「血液検査前後の食事」はどうしたらいいかご存知ですか?医師が徹底解説!
血液検査前後の食事はどうすべき?Medical DOC監修医が採血の何時間前から食事を控えた方がいいか・前日におすすめのメニューなどを解説します。
監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
血液検査前後の食事は何を食べたらいい?
皆さんの多くは、今まで血液検査を受けたことがあるでしょう。その際には、絶食で検査を受けるようにという指示を受けたことが多いのではないでしょうか?
血液検査の前日の食事のおすすめメニューや、何時間前までに食事を終わらせれば良いのか、肝機能やコレステロール、血糖値に影響を与えるのかがわからないという方もいらっしゃるでしょう。
血液検査では、普段自分では自覚しないような体の情報が詳細にわかります。本記事では、血液検査の結果が正確なものになるように、血液検査前後の食事について詳しく解説します。
血液検査とは?
血液中の成分には、赤血球や白血球、血小板、ヘモグロビン、各種酵素、ホルモン、糖質、脂質などが含まれています。これらの成分の異常は、さまざまな疾患のサインであることがあります。血液検査は、血液中の成分を調べることで、体の健康状態や病気の有無をチェックするための重要な検査です。
血液検査前日におすすめの食事メニュー
基本的には、血液検査前日であっても特に食べてはいけないものはないと考えられます。
しかし、コレステロール値や中性脂肪、血糖値に影響を与えにくいものを選ぶ方がより良いでしょう。特に、中性脂肪は食事や飲酒の影響で大きく変わることがあります。
そうした観点からは、例えば以下のような食事がおすすめです。
- 野菜たっぷりのサラダ:レタスやトマトなどは食物繊維豊富です。ドレッシングのかけ過ぎには注意しましょう。
- 鶏胸肉や魚のグリル:これらの食材は、低脂質で低糖質です。
- 玄米:白米よりも食物繊維が豊富で、血糖値の急上昇が抑えられると考えられます。
こうしたメニューなどに加えて、なるべくお酒は控えた方が良いでしょう。
血液検査の何時間前から食事・水分は控えた方がいい?
一般的には、血液検査の前に12時間程度の断食(絶食)が勧められています。これは、食事や飲み物が血液中の成分に影響を与え、正確な結果が得られなくなる可能性があるためです。
水は飲んでも構いませんが、糖分を含む飲み物やアルコールは避けるようにしましょう。血液検査前のアルコール摂取は、肝機能に影響を与える可能性があります。
血液検査当日朝の食事は控えるべき?
血液検査の当日は、特に朝食を控える必要があります。もし検査が午後にある場合でも、検査の8~12時間前からは断食を開始してください。これは、食事が血糖値やコレステロール値に影響を与えるためです。
採血日に朝食を食べた・血液検査前に食事をしてしまったらどうしたらいい?
採血日に朝食を食べたり、血液検査前に食事をしてしまったりした場合は、まず、食事をしてしまったことを医療機関に伝えましょう。食事によって血糖値や中性脂肪値が一時的に上昇し、検査結果に影響を与える可能性があるため、正確な結果が得られないことがあります。そのため、再度採血を行う必要がある場合があります。
特に、糖尿病の診断や高脂血症の検査では、正確な結果を得るために10〜14時間の空腹が必要です。医療機関に相談し、再検査の予約を取るか、次の適切なタイミングで再度採血を行うことが望ましいです。
採血日の朝に食事をしてしまった場合や、中性脂肪が400mg/dL以上の場合、以下の対応が推奨されます。
- Non-HDLコレステロールでの評価:
中性脂肪が400mg/dL以上の場合や食後に採血を行った場合、LDLコレステロールの代わりにNon-HDLコレステロール(総コレステロールからHDLコレステロールを除いたもの)を用いて評価することができます。 - 随時血糖検査の実施:
やむを得ず空腹時以外に採血を行った場合、HbA1cを測定しないなら、食後すぐのタイミングを除いて随時血糖検査を行うことが可能です。空腹時は絶食10時間以上、食直後は食事開始から3.5時間未満と定義されます。
血液検査何時間後に食事はできるの?
血液検査が終わった後は、すぐに食事をしても構いません。ただし、血糖値の急上昇を避けるため、脂っこい食事や糖分の多い食事は控え、バランスの取れた食事を心がけましょう。
血液検査後におすすめの食事メニュー
血液検査後の食事には基本的には何を食べても問題はありません。朝食などを抜いているので、水分摂取量が通常よりも少なくなっている状態と考えられます。
そのため、水分はしっかりと摂っておきましょう。
さらに、食事内容としては、急激に血糖値をあげないようなメニューが良いでしょう。
例えば、野菜スープやおかゆなどがおすすめです。いわゆる「空きっ腹」の状態となっているので、急に脂っこいものなどは食べないほうが良いでしょう。
血液検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは血液検査前後の食事について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
血液検査の結果の見方・主な項目の基準値と異常値
血液検査の結果は、各項目について基準値が設けられていますので、ご自身の値がこの範囲にあるかどうかを見ていきます。
血液検査の主な項目と基準値について、以下に示します。
血液検査の項目 | 基準値 | 異常値(要精密検査) |
---|---|---|
白血球数(103/μL) | 3.1-8.4 | 3.0以下、10.0以上 |
血色素量(ヘモグロビン)(g/dL) | ||
男性 | 13.1-16.3 | 12.0以下、18.1以上 |
女性 | 12.1-14.5 | 11.0以下、16.1以上 |
血小板数(104/μL) | 14.5-32.9 | 9.9以下、40.0以上 |
空腹時血糖値(㎎/dL) | 99以下 | 126以上 |
HbA1c(%) | 5.5以下 | 6.5以上 |
HDLコレステロール(㎎/dL) | 40以上 | 29以下 |
non-HDLコレステロール(㎎/dL) | 99-149 | 89以下、210以上 |
LDLコレステロール(㎎/dL) | 60-119 | 59以下、180以上 |
中性脂肪(トリグリセライド)(㎎/dL) | 30-149 | 29以下、500以上 |
AST(U/L) | 30以下 | 51以上 |
ALT(U/L) | 30以下 | 51以上 |
γ-GPT(U/L) | 50以下 | 101以上 |
尿酸(㎎/dL) | 2.1-7.0 | 9.0以上 |
クレアチニン(㎎/dL) | ||
男性 | 1.00以下 | 1.30以上 |
女性 | 0.70以下 | 1.00以上 |
血液検査の結果で精密検査が必要な数値と診断内容
- 貧血
貧血の診断は、ヘモグロビン値が男性で13g/dL未満、女性で12g/dL未満の場合に行われます。鉄欠乏性貧血や慢性疾患による貧血が主な原因です。精密検査としては、鉄、フェリチン、トランスフェリン飽和度、ビタミンB12、葉酸の血液検査が必要です。費用は約3,000〜5,000円で、内科または血液内科を受診します。再検査の結果に応じて、鉄剤の内服・注射、ビタミンB12の補充、原因疾患の治療が行われます。 - 脂質異常症(TG, LDL)
脂質異常症の診断は、トリグリセリド値が150mg/dL以上、またはLDLコレステロール値が140mg/dL以上の場合に行われます。これは脂質異常症や動脈硬化のリスクを示します。検査内容にはLDL-C、HDL-C、TG、総コレステロール、Non-HDLコレステロールの血液検査が含まれ、費用は約2,000〜4,000円です。内科または循環器内科を受診し、再検査結果に応じて食事療法、運動療法、スタチンなどの薬物療法が行われます。 - 高血糖
高血糖の診断は、空腹時血糖値が126mg/dL以上、またはHbA1cが6.5%以上の場合に行われ、糖尿病や耐糖能異常を示します。精密検査には、空腹時血糖値、HbA1c、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)が含まれます。検査費用は約3,000〜5,000円で、内科または糖尿病内科を受診します。再検査結果に基づき、食事療法、運動療法、インスリン療法、経口糖尿病薬の治療が行われます。 - 腎機能
腎機能障害の診断は、クレアチニン値が男性で1.2mg/dL以上、女性で1.0mg/dL以上、または推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73㎡未満の場合に行われ、慢性腎臓病(CKD)を示します。検査内容にはクレアチニン、尿素窒素(BUN)、電解質の血液検査および尿アルブミン、尿蛋白の尿検査が含まれます。費用は約2,000〜4,000円で、内科または腎臓内科を受診します。再検査結果に応じて、食事療法、降圧薬、重症の場合は透析療法が行われます。 - 肝機能
肝機能障害の診断は、ALT(GPT)、AST(GOT)が50U/L以上、また、γ-GTPが100IU/L以上の場合に行われます。これにより、肝炎、脂肪肝、肝硬変が疑われます。検査内容にはALT、AST、γ-GTP、アルブミン、ビリルビンの血液検査および超音波検査(エコー)、CT、MRIなどの画像検査が含まれます。費用は約3,000〜10,000円で、内科または消化器内科を受診します。再検査結果に基づき、原因に応じた薬物療法(抗ウイルス薬、抗酸化剤など)、および生活習慣の改善が行われます。
「血液検査」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「血液検査」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
脂質異常症
脂質異常症は、血液中の脂質の値が基準値から外れる状態で、主な原因は飽和脂肪酸やコレステロールの過剰摂取です。
血液検査では、LDLコレステロールや中性脂肪などの値が異常となります。
治療法としては、食事改善や運動療法が基本です。飽和脂肪酸の摂取を減らし、魚油などの不飽和脂肪酸を増やすことで改善が期待できます。脂質異常症自体には特に自覚症状がないことがほとんどです。しかし、放置しておくと動脈硬化症などの原因となりますので、血液検査で脂質異常症を指摘された場合には内科を受診しましょう。生活習慣の見直しや必要に応じて薬物療法を行います。
糖尿病
糖尿病は血液中のブドウ糖の濃度が高くなる病気です。
血液検査では、空腹時血糖値やHbA1cが異常を示します。
主な原因はインスリンの不足や効かなくなることです。対処法としては、食事療法、運動療法、薬物療法があり、定期的な血糖値の測定が必要です。初期症状が少なく、進行すると重大な合併症(網膜症、腎症、神経障害)を引き起こします。血糖値が高い場合は内科を受診し、専門医と相談して治療を開始します。
腎臓病・慢性腎臓病(CKD)・腎不全
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が低下し、尿中にタンパクが出続ける状態です。血液検査では、血中クレアチニン値の異常などがみられます。
主な原因は高血圧や糖尿病です。対処法には、血圧や血糖値の管理、低塩食、薬物療法があります。症状がないことが多いので、無症状であっても腎機能の異常を血液検査で指摘された場合には、一度腎臓内科を受診しましょう。治療は生活習慣の改善や薬物療法が中心です。
肝臓病(肝機能障害・肝炎・肝硬変など)
肝臓病には肝機能障害、肝炎、肝硬変などがあり、原因はウイルス感染やアルコール、脂肪の蓄積などです。血液検査では、AST、ALT、γ-GTPなどの異常がみられます。
治療法は原因により異なり、抗ウイルス薬、生活習慣の改善、薬物療法などが含まれます。症状がない場合でも、検査結果で異常が指摘されたら早めに受診しましょう。内科または消化器内科が適しています。
膵臓がん
膵臓がんは、膵管に発生する腺がんが多く、原因には喫煙や慢性膵炎があります。症状は腹痛、食欲不振、黄疸などがあり、進行すると腰や背中の痛みも現れます。診断には血液検査での腫瘍マーカー(CA19-9など)や画像検査が必要です。治療法は手術、薬物療法、放射線治療などです。異常が見つかった場合、消化器内科を受診します。
「血液検査と食事の関係」についてよくある質問
ここまで胃カメラ後の食事について紹介しました。ここでは「血液検査と食事」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
血液検査当日の採血前は水分補給をしても大丈夫ですか?
木村 香菜 医師
はい、水分補給は可能です。ただし、水やお茶など無糖の飲み物に限ります。詳しくは医師の指示に従ってください。
血液検査が午後にあるとき当日の食事はどうすればいいのでしょうか?
木村 香菜 医師
血液検査が午後にある場合は、朝食後は絶食し、水分は無糖の飲み物に限ります。
血液検査前10時間は食事をしてはいけない理由を教えてください。
木村 香菜 医師
血液検査前の10時間は食事を控える理由は、食物が血糖値や中性脂肪値などの検査結果に影響を与えるためです。これにより、正確な診断が難しくなる可能性があります。
採血の前に食事をしてしまったら血液検査は受けられなくなりますか?
木村 香菜 医師
食事をしてしまった場合でも、血液検査は受けられますが、結果が影響を受ける可能性があるため、医師に相談して指示を仰ぐことが重要です。必要なら再検査を行うことがあります。
血液検査前日に食べたものは結果に影響しますか?
木村 香菜 医師
血液検査前日に食べたものは、特に脂っこい食事や高糖分の食事は、血糖値や中性脂肪値に影響を与えることがあります。正確な検査結果を得るためには、前日の食事にも注意が必要です。医師の指示に従いましょう。
まとめ 血液検査前後の食事は検査結果に影響大!
血液検査の前後の食事は、検査結果に大きく影響します。
正確な結果を得るためには、検査前日は糖分や脂肪分の多い食事は控えるようにしたほうが良いでしょう。そして、検査前の12時間は断食することを守りましょう。
特に検査前日には、野菜たっぷりのサラダや鶏胸肉のグリル、玄米など、血糖値や中性脂肪に影響を与えにくい食事がおすすめです。検査後はすぐに食事を再開できますが、絶食後のため、水分をしっかりとりましょう。
「血液検査」の異常で考えられる病気
「血液検査」から医師が考えられる病気は13個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器内科の病気
- 肝機能障害
- 肝炎
- 肝硬変
内分泌内科の病気
消化器外科の病気
採血では、異常値が示す可能性のある病気が異なります。詳細な検査結果をもとに適切な診療科を受診し、専門医の診断と治療を受けることが重要です。