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【独占取材】資生堂健康保険組合による、子宮頸がん予防に向けた「新たな取り組み」

 更新日:2024/04/18
【独占取材】資生堂健康保険組合による、子宮頸がん予防に向けた「新たな取り組み」

世界的には発症者数が減少傾向にある子宮頸がんですが、HPVワクチンの接種率が低い日本では患者数が増加している状況にあります。そのような状況を踏まえ、資生堂健康保険組合では、健保加入者の健康づくりを支援するための新しい取り組みを開始しました。こちらの新たな取り組みについて、資生堂健康保険組合の湯河さんに独占取材をおこなわせていただきました。

湯河さん

インタビュー
湯河 真(資生堂健康保険組合)

プロフィールをもっと見る

1989年(株)資生堂入社、三重支店営業担当。2004年~湘南、横浜、首都圏支社でマーケティングを担当。2012年社内公募で資生堂健康保険組合へ異動。2015年~健康保険組合 健康づくり事業を担当(現職)。

忽那先生

監修医師
忽那 賢志(感染症 専門医)

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山口大学医学部を卒業後、救急医療などの現場で経験を積み、その後、感染症を専門とするようになる。2009年から奈良県立医科大学感染症センターで研修し、2010年には市立奈良病院で勤務。2012年より国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。主な著書に「感染症診療とダニワールド」(シーニュ、電子書籍)、「みるトレ 感染症」(医学書院)、「症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z」(中外医学社)、「専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話」(幻冬舎)など。

資生堂健康保険組合としてHPVワクチン接種をどう捉えているか?

資生堂健康保険組合としてHPVワクチン接種をどう捉えているか?

編集部編集部

日本の子宮頸がんの現状についての見解を教えてください。

湯河さん湯河さん

世界的には減少傾向にある子宮頸がんの罹患率が、日本では増え続けているのです。ニュージーランドなどは数年度中の子宮頸がん撲滅を目指しています。日本の状況はワクチン接種が止まっていたことが大きな要因の一つだと感じます。かたやオーストラリアやニュージーランドでは男女問わず、子どもたちのワクチン接種を徹底しています。

編集部編集部

そういった話を、どのような場で聞かれたのですか?

湯河さん湯河さん

今から5年ほど前に「子宮頸がん撲滅のために」というシンポジウムに参加し、そこで、北海道大学・横浜市立大学・北海道対がん協会細胞診センターの先生方から、日本のHPVワクチンの現状や背景などを直接聞く機会があり、衝撃を受けました。

編集部編集部

資生堂健保は、子宮頸がんの予防にどのような対応を考えているのでしょうか?

湯河さん湯河さん

子宮頸がんの予防は大きく二つ、「子宮頸がん検診の受診」と「HPVワクチン」の接種だと考えています。おかげさまで当健保では「子宮頸がん検診の受診率」は78.8%(2022年度)と約8割の方に受診いただいています。そこでもう一つの柱である「HPVワクチン」の接種をサポートすることが何かできないか模索し続けてきました。そのような中で2022年4月に国がHPVワクチンの積極勧奨を再開するというニュースを受け、1993年生まれ以上のワクチン接種率がほぼ0%だったことを踏まえ、公費負担にならない世代へのHPVワクチンの全額費用補助を考えました。

編集部編集部

積極勧奨は2022年4月からスタートしましたが、御健保の取り組みがその1年後となった理由は何でしょうか?

湯河さん湯河さん

以前の勧奨中止に至った際の副反応報道の映像などが印象深く、積極勧奨が再開されても、同じ事態が再び起こらないかという危惧がありました。しかし、1年間大きな副反応の報道がなかったことから、2023年4月からスタートを切ることができました。

編集部編集部

どのようなワクチンを対象としていますか?

湯河さん湯河さん

当初は2価4価のワクチンのみを考えていましたが、2023年4月から9価のワクチンも公費負担の対象になりましたので、これら3種全てを全額補助する方針にしました。

編集部編集部

ワクチン接種に関する情報提供はどのようにおこなっていますか?

湯河さん湯河さん

ワクチンにはメリットもデメリットもあります。案内書やHP、広報誌などで厚生労働省のQ&Aサイトなども示しつつ、それらをしっかりと丁寧に説明したうえで、最終的にはそれぞれご本人の判断で接種を検討してもらう任意接種という方針を取っています。

健保加入者に対するHPVワクチン接種補助の取り組みについて

健保加入者に対するHPVワクチン接種補助の取り組みについて

編集部編集部

HPVワクチンの接種費用補助は、具体的にどのような施策なのでしょうか?

湯河さん湯河さん

加入者の健康を考えた上で、HPVワクチン接種の費用を健保が全額補助するものです。対象者は公費負担が無い27歳以上45歳以下の女性社員と家族(被扶養者)です。補助対象とする接種期間は4月1日からですが、本格的な告知は5月末にすべての加入者に詳細を案内する広報紙を自宅送付するとともにHPやイントラで情報発信しました。

編集部編集部

その際の反響はいかがでしたか?

湯河さん湯河さん

告知後すでに、数十件以上のお問合せをいただいています。「9価のワクチンは約10万円するが本当に補助してくれるのか」とか「現在45歳なのだが接種対象になるか」などさまざまな質問を受け、私自ら回答しました。このことからもHPVワクチンに対する加入者の関心の高さが伺えました。

編集部編集部

今回の取り組みで留意した点はありますか?

湯河さん湯河さん

HPVワクチンに関しては、慎重を期す部分があるため、私たちは安さを売りにするような告知方法、例えば「10万円の接種が今なら0円!」というような表現は避けました。この目的は単に費用を補助することだけではなく、加入者の健康を守るための真摯な姿勢の取り組みだからです。

編集部編集部

今後の展望についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

湯河さん湯河さん

国の勧奨により関心が上がっているものの、まだ行動に移すまでの段階ではありません。しかし、私たちのこの取り組みにより、接種の意志をもった資生堂健保加入者がワクチンの費用面でのハードルの高さを払拭することができれば本望です。

その他、子宮頸がん予防の取り組み~資生堂健康保険組合にできること~

その他、子宮頸がん予防の取り組み~資生堂健康保険組合にできること~

編集部編集部

子宮頸がん予防について、その他にも何か資生堂健保独自の取り組みはされているのでしょうか?

湯河さん湯河さん

先ほどお話ししたように、子宮頸がんを予防するためにはHPVワクチンだけではなく、子宮頸がん検診がとても重要です。当組合の子宮頸がん検診受診率78.8%は、全国の受診率と比べても高い数値であると自負しています。

編集部編集部

それは素晴らしい数字ですね。検診受診後のフォローは何かされていますか?

湯河さん湯河さん

検診受診後のフォローとして「二次受診勧奨」をおこなっています。検診は受けたら終わりではなく、その結果で「要精密検査」や「要医療」だった人が精密検査に行くようフォローアップすることが健康保険組合のミッションだと考えています。具体的には精密検査が必要となる対象者の自宅宛に「二次受診のご案内」を簡易書留で送付し、実際にいつ、どこの病院に行ったかを回答してもらう返信はがきを同封しています(はがきが面倒な方には二次元コードからの回答も可能)。この取組みは2018年度から子宮頸がん検診だけでなく、胃、大腸、乳房、肺の5大がんを対象におこなっています。

編集部編集部

なるほど受診率に一喜一憂されることなくさらにその先のフォローに取り組まれている姿勢に感心しました。湯河さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。今後の更なる取り組みと成果を楽しみにしています。

湯河さん湯河さん

ありがとうございます。私たち資生堂健康保険組合は「すべては加入者の健康のために」をスローガンに今後も健康づくり事業を着実に推進していきます。

編集部まとめ

取材を通じて、子宮頸がん予防のための取り組みの重要性と、その取り組みの中で直面する課題や挑戦について詳しく学ぶことができました。また子宮頸がんの予防を含め、加入者の健康のために情報提供とサポートをおこない、社員だけでなくその家族の健康までを一貫して公平に考え、行動に移している資生堂健康保険組合の取り組みは、大変勉強になりました。

この記事の監修医師