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「尿検査」で何がわかる?結果の見方や前日・当日の注意点など医師が徹底解説!

 公開日:2023/08/08
「尿検査」では何がわかる?結果の見方や前日・当日の注意点など医師が徹底解説!

尿検査では何がわかる?Medical DOC監修医が尿検査で発見できる病気や基準値・再検査の内容などを解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

尿検査とは?

尿検査では、主に尿の中にどんな成分が出ているかを調べます。尿は体調や摂取した薬などによっても変化します。尿検査だけでもいろいろな兆候を早期に発見できるため、非常に重要な検査です。

尿検査とはどんな検査?

尿検査のやり方自体はとても簡単で、尿を採取し検査に出すだけです。できれば中間尿を20~30ml以上採取するのが理想的です。中間尿(出始めの尿を捨てる)は、尿道口付近に付着している雑菌の混入を防ぎ、この雑菌に反応して白血球が陽性にならないようにするためです。
尿検査はまず試験紙法により蛋白、潜血、糖、ウロビリノーゲンの濃度をそれぞれ測ります。濃度によりそれぞれ(-)~(4+)まで結果を判定します。その後に遠心分離機にかけて、尿の沈殿物を顕微鏡で見る尿沈査も行うことが多いです。

尿検査で体の何がわかる?

尿検査でわかることは腎臓病の可能性があるかどうかです。尿蛋白や尿潜血が(±)以上出ているときには腎炎をはじめとする腎臓病の可能性があります。腎機能が悪くならないうちに早期に発見、治療に結びつけましょう。潜血が中心の場合、膀胱炎や尿路結石、尿路系での悪性腫瘍の可能性もあり注意が必要です。
尿沈渣では特に円柱が見られた場合、腎炎の可能性が高いため、腎臓内科を受診しましょう。

尿検査前日や当日の注意点

体調により尿検査の結果が変わることもあります。風邪や過労、無理なダイエットなどにより尿蛋白や潜血、ケトン体などの項目が異常となることもあります。体調を整えて検査に臨みましょう。ビタミンCのサプリメントやビタミンCを多く含む柑橘類などは尿検査で潜血や糖を偽陰性としてしまうことがあります。正確な検査を行うために、数日前よりこれらの食品やサプリメントは控えましょう。
また、直前の運動は、尿蛋白や潜血に影響が出ることがあります。普通通りの生活、脱水にならない程度の水分摂取を行いましょう。(健康診断の内容により、水分制限があることもあるため、事前に検査機関に確認しましょう)
男性の方が検査前にしてはいけないことは、当日、前日の夜の性交渉や自慰行為による射精です。これらの影響で尿蛋白が陽性となることもあります。控えた方が良いでしょう。
尿検査前の水分摂取については脱水にならないように十分な水分摂取を心がけてください。甘い飲み物などは、尿糖が出やすくなるため直前の摂取は禁止です。アルコールは前日から摂取を控えましょう。健康診断によって他の検査の内容により、飲水の制限もあるため事前に確認をお願いいたします。

尿検査の結果の見方と再検査が必要な「尿検査」に関する数値・結果

ここまでは尿検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

尿検査の基準値と結果の見方(尿タンパク・尿潜血・尿糖等)

尿検査で蛋白、潜血、尿糖はいずれも陰性(-)が正常値です。しかし、これらの検査は尿の濃度を測っているため、尿の濃さによっては正常であっても尿蛋白、潜血が偽陽性となることもあります。以下の表が検査の基準値と疑われる疾患です。

正常値 注意すべき値 異常の時に考えられる疾患
尿蛋白 (-) (+)以上 腎炎、高血圧、糖尿病、腎臓病
尿潜血 (-) (+)以上 腎炎、高血圧、尿路結石、前立腺炎、膀胱炎、尿路系の悪性疾患
尿糖 (-) (+)以上 糖尿病、腎臓病
ウロビリノーゲン (±) (+)以上 肝・胆道系疾患

尿蛋白、潜血が1+以上の場合には何かしらの病気が潜んでいる可能性が高く、再検査のために内科を受診することをお勧めします。特に腎炎を含む腎臓病は、早期に発見し治療することで進行を防ぐことができます。また、見た目にも赤い血尿や背中の痛みを伴う場合には結石、腎盂腎炎、悪性疾患の可能性があり、泌尿器科を受診しましょう。尿糖が陽性である場合は、糖尿病の可能性があり内科受診が必要です。

尿検査の再検査基準と内容

何の項目が異常かにより変わりますが、まずは再度尿検査を行います。再度同様に異常がでた場合、さらに精密検査が必要です。

例えば、尿蛋白、潜血で異常があった場合、さらに定量検査で尿蛋白量を測定し、尿沈渣で円柱など腎炎によってみられる沈殿物がないかを調べます。
潜血が中心で、悪性疾患が疑われる場合には、細胞診で悪性細胞の有無を検査します。また、腹部エコーやCT検査で結石や悪性所見の有無を調べます。

また、腎疾患が疑われるときには採血で腎炎の原因や腎機能の低下の有無を採血検査で詳しく調べることもあります。

尿糖の異常であれば、採血で糖尿病の有無をHbA1cや血糖値を見て判断します。腎機能が悪い場合には血糖値が高くなくとも尿糖が出ることもあり、これを腎性尿糖といいます。

3割負担の場合の検査費用の目安をお示しします。(追加する項目により異なることもあります)
尿検査・沈査  約160円程度
細胞診 約600円程度
腹部エコー 約1,600円程度
採血検査 約1,400円程度
再検査や精密検査を依頼する場合、まず内科の受診でよいでしょう。しかし、見た目に赤い血尿や背中が痛いなど結石や悪性疾患が疑われる場合には泌尿器科受診をお勧めします。

早めに受診する必要があるケースは見た目に赤い、背中の痛みがあるなど症状が強い時です。このような場合に結石、腎がん、膀胱がんなどの悪性疾患が考えられます。また、足のむくみ、体重増加を伴う時には尿蛋白量が多くネフローゼ症候群を伴うこともあるため早急に受診をしましょう。そのほかの場合でも、2~3か月以内には再検査をお勧めします。
治療内容は再検査の結果からどのような疾患が考えられるかで変わります。悪性疾患であれば、手術を含めた治療が必要になります。結石の場合、小さい結石であれば水分摂取や鎮痛剤を使用しながら自然排石を促しますが、大きければ破砕術の適応です。
腎炎が疑われる場合、尿蛋白量が多くなければ定期的に経過を見ることもありますが、尿蛋白量が増え、活動性が高い場合には腎生検を行います。腎生検で原因を調べ、治療方針を決定します。
糖尿病が判明した場合には、食事療法や必要であれば内服、インスリン治療が行われます。

尿検査でわかる病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「尿検査」で発見できる病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

糖尿病

糖尿病とは、血糖値を調整するインスリンの作用不足による慢性的な高血糖状態をいいます。インスリン分泌が不足するⅠ型糖尿病と遺伝的要因や過食、運動不足などによるインスリン分泌の低下やインスリンの作用不足が主な原因のⅡ型糖尿病に分かれています。
Ⅰ型の場合にはインスリン注射で補充する方法をとります。Ⅱ型の場合には血糖値にもよりますが、食事・運動療法を行い、改善が難しい場合には内服加療を併用することが多いです。
尿検査だけではなく、健康診断で採血検査の結果がHbA1c>6.5%の場合には糖尿病が疑われます。早めに病院を受診しましょう。また、HbA1cが5.5~6.5%の場合には境界型糖尿病の可能性があります。1年後の健康診断を待たずに、3か月程度食事に気を付けたうえで再検査を行う方が良いでしょう。
受診する診療科については糖尿病・代謝内科が専門となりますが、まずは一般の内科受診でも良いでしょう。

尿路結石

腎臓から尿管、膀胱、尿道までの尿路の中で結石が認められるものを尿路結石といいます。男性7人に1人、女性15人に1人の割合で尿路結石を発症すると言われています。
結石成分により原因が異なり、食生活等の生活習慣や肥満が原因となることもあります。
結石のサイズが10mm未満の場合には自然に排石されることが多く、水分摂取を進めながら鎮痛剤で痛みをとり、保存的に経過をみることが多いです。結石の約6割はこのように経過観察することが多いと言われています。これより大きい場合、結石の場所などを考慮して治療を検討します。体外衝撃結波結石破砕術、経尿道的結石破砕術、経皮的結石破砕術など侵襲的治療で治療をすることもあります。
血尿が見られた場合には一度精査をしましょう。特に痛みがある場合には早めに病院へ行き、エコーやCT検査で精査し、治療をしましょう。痛みがなくなっても、そのまま放置することで腎機能が低下してしまうこともあります。
受診すべき診療科は泌尿器科です。受診し、精査、治療をお勧めします。

慢性腎臓病

慢性腎臓病(CKD)は一つの病気ではなく、様々な原因から腎臓の機能が徐々に低下していく病気をまとめてこのように呼んでいます。腎機能が低下する原因は腎炎や高血圧、糖尿病、膠原病など様々ですが、早期発見のきっかけとして尿所見の異常があげられます。
尿所見で尿蛋白、潜血が異常であった場合早めに内科を受診しましょう。CKDの原因により治療は変わります。まず原因を調べたうえで、適切な治療を進めましょう。早期にCKDに気が付き、治療を始めることで腎不全へ進行することが予防できます。特に蛋白尿と血圧のコントロールをすることで腎不全の進行を防ぐことができます。
尿検査で尿蛋白、潜血で異常が認められた場合には内科を受診しましょう。特に沈査で円柱が認められた場合には腎炎の可能性が高いです。このような腎炎の所見がある場合や蛋白尿が0.5g~1.0g/gCr以上と多い場合には腎臓内科を紹介してもらい、場合によっては腎生検というさらに詳しい検査をする必要があります。

「尿検査」で引っかかる理由は?尿タンパク・尿潜血・尿糖等

病気でなくとも、激しく運動した後、風邪など体調の悪い時には尿蛋白、潜血など陽性になりやすいです。脱水傾向での尿検査では尿の濃度が濃くなりやすいため、尿蛋白など陽性になることもあります。また、女性の場合明らかに生理でなくとも生理前後数日は尿潜血が陽性になりやすいです。尿糖は血糖値が160~180mg/dL以上で陽性となります。そのため、食後に尿糖が陽性となる場合があります。
尿検査が引っかかり、まず尿が見た目でも真っ赤である場合には何かしらの病気がある可能性が高く早急に受診してください。排尿時痛や残尿感がある場合には膀胱炎、発熱、背中の痛みがある時には腎盂腎炎や結石の可能性があり、早急に受診が必要です。
尿蛋白が陽性で下肢のむくみがあり体重が急に増えたなどあるときには、ネフローゼ症候群など尿蛋白が多く出ている腎炎の可能性があり、腎臓内科受診がお勧めです。
ジュースなど糖質の多いものは、尿糖が出てしまう可能性があります。逆にビタミンCが多く入った飲み物やサプリは潜血や糖を偽陰性にしてしまうので注意が必要です。

「尿検査」についてよくある質問

ここまで検診の内容や発見できる病気などを紹介しました。ここでは「尿検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

尿検査で採尿はいつするべきですか?朝一番でないとダメでしょうか?

伊藤 陽子伊藤 陽子 医師

尿検査は体調により変化することがあり、運動後には蛋白が出やすくなることもあります。安静時の一番適した状態での尿を調べられるので、可能であれば早朝尿が勧められます。しかし、状況により早朝尿が取れないこともあるため、この際には随時尿をとり、異常が出た場合には改めて検査をするのが良いでしょう。

尿検査の前日に飲酒・食事などで注意すべきことはありますか?

伊藤 陽子伊藤 陽子 医師

前日の飲酒は避けた方が良いでしょう。あまり大きく影響することはないと思いますが、飲酒量によっては脱水傾向となり異常値となる可能性があります。食事に関しては、通常通りでよいです。当日は直前に食事やジュースなど摂取することで尿糖が出ることもあるためやめましょう。

生理中に尿検査をしても問題ないですか?

伊藤 陽子伊藤 陽子 医師

生理中には経血が尿に混ざってしまい、尿潜血が陽性となる可能性があります。このため、生理中を避けていただくことが望ましいです。

以前受けた尿検査で蛋白・潜血を指摘されたらどうすべきですか?

伊藤 陽子伊藤 陽子 医師

以前に受けた尿検査が異常であっても再検査で異常がなければ、一時的な変化の可能性が高いです。健康診断で、定期的に経過を見て、異常があったら精密検査を受けていただければよいと思います。しかし、尿検査で異常があってもその後に再検査をしていない場合には内科を受診して再検査をすることをお勧めします。体調の変化に気が付かなくても、腎炎などが潜んでいる可能性があるからです。

まとめ 尿検査で腎臓病・糖尿病を早期発見

尿検査は尿を検査に出すだけで簡単にできる検査です。健康診断や学校健診でも多く取り入れられています。その理由は、簡単にできるからだけではなく、この検査からいろいろな異常が早期に発見できるからです。高血圧、腎炎をはじめとする腎臓病、糖尿病、尿路結石、肝胆道系疾患など尿検査から早期に病気を発見することができます。

また、尿量が少ない、尿の色が濃い、悪臭がする、赤いなどセルフチェックをすることも大切です。普段の尿の状態から変化していることで、脱水傾向や膀胱炎、血尿などに日常生活で気が付くこともできます。

尿検査で異常があっても、体の変化に気が付かず放置する方も多いです。せっかく早期に発見できても受診しなければ病気は進行してしまいます。特に腎臓病は一度進行してしまうと改善はなかなか難しい病気です。病気が進行してしまう前に、是非病院へ早めに受診をしましょう。

「尿検査」でわかる病気

「尿検査」から医師が発見できる病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器系疾患

腎臓、尿路系疾患

内分泌・代謝疾患

消化器疾患

そのほか

  • 脱水

尿検査は体に負担のかからない簡単な検査でありながら、たくさんの情報が得られる大変有用な検査です。腎機能が悪くなる前の段階で早期に発見・治療ができるよう、定期的に健康診断を受け、尿検査をしましょう。

この記事の監修医師