「乳腺エコー検査」の費用は?検査にかかる時間から結果の見方まで医師が解説!
乳腺エコー検査とは?Medical DOC監修医が発見できる病気や健康診断や婦人科検診結果の見方と所見、マンモグラフィとの違い等を詳しく解説します。
監修医師:
武田 美貴(医師)
目次 -INDEX-
乳腺エコー検査(乳房超音波検査)とは?
乳がんの検診は、マンモグラフィーと触診が一般的ですが、最近は乳腺エコー検査も併せて行う医療機関が増えています。乳腺エコーの利点などを、詳しく解説していきます。
乳腺エコー検査とは胸のどんな検査?
乳腺エコー検査とは、乳腺に超音波を当てて乳腺の状態を検査します。超音波という耳に聞こえない高い周波数の「音」を使った検査ですので、放射線被ばくがない検査です。腫瘍の細かい特徴がわかりやすく、乳腺とそれ以外の周囲組織の質的診断に有用な検査です。 検査は上半身裸のままで行います。仰向けに寝て、超音波の伝わりをよくするためにゼリーを塗って乳房全体を調べます。手を挙げて脇の下のリンパ節も確認します。
乳腺エコー検査で女性の体の何がわかる?
乳腺エコー検査は、触診ではわからないような小さなしこりや、乳管内の病変の発見に向いています。ただし、しこりになっていない広範囲に広がる非浸潤癌は、エコーでははっきりと映らず、石灰化を検出するのに優れたマンモグラフィーの方が鮮明に描出されます。このようなわかりにくい腫瘍の種類もあるため、マンモグラフィーを合わせた検査が必要となってきます。
乳腺エコー検査の費用は?
乳がん検診で行う場合、料金は自己負担では3,500円前後です。自治体が行っている住民健診では、マンモグラフィー検査が中心ですが、自治体によって乳腺エコーによる乳がん検診を受けられるところもあります。費用は年齢や自治体によって自己負担が異なりますが、無料~3,000円程度です。ただし、しこりがある、乳頭から分泌物がでるなど、何か自覚症状がある場合は、保険が適用されます。
乳腺エコー検査前日や当日の注意点
腹部エコーとは異なり、食事制限などはありません。しかし上半身裸で行う検査ですので、ワンピースなど上半身を出しにくい服装は避けて、上下が分かれている服装で検査を受けてください。
乳腺エコー検査を受ける健康リスクはある?
乳腺エコーは超音波を使った検査です。被ばくはないので、妊婦でも安心して受けられます。
乳腺エコー検査(乳房超音波検査)とマンモグラフィ(乳房X線検査)との違いは?
マンモグラフィーは被ばくがあること、検査自体が痛いというデメリットがありますが、小さな石灰化を検出できるという大きなメリットがあります。また、乳がんによる死亡リスクを下げる科学的根拠がある検査として知られています。一方で、乳腺エコー検査は被ばくがありませんが、小さな石灰化の検出には向かない、検査を行う人の技量で検査結果に差が出るというデメリットがあります。また、マンモグラフィーは乳腺密度が高い人には向いていませんが、乳腺エコーは乳腺密度の影響を受けにくいともいわれている検査です。
乳腺エコー検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは乳腺エコー検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
乳腺エコー検査の結果の見方・分類と主な所見
以下に異常所見の説明と乳がんの可能性についてお示しします。
異常所見 | 説明 | 乳がんの可能性 |
---|---|---|
乳腺のう胞 | 正常な組織と水分からなる 良性のしこり |
なし |
乳管内乳頭腫 | 乳房の乳管に発生する、 良性のイボ状のしこり |
わずかに高まる |
乳腺内線維腫 | 若い女性に見られる、 乳腺から発生する良性のしこり |
なし |
石灰化 | 乳腺の中で見られる、 カルシウムの沈着 |
あり |
腫瘤/しこり | ほかの細胞と異なる組織の塊 | あり |
乳管拡張症 | 乳管が拡張している状態 | あり |
乳腺症 | ホルモンの変化によって生じる、 乳腺の張りや乳房の痛み・乳頭から分泌物が出るといった症状 |
なし |
乳腺エコー検査の結果で精密検査が必要な基準と内容
乳腺エコー検査の結果、異常所見が見られた場合、異常が見られた部位、カテゴリー分類・判定区分が明記されることがあります。
カテゴリー1 | 異常所見なし |
カテゴリー2 | 所見があるが精査不要、明らかな良性 |
カテゴリー3 | 良性所見だが、悪性を否定できない |
カテゴリー4 | 悪性の疑い |
カテゴリー5 | 悪性 |
カテゴリー0 | 判定不能の場合 |
判定区分 | カテゴリー | |
---|---|---|
A:異常なし | カテゴリー1 | 追加検査なし |
B:軽度異常/精密検査不要 | カテゴリー2 明らかな良性所見があるが、精密検査は不要 |
追加検査なし |
C:要再検査 | ステージ0乳がんの可能性がある小さな病変にたいしては、カテゴリー2として半年後の再検査。 判定不能の場合は、カテゴリー0として再検査、または別の機器を使って検査する |
|
D:要精密検査・治療 | カテゴリー3・4・5 | 要精密検査 |
E:治療中 | 乳がん検診の対象外 |
乳腺エコー検査の結果で精密検査が必要と言われたら、乳腺専門クリニックや乳腺外科がある病院を受診します。乳腺エコー検査は、上半身裸になり仰向けに寝ます。乳房の上に超音波の伝わりをよくするためにゼリーを塗り、その上からエコープローブを当てて検査します。検査自体に痛みはなく、検査時間も10~15分程度です。
再検査のための受診のタイミングですが、カテゴリー分類や判定区分で異なります。上記表を参考にして、適切な時期に受診するようにします。
「乳腺エコー検査」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「乳腺エコー検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
乳がん
乳腺組織にできる悪性腫瘍で、主に乳管から発生します。女性に多い疾患ですが、まれに男性にも発生します。乳がんの発生には、女性ホルモンのエストロゲンが深くかかわっています。エストロゲンを含む経口避妊薬や閉経後の長期間のホルモン補充療法、初経年齢が若い、授乳経験がないなど長期間女性ホルモンにさらされている状態が、乳がん発生リスクを高めます。乳がんになった血縁者がいることも乳がん発生のリスクとなり、特定の遺伝子の変異があることも知られています。
乳房は自分で触れる臓器なので、月経前後を避けて乳房を触ってみることが、自分でできる日々の乳房状態チェックです。乳房に触れている中で、しこりを疑うような塊に触れたら、様子を見て病院受診を検討します。また乳がん検診で乳腺エコーやマンモグラフィーで検査結果に異常があったら、できるだけ早く病院を受診します。外科を受診しますが、できれば乳腺外科があると望ましいです。
治療法には、手術や放射線治療、薬物療法(内分泌療法や分子標的治療など)があります。早い時期だと、腫瘍のみを取り除く乳房温存術が受けられることもありますので、早めに受診しましょう。
乳腺症
乳腺症は、30~50代の女性によく見られる疾患です。ホルモンバランスの乱れにより、乳房の張りや痛み、乳頭から分泌物が出る、といった症状が現れます。一般的に、月経前に症状が強くなり、月経が終わると症状が和らぎます。治療の必要はありませんが、痛みが強い場合には消炎鎮痛剤を使うことがあります。
乳腺線維腺腫
乳腺線維症腺腫は、10~20代の女性によく見られる乳房のしこりで、女性ホルモンのバランスが影響していると考えられています。乳腺線維症腺腫は2〜3cm以上には大きくならず、自然に小さくなり目立たなくなることが多いしこりです。そのままにしておいても、40~50歳代になるころには消えてしまうことも多いです。念のため受診して細胞診を受けておき、
線維腺腫とはっきり診断されれば、治療の必要はありません。ただし、しこりがある場合は自己判断せず、乳腺外科を受診して相談してみましょう。
乳腺のう胞(嚢胞)
乳腺のう胞は、乳管内部に水分が溜まることで生じます。乳房内で作られた乳汁が乳頭から分泌されないで乳管内にとどまると、乳腺のう胞となります。
のう胞の数が増減することもありますが、乳腺のう胞は正常な組織と成分からなる良性のしこりなので心配はいらないです。
「乳腺エコー検査」で引っかかる理由は?
乳がん検診は、がんかもしれない所見をひっかけて精密検査にまわすために行う検査なので、良性のしこりがあっても、乳がんではないのに引っかかってしまう乳腺エコー所見があります。それは「石灰化」です。良性の石灰化の場合、乳管の周囲や腺葉の分泌液にできた沈殿物によって生じます。一方、乳がんが原因の石灰化は、壊死したがん細胞にカルシウムが付着したものです。石灰化の形や大きさ、分布などから、良性なのか、がんに伴う石灰化なのかを判断していきます。
乳腺エコーで引っかかり、石灰化があるといわれたのに、自分は大丈夫と精密検査を先延ばしにするのは、とても危険です。細胞をとって調べたりして、乳腺エコー検査に引っかかった原因をはっきりさせることが大切です。
「乳腺エコー検査」についてよくある質問
ここまで検査でわかる可能性のある病気や診断結果の見方などを紹介しました。ここでは「乳腺エコー検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
乳腺エコー検査(乳房超音波検査)はどのくらいの時間がかかりますか?
武田 美貴 医師
乳腺エコー検査は、とても簡単な検査です。エコー検査自体は、10~15分程度で終わります。
乳腺エコー検査の結果はすぐわかりますか?
武田 美貴 医師
ほとんどの場合、その日に結果が分かることが多いです。しかし、ほかにも検査している場合は総合的に判断するため、結果が後日になることもあります。
乳腺エコー検査とマンモグラフィの違いは何ですか?
武田 美貴 医師
マンモグラフィーはX線を使った検査なので、被ばくがあります。そのため妊婦は受けることが来ません。乳腺エコー検査は、超音波を使った検査なので、被ばくがなく、簡単に受けることができます。
乳腺エコー検査の時間が長い・写真を撮る回数が多いと悪性の可能性がありますか?
武田 美貴 医師
石灰化などの所見があると、その部分を詳しく検査するため、検査時間が長くなることがあります。また乳房が大きい場合、広い面積を検査するため、少し時間がかかることがあります。
乳腺エコー検査で腫瘍が見つかったらどう対処すべきですか?
武田 美貴 医師
できるだけ早く乳腺外科を受診しましょう。精密検査として腫瘍に針をさして細胞を調べます(細胞診)。細胞を調べると、腫瘍が良性か悪性かを確定診断することができますので、先延ばしせず病院を受診してください
まとめ「乳腺エコー検査」で乳がんを早期発見!
近年、日本人にも乳がんが増えています。そのため、乳がん検診で乳腺の状態を把握することはとても大切です。乳腺のしこりには良性のものもありますが、乳がんは早期発見することで乳房を温存しながら、完治を目指すことができます。乳腺エコー検査で引っかかった場合は、できるだけ早く乳腺外科を受診するようにしてください。
「乳腺エコー検査」の異常で考えられる病気
「乳腺エコー検査」の検査結果から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
乳腺エコーで異常がみられる場合、良性・悪性ともに乳腺から発生するしこりであることが多いです。稀に乳腺に感染する感染症や、内分泌疾患で乳房が女性のように大きくなる女性化乳房という状態になることがあります。乳腺に異常を感じたら、できるだけ早く乳腺外科や乳腺科を受診してください。