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「脳ドック」は何歳から受けた方が良い?費用から検査結果の見方まで医師が解説!

 更新日:2023/12/19
「脳ドック」は何歳から受けた方が良い?費用から検査結果の見方まで医師が解説!

脳ドックでは何がわかる?Medical DOC監修医が発見できる病気や健康診断・人間ドックとの違い、検査前日と当日の注意点などを詳しく解説します。

丸山 潤

監修医師
丸山 潤(医師)

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群馬大学医学部卒業。群馬県内の高度救命救急センター救急科及び集中治療科に2022年まで所属。2022年より千葉県の総合病院にて救急総合診療科および小児科を兼務。乳児から高齢者まで幅広い患者層の診療に努める。
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター

脳ドックとは?

近年、健康意識が高まる中で、「肺がんCT検診」「乳がん検診」「子宮がん検診」「内視鏡胃がん検診」「PET-CTがんドック」「心臓ドック」「腸内フローラ検査」など、数多くの健康診断が受けられるようになりました。
一般的な人間ドッグのデータだけでは脳の病気を見つけることは非常に難しいです。しかし、脳は私たちを人間たらしめる大変重要な臓器です。脳の健康管理への関心も高まっている中、注目されている「脳ドック」についてどんな検査なのか、何がわかるのか解説していきます。

脳ドックとはどんな検査?

脳ドックは、脳の疾患や異常を早期に発見するための特別な健康診断です。検査内容は頭部のMRI(磁気共鳴画像)やMRA(磁気共鳴血管撮影)、頚部超音波検査などです。これらの検査を用いて、脳の詳細な情報を取得することで、微細な異常や疾患の兆候をキャッチします。
脳ドッグの所要時間は検査のコース内容によって異なりますが、1時間〜3時間程度です。

脳ドックで脳・頭のどんな異常がわかる?

脳ドックを行うことでわかることは無症候性(無症状)の脳梗塞や未破裂の脳動脈瘤といった脳血管障害です。さらに、脳腫瘍や認知症の原因、頭部外傷による後遺症、脳の形態的な異常なども検出することができます。無症状であれば病気が見つかったところで意味がないと感じてしまうかもしれませんが、このような異常を早期にキャッチすることで、適切な治療や予防策を取ることが可能となり、その後の健康管理に役立てることができます。

脳ドックの費用や助成金・保険適用は?

脳ドックの費用については、健康保険の適用外となるため、全額自己負担となります。医療施設によって価格は異なりますが、2万円〜4万円程度が目安です。
しかし、健康保険組合や地方自治体が、脳ドック受診に対する補助金や助成金を提供していることがあります。対象者は40歳以上で、補助金額・助成金の目安は1万円程度となります。多くの健康保険組合は「東京都総合組合保健施設振興協会」に一部業務を委託しており、補助金が適用される施設も限定されている場合があるので、事前に確認することをおすすめします。

脳ドック検査前日や当日の注意点

受診前日の食事制限は基本的に設けられていませんが、夜9時以降はアルコールを控えることが望ましいです。脳ドッグの検査の中に血液検査が含まれる場合は、当日食事は摂らずに受診してください。ただし、少量の水は飲んでも問題ありません。
また、MRI検査の際に取り外し(除去)が必要になるので、当日は金属製のアクセサリーやメイクを避けてください。

脳ドックを受けることで健康リスクはある?

脳ドックは主にMRIやMRAなどの画像診断を用いて、脳の構造や血流の状態を詳しく観察します。MRIは放射線を使用しないため、X線検査のような放射線を浴びることによるデメリットはありません。また、MRAはMRIの画像をコンピューター上で再構成するものなので、身体への負担はMRIと同等です。頸部超音波検査はプローべと呼ばれる機械を首に当てるだけなので、侵襲のない検査です。したがって、脳ドック自体に大きな健康リスクは伴わないと言われています。
ただし、MRIの検査装置は狭く、検査中音がうるさいため、閉所恐怖症の方は不快感や過度な緊張を感じるかもしれません。閉所恐怖症がある方は、スタッフへ事前に相談することが大切です。また、MRIは強力な磁気が発生するため、金属や電子機器が影響を受ける可能性があります。体内や体表に金属や電子機器が埋め込まれている場合は、MRI撮影可能なものかどうか必ず確認してください。

脳ドックの結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見

ここまでは脳ドックについて基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

脳MRI・頭部MRA検査など脳ドックの結果の見方・分類と主な所見

検査 概要 診断できる病気
MRI-DWI 脳梗塞発症後30分以内から
早期虚血変化を異常信号で表示する画像
急性期の脳梗塞,脳膿瘍,脳腫瘍
MRI-T1 脳の構造が見やすいため
形態の異常が分かりやすい
脳出血・脳梗塞,硬膜下血腫,脳萎縮
MRI-T2 水を白く映し出す撮影方法で病変を確認しやすい
DWIはT2強調画像の一種
脳出血・脳梗塞,脳炎,脱髄性疾患
MRI-T2* 出血を強調する画像 微小な脳出血,くも膜下出血,頭部外傷
MRI-FLAIR 脳脊髄液を低信号(黒)で表した画像
脳室周囲の病巣や壊死した病巣が見やすい
古い脳梗塞,血管性認知症,くも膜下出血,脳腫瘍
MRA 脳動脈を3Dで再構成した画像
脳の血管そのものが見える
脳梗塞による血管閉塞,脳動脈瘤,脳動脈の狭窄,脳血管の奇形

MRIのDWI(拡散強調画像)、T1強調画像、T2強調画像、FLAIRでは高信号(白く光る)部分が病変です。また、脳の形の異常も確認することができます。T2*では低信号(黒)になっているところが脳出血部位です。MRAは脳動脈そのものを3Dで確認できるため、途中で血管が描出されていなかったり、血管が膨らんでいたりすると異常です。

脳ドックで精密検査が必要な基準と内容

脳ドッグは健診施設ですので、もし検査で異常所見が見つかったら、原則脳神経内科もしくは脳神経外科での診察が必要になります。ただし、頭部MRIの検査に加えて、さらに精密検査をするかどうかは状況によります。
例えば、無症状の脳梗塞であれば、今後脳梗塞を起こしやすい状態かどうか病歴を聴取され、血液検査を受けます。脳梗塞を起こすリスクが高いと判断された場合、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬や抗凝固薬)が処方されます。脳腫瘍が疑われる場合は造影CTを用いて脳腫瘍に入り込んでいる血管の走行を確認し、全身CTで脳以外に腫瘍がないかチェックして、治療計画を立てます。

「脳ドック」でわかる病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「脳ドック」で見つかる可能性がある病気について気になる事項を解説します。
どのような症状がある病気なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

脳梗塞

脳梗塞は脳の血管が詰まることによって起こる病気です。主な原因は動脈硬化や高血圧などが挙げられます。発症した際には、片側の身体の麻痺やしびれ、構音障害(呂律が回らない)が出現します。重症の場合、意識が悪くなり呼吸が止まってしまうケースもあるため、早急に医療機関を受診する必要があります。治療はt-PAと呼ばれる血栓を溶かす薬剤の使用、脳動脈にカテーテルを挿入し血栓を回収する経動脈的血行再建療法があります。
脳梗塞は脳への血流が途絶することで症状が出現しますが、この症状が後遺症として残るかどうかは血流が途絶した時間によって決まります。より早く血流を再開させることができるかどうかが、後遺症が残るか否かと密接に関わっています。したがって、症状が出た場合は、すぐに脳神経内科もしくは脳神経外科を受診しましょう。症状が強い場合や自分だけではすぐに病院を受診することができないような状況の時は、ためらわずに救急要請し、素早く適切な病院へ搬送してもらいましょう。

脳動脈瘤

脳動脈瘤とは、脳の血管の一部が膨らんで瘤状になっている状態です。脳血管の枝分かれ部分に血流の負荷がかかり、血管の壁が弱くなることで形成されます。脳動脈瘤の原因は解明されていませんが、高血圧や喫煙、遺伝などが関連していると考えられています。
脳動脈瘤は、未破裂状態では無症状であることがほとんどです。脳ドックなどで偶然発見されることが多いですが、まれに物が二重に見える、頭痛、めまいといった症状をきっかけに病院を受診し、見つかることもあります。
脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血となります。くも膜下出血の典型的な症状はバットで殴られたかのような突然の激しい頭痛、嘔気・嘔吐、意識障害です。未破裂脳動脈瘤は自然に小さくなったり、消えたりすることはほとんどありません。したがって、一大事になる前に脳動脈瘤を発見し治療することが大切です。
脳動脈瘤の治療方法には、「血管内治療(コイル塞栓術)」と「開頭手術によるクリッピング術」の2つの方法があります。治療方法の選択は、脳神経外科医が患者さんの状態や動脈瘤の部位、大きさ、形などの条件を踏まえて決定します。

脳腫瘍

脳腫瘍とは、頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称です。脳腫瘍の原因は遺伝子の変異とされていますが、それ以上のことはわかっていません。初期段階では症状が出にくいことも多いのですが、頭痛や視覚障害、手足の麻痺などの症状が現れることがあります。
発見された場合の対処法は、腫瘍の大きさや種類、位置によって異なりますが、手術や放射線治療、化学療法などが行われます。手足の動かしにくさなどの症状を自覚したら、早めに脳神経外科を受診しましょう。

脳出血

脳出血は脳の内部で血管が破裂し、血が脳組織に流れ出ることで起こる疾患です。主な原因としては、高血圧や動脈硬化、脳血管の奇形、外傷などが挙げられます。脳出血が起こると、急激な頭痛や意識障害、片側の身体の麻痺などの症状が出現します。
脳出血は時間が経ち出血が広がると症状がひどくなるケースがあります。もし症状が出現したら速やかに医療機関を受診しましょう。担当科は脳神経外科ですが、症状が軽ければまずはかかりつけの内科へ、症状が強い場合は救急外来で救急科医師に診察してもらいましょう。
脳出血は出血部位や量により薬物療法か手術か決まります。薬物療法ではまずしっかり血圧を下げ、止血剤や脳浮腫改善薬の併用を検討します。手術には、頭部の骨を開いて脳の中を顕微鏡で見ながら出血部分を治療する「開頭血腫除去術」と、頭の骨に極小の穴を複数開け、その穴から細い内視鏡を挿入し、血液を除去する治療法「内視鏡血腫除去術」があります。どちらの治療法が採用されるかは、患者さんの状態や施設が得意とする治療法が何かといったさまざまな要因により決定します。

「脳ドック」で引っかかる理由は脳の病気以外にもある?

脳ドッグ、特に頭部MRIは頭部に関する情報を集めることができるため、眼科の病気(眼内異物、 視神経腫瘍、 視神経炎)や、耳鼻科の病気(副鼻腔炎、聴神経腫瘍)があれば、異常として結果報告されます。
その他、病気ではありませんが、検査時に頭を動かしてしまうとアーチファクトと呼ばれる異常所見で引っかかってしまうかもしれません。MRIは非常に精密な検査であるため、撮影中に動いてしまうと、画像が不鮮明になったり正常な画像と異なる写り方をしたりする可能性があります。MRI撮影時はスタッフの指示に従い、撮影中は一切動かないよう注意してください。

「脳ドック」についてよくある質問

ここまで検査でわかる可能性のある病気や診断結果の見方などを紹介しました。ここでは「脳ドック」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

脳ドックはどのくらいの頻度で受けるべきですか?

丸山 潤丸山 潤 医師

脳ドックを何年おきに受けるべきかについてですが、40歳以上の方は2〜3年に1回、症状のない小さい脳梗塞がある場合など医師から特別な指示がある方の場合は1〜2年に1回の頻度での検査をおすすめします。

脳ドックは何歳から受けた方がいいですか?

丸山 潤丸山 潤 医師

20代で脳梗塞になる確率は1%程度と非常に低いですが、年齢を重ねるごとに脳疾患を発症するリスクは高まってくるため、40歳をすぎたら脳ドッグを検討することをおすすめします。健康保険組合や地方自治体から補助金・助成金の支援がもらえるようになる年齢も40歳です。
ただし、脳ドックのガイドライン2019では「高血圧、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化、喫煙、肥満などの生活習慣病のリスクが高い」「親族の中に脳の疾患の既往がある」といったリスク因子を持っている方は、40歳を待たず積極的に脳ドックを受けることをすすめています。

脳ドックの異常発見率はどのくらいですか?

丸山 潤丸山 潤 医師

高齢者において無症候性脳梗塞は10〜20%の確率で認められることがわかっています。また、脳微小出血に関しては、高齢者の5〜20%、脳梗塞をしたことがある方の場合30〜40%、脳出血をしたことがある方の場合60〜70%で認められることが知られています。さらに、30歳以上の成人には約3%の頻度で脳動脈瘤が確認されるとされています。
前述の通り、脳ドッグでは比較的多くの方が異常を指摘されますが、全ての異常が治療を要するものではありません。検査で引っかかった場合は、脳神経内科もしくは脳神経外科で相談しましょう。

脳ドックでは頭部MRI/MRA/CT検査をすべて受けるべきですか?

丸山 潤丸山 潤 医師

脳MRIとMRAは1回の検査で同時に撮影できるため、両方とも受けるべきでしょう。頭部CTを撮影する場合は場所を移動して再度撮影する必要があり、放射線を浴びることになります。頭部CTとMRIはそれぞれ得意分野が異なるものの、CTで確認できる病気の多くはMRIでも確認ができます。したがって、頭部MRIを撮影するのであれば頭部CTは必須ではないと考えられます。脳ドックのメニューは健診施設ごとに異なります。自分の好みの検査で構成された脳ドッグを受けましょう。

脳ドック・頭部MRI検査で引っかかったら治療や手術が必要ですか?

丸山 潤丸山 潤 医師

頭部MRIでは小さな脳梗塞や脳出血、未破裂の脳動脈瘤を見つけることができます。したがって、検査で引っかかったからといって必ずしも治療や手術が必要なわけではありません。しかし、治療が必要かどうかの判断には専門的な知識と経験が必要なので、検査に引っかかったら必ず脳神経内科もしくは脳神経外科に相談しましょう。

まとめ「脳ドック」で脳動脈瘤を早期発見!

「脳ドック」は、脳の健康状態をチェックするための非常に重要な検査です。脳梗塞や脳動脈瘤破裂などの症状が出る前に、早期発見・早期治療をすることで、より良い予後を期待できます。
この記事を通して、皆さんに「脳ドック」の重要性や基本的な知識をお伝えしました。この記事を参考にして、脳ドックを検討していただき、受けてよかったと思っていただけたら嬉しいです。定期的な健診を受け、自分の健康を守りましょう。

「脳ドック」の異常で考えられる病気

「脳ドック」の検査結果から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

眼科系の病気

  • 眼内異物
  • 視神経腫瘍

耳鼻科系の病気

脳ドッグで小さな異常所見を指摘される分には様子見で大丈夫ですが、症状を伴うような脳梗塞、十分な大きさのある脳動脈瘤が見つかった場合は医療機関への受診が必要です。

この記事の監修医師