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「総ビリルビンが上がる理由」はご存知ですか?上昇を抑える方法も医師が解説!

 公開日:2024/12/21
「総ビリルビンが上がる理由」はご存知ですか?上昇を抑える方法も医師が解説!

総ビリルビンが上がる理由とは?Medical DOC監修医が総ビリルビンが上がる原因・調べる目的・総ビリルビンの見方や基準値と病気のリスク・予防法などを解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

総ビリルビン(T-BIL)とは?

総ビリルビン(T-BIL)は、肝機能検査の1つで、血液中のビリルビンの総量を測定する検査項目で、血液検査で調べることができます。
総ビリルビンのビリルビンは、古くなった赤血球が分解されるときに生成される黄色い色素で、通常であれば肝臓で処理され、胆汁の一部として体外に排出されます。
そんなビリルビンは、主に下記の2種類にわかれます。

  • ・間接ビリルビン:
    肝臓で処理される前のビリルビンで、水に溶けないためアルブミンと結びついて肝臓に運ばれる。
  • ・直接ビリルビン:
    肝臓で処理された後のビリルビンで、水に溶けやすい。
    なお、総ビリルビンは、間接ビリルビン・直接ビリルビンの2種類の合計量のことです。

総ビリルビンが上がる原因

血液中の総ビリルビンが上がる理由は、間接ビリルビンが優位に上がっている場合と、直接ビリルビンが優位に上がっている場合で原因が異なります。
間接ビリルビンが上がる理由は、赤血球の破壊が亢進してビリルビンの産生が過剰となることが主な原因です。
一方、直接ビリルビンが上がる理由は、肝臓に炎症などの原因がある場合や、胆管が詰まることで直接ビリルビンが上がる傾向です。

総ビリルビンの値を調べる目的

総ビリルビン値を調べる主な目的は下記です。

  • ・肝機能の評価:
    総ビリルビン値は、肝臓の機能を評価する重要な指標の1つとなり、AST・ALT・γ-GTPなど、他の肝機能検査項目と合わせて検査することで、肝臓の健康状態をより詳細に把握できます。
  • ・黄疸の原因特定:
    総ビリルビン値が高くなると、全身の皮膚が黄色くなる黄疸の症状がみられる場合があります。しかし、黄疸は総ビリルビン値で検査できる肝臓や胆道系の問題によって生じるだけでなく、血液の異常によってもみられます。直接ビリルビン、関節ビリルビンのどちらが上昇しているのかを調べることで黄疸の原因を特定する手助けになります。
  • ・肝胆道系の評価:
    肝炎や胆石症などの胆道の流れが悪くなる病気がないかを評価する検査としても重要な指標です。また、これらの疾患の治療効果や経過を観察する場合にも、総ビリルビン値の推移を確認します。

健康診断の「総ビリルビン」の見方と再検査が必要な「総ビリルビン」に関する数値・結果

ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

健康診断・尿検査の「総ビリルビン」の基準値

総ビリルビンの基準値は0.4~1.5mg/dLです。

健康診断で「総ビリルビン」の再検査基準と内容

総ビリルビンの値が基準値を超えた場合や、自覚症状がなくても、肝臓や胆道の異常が疑われる場合は再検査・精密検査をおこないます。
再検査では、総ビリルビンだけでなく、AST・ALT・γ-GTPなどの肝機能関連の数値を詳しく調べます。また、精密検査の場合は、血液検査や尿検査だけでなく、腹部超音波検査やCT、MRIなどをおこなう場合もあります。
それぞれの検査の目安の金額は3割負担の場合は下記です。

  • ・尿検査:1,000円程度
  • ・血液検査:2,500~3,000円程度
  • ・腹部超音波検査:3,000円程度
  • ・CT検査:5,000~10,000円程度
  • ・MRI検査:6,000~15,000円程度

なお、再検査・精密検査は、健康診断を受けた医療機関や近くの内科クリニックでおこなうことができます。再検査・精密検査の緊急度は診断結果によりますが、異常が見つかった場合は早めの受診が推奨されるため、結果を受けてから 1〜2週間以内 に再検査を受けるようにしましょう。

総ビリルビンの上昇で気をつけたい病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「総ビリルビン」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

急性肝炎

急性肝炎は、主に肝炎ウイルスの感染が原因でおきる急性の肝機能障害です。その他にも、薬物・アルコールなどによって引き起こされます。
急性肝炎になると、肝臓のビリルビン処理能力が低下するため、血液中のビリルビン濃度が上昇して総ビリルビン値が高くなります。また、総ビリルビンの上昇に加えて、倦怠感・発熱・吐き気・右上腹部痛などの症状が現れ、重症の場合は、黄疸や出血傾向、意識障害などが生じる場合もあります。
治療は原因によって異なりますが、一般的には安静・栄養管理、抗ウイルス薬の投与などがおこなわれます。
発熱や強い倦怠感、体や白目が黄色いなどの黄疸の症状がみられる場合は、消化器内科や肝臓内科を受診しましょう。

胆石症

胆石症は胆のうや胆管に石ができて、痛みなどの症状を引き起こす病気の総称です。
一般的にビリルビンは胆汁に混ざったあとに、尿や便とともに排出されます。しかし、胆のうや胆管に結石ができて流れが滞ると、ビリルビンがうまく排出されずに体内に留まってしまうため、総ビリルビンの数値が上がります。
胆石症の典型的な症状としては、みぞおちを中心とした痛みで、これに右肩や背中の痛みを伴う場合もあります。
治療法としては、経口胆石溶解剤や体外衝撃派破砕法などの治療もありますが、効果が確実な外科的手術が選択されることが多いです。また、胆のう炎を起こしている場合には、外から胆のう内にチューブを入れて、胆のう内にたまっている膿を一旦外に排出し炎症を抑えた後に手術を行うこともあります。
みぞおち付近や、右肩や背中の痛みを生じる場合は消化器内科や外科を受診しましょう。

溶血性貧血

溶血性貧血の溶血とは、一般的に120日が寿命といわれている赤血球が、120日未満の未熟な段階で破壊されることで赤血球数が少なくなり生じる貧血のことです。赤血球の異常により先天的に起こっているものから、自己免疫疾患や感染などに伴い発症する後天的なものまでさまざまな原因により起こります。
溶血性貧血になると、赤血球が破壊されて間接ビリルビンが多量に血液中に放出されます。そのような状況が続くと、肝臓での処理が間に合わなくなるため、総ビリルビンの値が上昇します。
主な症状は一般的な貧血と似ており、蒼白・疲労感・めまい、低血圧や黄疸が生じるだけでなく、場合によっては、脾臓の腫大がみられる場合もあります。
溶血性貧血の治療はそれぞれの原因によって異なりますが、副腎皮質ホルモン(プレドニゾロンなど)が中心です。しかし、治療経過によっては、脾臓摘出術や、免疫抑制薬などが選択されます。
急激な貧血症状や黄疸が現れた場合は、血液内科や内科で診療を受けましょう。

体質性黄疸

体質性黄疸とは先天的な遺伝的異常が原因となってビリルビンが上昇している病態です。体質性黄疸の中でも最も頻度が高いものがジルベール症候群です。
ジルベール症候群は、肝臓でのビリルビンを代謝する能力が部分的に欠如している先天性代謝疾患です。ビリルビンの代謝が不十分なため、普段からビリルビン値は高く、通常2~5mg/dLの範囲で変動し、絶食やその他のストレスによってさらに上昇します。
ジルベール症候群自体は、血液検査や遺伝子検査などで診断されますが、ビリルビン値が高い以外の症状はなく、健康上の問題もありません。黄疸を指摘された場合には、一度は検査をして原因を調べましょう。消化器内科の受診が勧められます。

総ビリルビンの上昇を抑える方法・予防法

アルコール摂取を控える

アルコールの過剰摂取は、肝機能障害の原因の中で多い理由の一つです。肝障害が進行すると、総ビリルビンの上昇を引き起こします。アルコールは肝臓で代謝されますが、過度の摂取を続けると、肝臓に負担がかかり機能が低下し、間接ビリルビンを処理できなくなります。
アルコールの摂取は避けることが最も有効的ですが、難しい場合は、飲酒は適量を守ることが重要です。厚生労働省がまとめた飲酒ガイドラインではアルコール摂取量の目安を女性では20g以下、男性では40g以下を1つの目安としています。
なお、アルコール量20gの目安としてはビール中瓶1本500mlといわれているため1つの目安とするとともに、週に1~2日は休肝日を作るようにしましょう。

バランスの良い食事を心がける

肝障害の原因の一つに脂肪肝があります。脂肪肝を防ぐためには、バランスの良い食事が重要です。カロリーの摂取過剰とならないようにし、肥満に気を付け、また高脂肪食品を避け、食物繊維が豊富な食品を積極的に摂取しましょう。また、タンパク質の適度な摂取も大切なため、魚類や鶏肉、豆腐なども取り入れましょう。

十分な睡眠と休息をとる

十分な睡眠と休息は、肝機能障害を防ぎ、総ビリルビンの上昇を抑えるための重要な方法です。睡眠不足や過度のストレスがかかると、体内のホルモンバランスを崩し、肝機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、疲労が蓄積すると、体内の代謝機能が低下して、ビリルビンの処理能力も低下する恐れがあります。
厚生労働省によると、成人の場合は一般的に6時間以上を目安として睡眠時間を確保することを推奨しています。

適度な運動をおこなう

適度な運動は体重管理にも役立ち、肥満による肝臓への負担を軽減が期待できるだけでなく、運動は血液循環、肝臓の機能効果があります。脂肪肝に対しても適度な運動をすることで改善が期待できます。
効果的な運動として、30分程度で週に2〜3日ほどの適度な運動を習慣的におこなうようにしましょう。運動自体もハードなものではなく、ウォーキングや散歩など続けやすい有酸素運動がお勧めです。

定期的な健康診断を受ける

定期的な健康診断を受けることで、早期に総ビリルビンの上昇を発見し、適切な対処をおこなうことができます。
1年に1回以上の健康診断を受けることで、自覚症状がない時期に異常を発見できるだけでなく、毎年の数値の変化も追えるため、より詳細な健康状態を把握できるはずです。

「総ビリルビンが上がる理由」についてよくある質問

ここまで総ビリルビンが上がる理由について紹介しました。ここでは「総ビリルビンが上がる理由」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

総ビリルビンが高いと体にどんなメリットがありますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

総ビリルビンの値が高くなると、肝臓などの異常を示している可能性があり精密検査が必要です。しかし、ビリルビンは正常範囲内の患者では値が高めの人ほど、肺がんや呼吸器疾患にかかりにくいとの報告もあります。また、ビリルビンは強い抗酸化物質であり動脈硬化を予防するという報告もあります。しかし、いずれも健康な方での報告であり、無理にビリルビンをあげた方が良いという結論ではありません。

総ビリルビンが3以上になると体にどんな変化が現れますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

総ビリルビンが3mg/dL以上になると、黄疸で、皮膚や白目が黄色くなる症状がみられます。また、尿の色が濃くなり、焦げ茶色の「ビリルビン尿」がみられます。
これらの症状がみられた場合は、肝臓や胆道の異常を示す重要なサインになるので、すぐに医療機関を受診しましょう。

編集部まとめ 総ビリルビンが上昇する場合、まず総合的な検査が必要!

総ビリルビンは、肝機能検査の1つで、血液中のビリルビンの合計量を測定する重要な検査で、間接ビリルビンと直接ビリルビンに分かれます。
そんな総ビリルビン値が上がる理由は、赤血球の破壊亢進による間接ビリルビンの増加や、肝臓の炎症や胆管の詰まりなどが原因による直接ビリルビンの増加が挙げられます。採血のみではすべて診断することができません。採血以外の画像検査も併せて原因を詳しく調べる必要があります。
肝臓の機能を低下させないためには、普段から、バランスの良い食事やアルコール摂取の控え、十分な睡眠と休息、適度な運動が重要です。
また、健康診断を受けることで早期に異常を発見できるため、年に1回程度の定期的な検診を受けるようにしましょう。

「総ビリルビン」の異常で考えられる病気

「総ビリルビン」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器内科の病気

血液内科の病気

これらは、総ビリルビンの値が異常の際に疑われる疾患ですが、総ビリルビンの値だけでは診断はできません。そのため、少しでも気になる症状があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師