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「膵がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?ステージについても解説!

 更新日:2023/05/10
「膵がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?ステージについても解説!

膵がんとは、膵臓に発生するがんのことで、近年増加傾向にある病気の1つです。発症の危険因子としては、喫煙・過度の飲酒・不規則な生活・ストレスなどが挙げられます。

また、家族歴も深く関連しているといわれているため、近親者に膵がんを患っている方がいる場合には注意が必要です。

この記事では、膵がんの特徴・膵臓がんとの違い・症状・原因・化学療法・生存率まで詳しく解説します。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

膵がんの特徴

食べながら仕事する男性

膵がんの特徴を教えてください。

膵がんとは、胃の後ろ側に位置する「膵臓」に発生するがんのことです。膵臓には、膵液が通る「膵管」という管があるのですが、その部分にがん細胞が発生することが一般的です。
膵臓は、食べ物を消化する「外分泌機能」やインスリンなどのホルモンを作る「内分泌機能」を担っています。がんの発生により、これらの機能が阻害されることで、低栄養や糖尿病が引き起こされます。
膵がんは近年増加傾向にありますが、自覚症状がない病気のため、診断を受けた時にはある程度進行しているケースが多いのも特徴の1つです。

膵がんは膵臓がんとは違うのでしょうか?

「膵がん」と「膵臓がん」に違いはありません。この他にも、「すいがん」・「膵癌」・「膵臓癌」という表記をされることもあります。これらはすべて同様に、膵臓に発生するがんのことを指します。

膵がんにはどのような症状がみられますか?

膵がんは、初期症状はほとんどありません。病気が進行してから現れる主な症状は以下の通りです。

  • 腹痛
  • 黄疸
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 腰や背中の痛み
  • 糖尿病

膵臓がんが原因で糖尿病を発症することもあります。また、もともと糖尿病を患っていた方の血糖コントロールが不良となり、病気に気付くケースもあります。

発症の原因を教えてください。

膵がんの原因として、いくつかの危険因子があげられます。

  • 喫煙
  • 過度の飲酒
  • ストレス
  • 不規則な生活
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 家族歴

日頃から不規則な生活を送っている方や強いストレスを感じている方は、膵臓に負担がかかっている可能性があります。また、糖尿病を患っている方や膵臓がんを患っている家族がいる場合も発症のリスクが高まります。

膵がんになりやすい方の特徴はありますか?

発症原因と重なる点が多いですが、日頃から喫煙や過度の飲酒を行っている方は注意が必要です。また、不規則な生活を送っている方・ストレスを抱えている方・肥満の方も気を付けましょう。さらに、糖尿病を患っている方や膵臓がんを患っている家族がいる方は、定期的な検査を受けることが重要です。
なお、年齢でいえば60歳代、性別でいえば男性の方が発症しやすいといわれています。

膵がんの治療方法

医師

受診を検討するべき初期症状はありますか?

膵がんの初期段階では自覚できる症状はほとんどありません。先述の通り、少し進行した段階で腹痛・黄疸・食欲不振・体重減少といった症状が現れることが多いです。
症状を自覚した段階では病気がある程度進行している可能性がありますので、このような症状がみられた場合には、速やかに医療機関へ受診するようにしてください。

どのような検査で膵がんと診断されるのでしょうか?

膵がんであることを確定するためには、CT検査やMRI検査が行われます。これらの検査により、膵臓の状態や膵管や胆管の圧迫度合いや他の臓器への転移の有無も判断が可能です。
その他には、内視鏡的膵管造影という検査方法が挙げられます。この検査では、膵臓に隣接する十二指腸から内視鏡を挿入し、膵管の状態を直接確認します。
この時、膵液を採取し、がん細胞の有無を調べることが可能です。なお、腫瘍マーカーといって血液データを膵がんの判定に用いることが一般的です。

治療方法を教えてください。

膵がんの治療は、がん細胞の浸潤や広がりの状態によって変化します。切除のみで治療ができる場合もあれば、病気がある程度進行しがん細胞が切除ができない状態の場合には、化学療法や化学放射線療法で治療を行うこともあります。

膵がんの化学療法について教えてください。

膵がんに用いられる化学療法には、以下のようなものがあります。

  • ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法
  • FOLFIRINOX療法
  • ゲムシタビン療法
  • S-1療法
  • フルオロウラシル・レボホリナート・ナノリポソーム型イリノテカン療法
  • ゲムシタビン・S-1療法

化学療法の種類は様々です。飲み薬による治療や点滴による治療、単剤による治療や多剤併用治療まであります。化学療法では副作用が出ることもありますが、副作用を軽減するための治療も同時に行うことが一般的です。
病気の進行状況や患者さんの全身状態に合わせて、医師が最適な治療を選択します。

膵がんのステージ分類を教えてください。

膵がんは、4つのステージに分類されています。具体的には、以下の通りです。

  • 1期:がん細胞が膵内にとどまり、リンパ節への転移がみられない状態。
  • 2期:がん細胞の一部が膵外に及んでいる状態。中でも、リンパ節転移がみられない状態を2A期、リンパ節転移がみられる場合を2B期といいます。
  • 3期:腹腔動脈または上腸間膜動脈にがん細胞の浸潤がみられる状態。
  • 4期:肝臓・肺・腹膜・大動脈周囲のリンパ節への遠隔転移がみられる状態。

1期や2期の段階では切除が可能ですが、浸潤や転移が進んだ3期や4期の状態では切除ができません。

膵がんの生存率と予後

仕事

膵がんは生存率が低いのでしょうか?

膵がんは初期の自覚症状が乏しく、8割程度の患者さんは病気を発見した時点で手術が不可能な状態まで病気が進行しているといわれています。術後の5年生存率は、2割〜4割程度です。
また、発見が早く切除ができたとしても再発する可能性も高いのが特徴です。さらに、膵がんは、早い段階から転移を起こす可能性が高いというデータもあります。

膵がんはどのような経過をたどるのでしょうか?

膵がんが進行すれば、次第にがん細胞が周囲へ浸潤し、機能不全に陥ってしまいます。膵臓が機能不全に陥れば、栄養状態が悪化し、著しく体重が減少してしまうでしょう。その他には、十二指腸が圧迫されることにより食べ物が正常に通過できなくなってしまったり胆管が圧迫されて胆汁が通過できなくなったりすることが考えられます。
また、他の臓器に転移を起こしやすいことも膵臓がんの特徴の1つです。特に、肝臓へ転移することが多く、倦怠感や黄疸が引き起こされることもあります。さらに、転移した臓器によって様々な症状が引き起こされます。
末期の状態では、主に化学療法や放射線治療が行われますが、完治が見込めないことも多いです。痛みを緩和したり進行を遅らせたりするための緩和ケアを行っていくことになるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

膵がんは、年々増加傾向にある病気の1つです。自覚症状があまりなく、進行が早いことから予後が良好とはいえません。しかし、近年では様々な研究が進められ、効果的な治療法の開発も進められています。
この治療の効果を十分に得るためには、やはり早期発見・早期治療開始が重要です。発症のリスクに当てはまる場合や身体に何らかの違和感を覚える場合には、できるだけ早めに検査を受けるようにしましょう。

編集部まとめ

医療従事者
膵がんの発症には、生活習慣が関連しているといわれています。また、初期症状はほとんど見られず、身体の異変に気付いた時には病気が進行していることが多い病気です。

さらに、病気が進行してしまえば、手術でがん細胞を切除できなくなることもあります。周囲への転移の可能性も高いため、可能な限り早めに治療を開始することが望ましいでしょう。

なお、膵がんは喫煙・過度の飲酒・肥満・不規則な生活などが引き金となるといわれています。

このようなリスク因子に当てはまる場合には、生活習慣の改善を心がけましょう。体調に気になることがある場合には、専門機関へ相談してみてください。

この記事の監修医師