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HPVワクチンの無料接種はまだ間に合う!1997~2007年度生まれの女性も対象へ 効果や副反応について解説

 公開日:2025/02/19

厚生労働省は2024年11月27日、17~28歳の女性(1997~2007年度生まれ)に対するHPVワクチンの無料接種(キャッチアップ助成)を、条件付きで1年延長することに決定しました。キャッチアップ助成は2025年3月末で終了予定となっており、それ以降は17歳以降の女性は自費で1回約2~3万円払わなければいけませんでした。しかし、まだ十分に接種できていない人がいることが判明したため、「16歳~28歳の女性は2025年3月末までに1回目を接種した人に限り」、その後1年間は2回目・3回目の接種が無料(公費)になることが決定しました。ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染を予防する効果があるHPVワクチン。産婦人科医の柴田綾子先生にHPVワクチンの効果や副反応について伺いました。

柴田 綾子

監修医師
柴田 綾子(淀川キリスト教病院)

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群馬大学医学部卒業。淀川キリスト教病院 産婦人科所属。院内に留まらず各地での後進教育に携わる。性・妊娠・出産について悩む人を減らしたいと、一般に向けた発信も積極的に行う。著書に女性の救急外来 ただいま診断中!(中外医学社,2017)、産婦人科ポケットガイド(金芳堂,2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社,2021)。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

編集部編集部

現在、どの年代の方がHPVワクチンの無料接種を受けられるのですか?

柴田 綾子柴田先生

現在、日本では以下の女性がHPVワクチンを公費接種(無料)できます。
12~16歳(定期接種):小学校6年生~高校1年生相当
17~28歳(キャッチアップ接種):誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日

編集部編集部

今回、なぜ17〜28歳(2025年時点)の女性のキャッチアップ接種(無料)が延長されたのですか?

柴田 綾子柴田先生

キャッチアップ接種は2022年から2025年3月までの予定でしたが、「自分がHPVワクチンを無料で打てることを知らなかった」女性がいたり、ワクチン接種者が増えたことによりワクチンが足りなくなったりした可能性があるためです。

編集部編集部

そもそも、なぜHPVワクチンの無料接種が始まったのですか?

柴田 綾子柴田先生

日本では2013年4月にHPVワクチンが定期接種となり12~16歳の女性が無料で打てるようになりました。ところがその2ヶ月後に厚生労働省は積極的に案内するのを中止し、無料で接種できる女性への郵送案内を止めました。案内の中止は2013年から2021年まで続き、2022年4月から再開することとなりました。その間に接種できなかった世代である17〜28歳の女性(平成9年度生まれから平成19年度生まれ)もキャッチアップ助成として無料接種をおこなう方針となりました。

厚生労働省
「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会におけるHPVワクチンのキャッチアップ接種に関する議論について」

編集部編集部

郵送の案内が止まっていた理由について教えてください。

柴田 綾子柴田先生

HPVワクチンの無料定期接種が開始された後で、手足に力が入らない、全身に痛みがでる、動けないなどの症状を訴える女性が出てきました。そのため、厚生労働省は一度HPVワクチンの積極的勧奨を中止し、諸症状とワクチンの関連性や原因の調査をおこなってきました。その後、これらの症状はHPVワクチンを接種した人にも、接種しなかった人にも同じくらいの頻度で起こっていることが分かりました。日本やほかの国でHPVワクチンを接種した人たちのデータを集めて分析し、HPVワクチンの副反応は、大きくないことが分かってきたため、郵送での案内を再開することが2021年に決まりました。

編集部編集部

HPVワクチンは打った方がいいのでしょうか?

柴田 綾子柴田先生

研究では26歳までの女性と男性は、HPVワクチン接種でがんを予防できる効果が高いので、ワクチンを打つことが勧められています。HPVは、性行為をすれば誰でも感染しますが症状は出ないため、ほとんどの人は自分が感染していることに気づかずに、性行為で相手にうつしてしまいます。ウイルスが長期間感染することで、子宮頸がん肛門がん咽頭がんなどになってしまいます。HPVワクチンを打つことで、ウイルスに対する抗体が体の中にでき、HPVに感染しないように予防ができます。国立がん研究センターによると日本では1年間に1万人の女性が子宮頸がんにかかっています。ぜひこの機会にHPVワクチンの接種を検討してみてください。

国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス
がん種別統計情報「子宮頸部」

編集部編集部

HPVワクチンは何歳まで打てますか?

柴田 綾子柴田先生

HPVワクチンは何歳でも希望する方は打つことができます。研究では、45歳までの方であれば、子宮頸がんやその前の段階(前がん病変)を予防する効果が認められています。ただし、性行為の回数が増えるとHPVに感染しワクチンの効果が下がってしまうため、なるべく若いときにワクチンを打ったほうが効果が高いです。

編集部編集部

先ほど、HPVワクチンと諸症状の関連性が低いという話しがありましたが、やはり副反応が心配です。

柴田 綾子柴田先生

HPVワクチンは新型コロナウイルスのワクチンと同じで筋肉注射です。ワクチンを打った場所が一時的に痛んだり、硬くなったり、赤みが出ることもあります。翌日に熱や頭痛が少しでることもありますが、これらのほとんどが自然に数日で改善します。これらは、体のなかで抗体が作られるときに起こる症状(副反応)です。アナフィラキシーなど命に関わるような重症な症状や、手足に力が入らない、動けない、全身に痛みがでるなどの原因不明の症状は1%未満と報告されています。

編集部まとめ

現時点では17~28歳の女性(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)へのHPVワクチン公費接種(無料)は2025年3月31日末までですが、それまでに1回目を接種すれば、2回目・3回目も無料となることが分かっています(2026年3月31日まで)。日本では、1年間に約2900人の方が子宮頸がんで亡くなっています。子宮頸がんは無症状のため、知らない間に発症して進行してしまう病気です。この機会に是非HPVワクチン接種について検討してみてください。

※本記事は「HPVワクチンの無料接種を1997~2005年度生まれの女性も対象へ 効果や副反応について解説」と題して、2021年12月28日に公開した記事を、監修医師のもと再編集して配信しております

この記事の監修医師

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