機会を失ってしまいます。家族だけでなく教育機関や医療機関・心理支援を行う機関と連携して、子どもと一緒に不安と立ち向かう体制を整えることが必要です。
編集部
そのほかに気をつけることは何かありますか?
岡先生
発達障害を持つ子どもは、不安症を発症するリスクがとても高いことが知られています。幼少期に発達障害と診断されることがなかった子どもが不安症を発症し、不登校になることで初めて発達の評価が行われることも少なくありません。このような子どもの場合、不安症の症状が落ち着いた段階で発達障害の特性やその子どもの得意不得意について改めて評価することが、再発を防ぐためにも重要になります。
編集部まとめ
子どものメンタルヘルスの問題が注目されるようになった一方で、具体的な症状や対応法についてはまだ十分には知られていないのが現状です。子ども達が自分たちの困りごとを適切に表現するためにも、まずは大人の方が子どものメンタルヘルスに関する正しい知識を身につけることが重要です。特に不安症の対応は「わがまま」や「気合いが足りない」といった感情的で主観的な判断をしてしまう大人も少なくないため、子どもの不安をきちんと受け取り、一緒に乗り越えられる大人を増やしていくことが大切です。