「不安症」とは?症状・原因・診断についても解説!医師が監修!
不安症は、不安を伴う様々な症状が日常生活に支障をもたらす精神的症状です。
心の病気には様々なものがありますが、不安症はどのような病気なのか知らない人も多いのではないでしょうか。
不安症がどんな病気なのか、治療方法・発症後の過ごし方など、誰しもが陥る可能性がある不安症について詳しく解説いたします。
監修医師:
稲川 優多(医師)
目次 -INDEX-
不安症ってどんな病気?
不安症とはどんな症状がみられる病気ですか?
- 不安症は、不安が伴う様々な症状が通常の限度を超え、行動や心理的に障害をもたらす精神的症状をまとめた名称です。不安障害と呼ぶ場合もあります。不安症には、社交不安症(社交不安障害)・全般不安症(全般性不安障害)・パニック症(パニック障害)などがあり、動悸・めまい・発汗・窒息感・吐き気・手足の震えなどの症状がみられることが多いです。
- 不安が強い恐怖感や緊張感のきっかけとなり、心が落ち着かない・集中できない・イライラする・不眠などの症状が出る場合もあります。精神的な病気である不安症は、1人1人の考え方や感じ方が異なるように、症状も個人差があります。
発症する原因が知りたいです。
- 不安症の発症の原因は、まだはっきりと解明されていないことも多いですが、以下の要素が発症に影響を与えていると考えられています。
- 遺伝的な要因
- 環境(人間関係などのストレス・生命を脅かす外傷的な出来事など)
- 精神的な気質
- 身体的な状態
- 薬の影響
- 不安や恐怖は誰しもが抱く感情です。しかし、極度のストレス・予想外の出来事に打ちのめされるなどの出来事がきっかけとなり、日常生活に支障をきたすような症状につながり不安症を発症するケースが増えています。また、身体的な病気や薬の影響も不安症の発症原因の1つです。アルコール・カフェイン・アンフェタミンなどの中枢刺激薬なども不安を誘発する成分に挙げられます。これらの成分が必ずしも不安症の発症原因になるわけではありません。しかし、人によっては不安を誘発する引き金になる場合があります。
不安症はどんな人が発症しやすいですか?
- 不安症の1つであるパニック症は、10代後半~30代の間に発症する人が多いといわれています。また、パニック症をはじめとする不安症は決して珍しい病気ではありません。日本人の100人に1人、つまり1%の割合の人がパニック症をはじめとする不安症と診断されています。不安症は男性よりも女性の方が割合として多いです。しかし、男性の不安症患者が少ないというわけでもありません。また、不安症になりやすい性格傾向は統計学的にはっきりと解明されていません。ただし、以下のような性格傾向を持つ人が不安症を発症しやすいとも考えられています。
- 神経質
- 内向的
- 心配性
- 完璧主義
- 感受性が高い
- こだわりが強い
- このような性格傾向がある人は、当てはまらない人よりも不安症に陥りやすい可能性が高いといえます。上記で挙げた性格傾向は不安を抱きやすいだけではなく、失敗や恥への極端な恐怖心・劣等感・他人への恐れなどを抱きやすいため、不安症に陥る可能性が少なくありません。また、不安症の発症は遺伝的要因も影響していると考えられており、不安症の家族がいる人も発症しやすい可能性があるといえます。
放置しておくのは危険なのでしょうか?
- 不安症とわかったら、適切な治療を始めることが大切です。不安症は、あらゆる不安によって日常生活に支障をきたすことから、放置しておくことで通常の日常生活を送ることができず辛い状況が続くことが予想されます。また、放置しておくことで症状が悪化したりうつ病を引き起こしたりする可能性があります。不安症が疑われる症状がある場合やはっきりとした症状がなくても不安感が何日も続いて辛いときは専門医に相談しましょう。
不安症の診断・検査や治療方法とは
不安症の受診目安を教えてください。
- 不安や恐怖を感じる場面は日常生活で多々あります。しかし、その不安感や恐怖感が1日の大半を占めている・疲労感・睡眠障害などに悩まされるようであれば、心療内科や精神科の受診を検討しましょう。
- 不安症の1つであるパニック症に悩まされる人の中には「電車やエレベーターに乗れない」など、日常の当たり前の行動が困難となり外出すること自体が怖くなりできなくなる人もいます。このように極度の不安・恐怖から今までできていた行動ができなくなった・不安や恐怖を自分でコントロールできない場合も診察を検討しましょう。
不安症の診断や検査はどのように行うのですか?
- 誰しもが多少なりとも不安やストレスを抱えていますから、不安症の診断は容易ではありません。一般的には、不安によって強い苦痛が生じていないか・不安が原因で日常生活に支障をきたしていないか・不安を感じる期間などを診察の中で聞き取り、慎重に診断していきます。
- また、不安症の家族がいないか・うつ病などの他の精神的な病気がないかも確認します。不安症は検査で確定するものではありませんが、症状が身体的な病気によるものかどうか明確にするために血液検査などの検査を行う場合も多いです。
治療方法が知りたいです。
- 不安症の治療は、患者1人1人に合わせて薬物療法・認知行動療法などを行います。薬物療法は、不安症の治療によく用いられる治療方法です。現在あらわれている症状を抑えるための対症療法として薬物療法が用いられる場合もあれば、根治的な薬物療法として用いられる場合もあります。
- また、不安症のタイプに合わせた精神療法や認知行動療法なども治療方法として有効です。精神療法や認知行動療法では、不安や恐怖を高めてしまう考え方の癖を改善したり少しずつ苦手なことに慣れていく心理療法を行ったりして、不安を乗り越える治療を進めていきます。
不安症の治療はどのくらい続きますか?
- 不安症の症状は人それぞれです。個人差が大きい心の病気でもあるため、治療期間も個人差があります。治療を始めてすぐに効果がみられる人もいれば、ゆっくり時間をかけて症状が良くなっていく人など様々です。ただ、不安症を含め精神疾患は、一般的に治療に時間を要します。焦らずゆっくり自分のペースで治療を進めていくことが求められるため、早い人で半年、遅い人で2年ほど治療が続く場合もあります。
- 不安症は急に治るものではなく、時間をかけてゆっくり治療していく病気です。時間が必要なことを理解し、根気強く治療していくことが大切です。
不安症を発症した際の過ごし方やサポート方法
不安症を発症した場合、どのように過ごしたら良いですか?
- 不安症を発症したら、無理のない生活を送ることが大切です。治療のために少しずつ苦手なことに挑戦したり慣れていったりする必要もありますが、早く治さなければと無理する必要はありません。
- アルコール・カフェインを控える
- 疲労を感じたら休む
- 規則正しい生活を送る
- 適度に運動する
- 暑い・寒いなどの極端な温度によるストレスに注意する
- 心身ともにリラックスできる方法を見つけておく
- これらのことを意識して、心や体に過度な負担をかけないように過ごしていきましょう。また、適切な治療方法は1人1人異なるため、医師の指導・アドバイスに従うことも大切です。
家族や知り合いが不安症を発症した場合のサポート方法を教えてください。
- 不安症を発症したりいつもと様子が異なっていたりする家族や知り合いがいる場合は、まずは声をかけて寄り添うことが大切です。ただし、声のかけ方によっては、患者の負担となってしまう場合もあります。不安症に苦しんでいる人をサポートする場合は、以下のことを意識しましょう。
- 「調子はどう?」と最初は気軽に声をかける
- 相手が話したくないようなら深追いせずそっと見守る
- 映画・公園など気軽な外出に誘ってみる
- 外出を嫌がるようなら家で一緒にゲームしたり音楽鑑賞したりする
- 辛い気持ちを話してきたら真剣に向き合う
- 相手の気持ち・行動を否定しない
- これらを意識して、回復を焦らずに寄り添うことが大切です。また、不安症の患者に対して避けるべきこともいくつかあります。
- 悩みや心の傷を無理に聞き出す
- 「こうした方がいい」など自分の意見を押し付ける
- 相手の言葉を軽く受け流す
- これらの行動は不安症の患者に対して行わないように注意しましょう。サポートしたい気持ちは大切ですが、患者の負担となる行動を押し付けたり無理させたりしないことが大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 不安は誰しもが抱く感情です。しかし、不安や恐怖がコントロールできず、日常生活を思うように送ることができないのは大変辛いことです。もし「不安症かも?」と感じたら、早めに医師に相談しましょう。現代社会に生きる私たちにとって、不安症は決して珍しくない病気です。周囲に助けを求めることは決して悪いことではありません。1人で抱え込まずに、少しでも辛いと感じたら周囲の人や医師に相談しましょう。そして、焦らずゆっくり自分のペースで治療に取り組むことが大切です。
編集部まとめ
誰だって不得意なことや苦手なものがあります。
不得意なことや苦手なものを前にしたときに、不安や緊張を感じたり心が落ち着かなくなってしまったりしてしまうのは当たり前のことです。
しかし、不安・恐怖から動悸・めまい・発作などのなんらかの症状があらわれ、日常生活に支障をきたしている場合は不安症の可能性があります。
症状の悪化を防ぐためにも、発症したら早めに治療に取り掛かることが大切です。
ただし、不安症の症状は1人1人異なるため、自分に合った治療内容・ペースで治療を進めていくことが求められます。
適切な治療を進めていくためにも、不安症の疑いを感じたらまずは医師に相談してみましょう。
参考文献