マンモグラフィ検査は豊胸手術をしたら受けられない? 検査の流れや注意点も医師が解説!

乳がんの早期発見に欠かせない「マンモグラフィ検査」。「豊胸手術をしていたら受けられないのでは?」 と不安に思う人もいると思いますが、実際はどうなのでしょうか。今回は「登戸ブレストケアクリニック」の土屋先生に、豊胸術後のマンモグラフィ検査について解説していただきました。

監修医師:
土屋 聖子(登戸ブレストケアクリニック)
マンモグラフィ検査とは

編集部
まず、マンモグラフィ検査について教えてください。
土屋先生
乳房を板で圧迫し、X線で乳腺の状態を確認する検査です。乳がんによる死亡率の減少効果があり、特に40歳以上の女性に推奨されています。「圧迫がつらい」という印象を持つ人もいるかもしれませんが、圧迫自体は数秒間で終わります。乳房を圧迫して平らにすることで、放射線の被曝を極力減らすことができる安全な検査です。
編集部
シリコンバッグや脂肪注入などの豊胸手術をしていても、マンモグラフィ検査を受けることができるのでしょうか?
土屋先生
施設や状況によって異なりますし、術式や挿入部位によっても変わるため、一概に「受けられる」とも「受けられない」とも言えません。検査を受ける際は、必ず前もって医師や看護師、検査技師などに伝えるようにしてください。適切な撮影法の選択や画像の正確な読影に欠かせない大切な情報です。
編集部
シリコンバッグによる豊胸術後のケースについて教えてください。
土屋先生
シリコンバッグのようなインプラント(人工乳房)の場合、検査時の圧迫により破損するリスクがあります。正しい撮影法を用いればバッグが破損するリスクは低いと言われていますが、可能性はゼロではありません。さらに、シリコンバッグも経年劣化していくので、経過が長い人の方が破損のリスクは高くなります。これらを踏まえ、日本乳がん検診精度管理中央機構は、シリコンバッグによる豊胸術後の検診目的でのマンモグラフィ検査を「推奨しない」としています。ただし、症状があって検査が必要とみなされた場合、細心の注意を払って検査することはあります。その際には「Implant Diplacement View(インプラントディプレースメントビュー)」という撮影方法をおこないます。
編集部
脂肪注入のマンモグラフィ検査で注意する点はありますか?
土屋先生
撮影時、圧迫により注入物が移動してしまうことがあるので、基本的には患者さんの納得と同意が必要になります。また、脂肪注入後はしこり(脂肪壊死)や石灰化が起こることもあり、病変の評価が難しくなるため、読影に注意が必要です。判断には専門的な知識が必要なので、乳腺専門医が在籍する施設で検査を受けることをおすすめします。多くの場合、超音波検査なども併用されます。
マンモグラフィ検査の流れや注意点

編集部
実際のマンモグラフィ検査について教えてください。
土屋先生
乳房を専用の板で挟んで延ばした状態で上下・左右の2方向から計4枚の撮影をおこないます。圧迫は数秒ですし、検査自体にかかる時間も10〜15分程度なので、体への負担の少ない検査です。
編集部
検査時の痛みが心配です。
土屋先生
圧迫による痛みを感じる人もいらっしゃいますが、個人差があります。生理前は乳房が張って痛みを感じやすいため、その時期を避けると比較的楽に受けられます。事前に不安があれば遠慮なく、放射線技師や医師に相談してみてください。
編集部
マンモグラフィ検査以外の検査方法についても教えてください。
土屋先生
マンモグラフィ以外の検査には、問診や視触診、超音波検査(乳腺エコー)があります。さらに詳細な検査が必要であれば、MRI検査をおこなう場合もあります。超音波検査は、豊胸手術後だけでなく、ペースメーカーを装着している人や妊娠・授乳中の人にもマンモグラフィ検査の代替検査として適しています。これらの検査の結果により、必要に応じて病理検査(細胞診や針生検など)を追加でおこないます。特に豊胸術後などで、1つの検査での評価が難しい場合などは、複数の画像検査を組み合わせるなどの対応をして診断精度を高めることもあります。
安心してマンモグラフィ検査を受けるポイント

編集部
豊胸していると検査を避けたくなってしまいます。
土屋先生
「豊胸していることを言いにくい」「そもそも豊胸手術をしていることを知られたくない」などの理由で健診を避けてしまう人もいらっしゃいますが、そのような心配は一切不要なので、検査の際の大切な情報としてぜひお伝えいただきたいと思います。豊胸の有無に関わらず全ての人に乳がんが発症する可能性はあるため、定期な乳がん検診は欠かさず受けることをおすすめします。
編集部
マンモグラフィ検査を受ける医療機関を選ぶときのポイントを教えてください。
土屋先生
乳腺専門医や検診マンモグラフィ読影認定医、乳がん検診超音波実施・判定医がいる医療機関であれば、インプラントや脂肪注入後であっても基本的には問題ないでしょう。安心して検査を受けることができるので、そのような医療機関を選ぶのがいいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
土屋先生
検査の内容にかかわらず、患者さんから事前にいただく情報ははとても重要です。豊胸手術を受けた人は、マンモグラフィや超音波検査を受ける際、必ずその旨を検査前にお伝えください。また、これから豊胸手術を検討している人も、術前に検診を受けることをおすすめします。もともとのご自身の乳腺の状態を知っておくことが、豊胸後も検査を受けた際の大切な情報になります。豊胸術後でも、そのときの状況にあった検査をおこなって評価するので、安心して乳がん検診を受けていただければと思います。
編集部まとめ
シリコンバッグや脂肪注入をした豊胸術後でも、マンモグラフィ検査は基本的に受けることが可能とのことでした。術歴を事前に伝えることが、安全かつ正確な検査につながります。乳腺専門医のいる医療機関を選び、不安なことがあればまず相談することが大切です。乳がんの早期発見のためにも、定期的な検診を心がけましょう。
医院情報
所在地 | 〒214-0014 神奈川県川崎市多摩区登戸2552番地 ロワゾーブルー1階 |
アクセス | JR・小田急線「登戸駅」 徒歩3分 |
診療科目 | 乳腺外科 |