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【女子必見】HPVワクチン積極的勧奨再開で「打つ機会を逃した人」が接種すべき理由を専門医に直撃

 更新日:2023/03/27

2021年11月12日、厚生労働省の専門部会で、中止していたHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種の「積極的勧奨」の再開が決まりました。同ワクチンは、2013年4月に定期接種化されましたが、副反応を訴える声などもあり、同年6月に積極的勧奨は中止されたという背景があったのです。それからおよそ9年、この間にHPVワクチンを接種する機会を逃してしまった人もいたことでしょう。そこで、そんな方々がこれからHPVワクチンを接種する意味について、産婦人科医の柴田先生に詳しくお話を伺いました。

柴田 綾子

監修医師
柴田 綾子(淀川キリスト教病院産婦人科)

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群馬大学医学部卒業。淀川キリスト教病院 産婦人科所属。院内に留まらず各地での後進教育に携わる。性・妊娠・出産について悩む人を減らしたいと、一般に向けた発信も積極的に行う。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂,2020)、『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社,2021)がある。

編集部編集部

HPVワクチン積極勧奨が差し控えられていた期間(およそ9年)、やはり接種する人は減っていたのですか?

柴田 綾子柴田先生

はい。2013年4月に定期接種として12~16歳(小学校6年生から高校1年生相当)の女性に無料接種が開始されましたが、2カ月後の2013年6月に積極的勧奨が差し控えられてしまいました。その後、日本におけるHPVワクチンの接種率は1%以下になってしまい、そのような状態が続いています。一方で、オーストラリアでは、15歳の男女の75%がHPVワクチンを接種しています。

編集部編集部

今回の救済措置の対象とされるのは、「1997年~2005年に生まれた女性」(2021年現在16~24歳、2013年当時は8歳~16歳の方)という話のようです。そもそもワクチンの接種は、若い方がよいということですか?

柴田 綾子柴田先生

はい。HPVは、性行為によって誰でも感染する可能性のあるウイルスです。そのため、性行為をしたことがある人であれば、多くの人がHPVに感染していると言われています。HPVワクチンは、初めての性行為をする前に打つのが1番感染予防の効果が高いと言われています。そして、大人に比べて若い年齢(14歳以下)で接種したほうが、ワクチンによる抗体がしっかりつきやすいとも言われています。

編集部編集部

救済措置対象となる人たちは現在、16~24歳ぐらいまで年齢を重ねています。加齢によるワクチン効果減少など、時間の経過による違いはあるのでしょうか?

柴田 綾子柴田先生

HPVワクチンの効果は、性行為の回数が増えると効果が減っていくと言われています。そのため年齢が高くても、これまでの性行為の回数が少ない方ではHPVワクチンの効果は高いと考えられます。また、一般的には年齢が上がるほどHPVワクチンの効果は少なくなります。スウェーデンの研究では、17 歳になる前にHPVワクチン接種した女性では子宮頸がんを減らす効果は約88%なのに対して、17~30歳の間でHPVワクチンを接種した女性では、子宮頸がんを減らす効果は約53%だと報告されています。

編集部編集部

副反応は加齢によって違ったりするのでしょうか? 新型コロナワクチンは違いがあったようですが。

柴田 綾子柴田先生

残念ながら、年齢によって副反応の違いを研究したデータはあまりありません。HPVワクチンは新型コロナワクチンと同じように、筋肉注射になります。ワクチンを打ったときの痛みや緊張などで、一時的に気分が悪くなる方がいます。そのためワクチンを接種した後は30分ほど安静にして、休んでから家に帰ることが勧められています。ワクチンを打った部分は、2~3日腫れたり、硬くなったり、赤くなることがありますが、ほとんどが自然に治ります。ワクチン接種後におきた症状で、重症なものは1万人あたり約5人と報告されています。

編集部編集部

救済措置対象者で、すでに性交渉を経験した人が打っても遅くはないのでしょうか?

柴田 綾子柴田先生

性行為の経験がある方でもHPVワクチンの効果はありますので、今からでも遅くはありません。ただし、性行為の経験が増えれば増えるほど、ウイルスに感染している可能性は高まります。HPVワクチンは、すでに感染してしまったウイルスを治療したり、治すことはできません。今、感染していないウイルスのタイプ(※)に対しては、ワクチンを打つことで感染を予防し、子宮頸がんや前がん病変(子宮頸部異形成)になるリスクを減らすことができます。

※ヒトパピローマウイルスは200種類以上のタイプがあります。その中でも子宮頸がんや前がん病変を引き起こす悪いタイプのウイルスに対して、HPVワクチンを打つことで感染予防することができます。

編集部編集部

HPVワクチン接種の機会を逃したのち、子宮頸がんを発症している場合もありえます。自分で確かめる方法などはありますか?

柴田 綾子柴田先生

子宮頸がん検診を受けることが、早期発見をする1番の方法になります。実は子宮頸がんの初期は無症状なので、がんになっていても進行するまで症状が出ません。日本では20歳以上の方は2年に1回必ず、子宮頸がん検診を受けることが勧められています。もし今年や昨年に子宮頸がん検診を受けていない方は、ぜひ検診を受けてください。また、HPVワクチンを接種した人も、同じように子宮頸がん検診を受けることが勧められています。それは、ワクチンだけでは、100%完全にがんを防げるわけではないからです。

編集部編集部

最後に、救済措置の対象となる方や、そのご家族などへメッセージがあれば。

柴田 綾子柴田先生

HPVワクチンは、ヒトパピローマウイルスの感染を予防することで、子宮頸がん、喉のがん(中咽頭癌)、肛門がん、尖圭コンジローマ(性感染症)になってしまうリスクを減らすことができます。これまでは12~16歳の女性だけ無料で接種できる形で、それ以上の年齢の方は自費で4~9万円の支払いが必要でした。救済措置が開始されれば、HPVワクチンの費用が大幅に安くなる可能性があります。この機会にHPVワクチンの接種について、ぜひ一度ご家族や産婦人科医に相談してみてください。

※参考資料 HPVワクチンについて 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000679259.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000679682.pdf

この記事の監修医師