『下肢静脈瘤』はどう治す? 日帰り手術や負担の少ない治療法【医師解説】

足の血管が浮き出たり、だるさやむくみを感じたりする下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)。放置してよいのか、治療が必要なのか迷う人も多い病気です。現在は、昔ながらの切開する手術だけでなく、体への負担を抑えた日帰り手術も増えています。症状に応じた治療の選択肢と流れについて、東京中野血管外科クリニック院長の笹嶋先生に聞きました。
※2026年3月取材。

監修医師:
笹嶋 寛史(東京中野血管外科クリニック)
下肢静脈瘤とは?

編集部
下肢静脈瘤とは、どのような病気ですか?
笹嶋先生
足の静脈には、血液の逆流を防ぐための「弁」が備わっています。この弁が壊れてしまい、血液が逆流・滞留することで血管が拡張し、こぶのように浮き出てくる病気を下肢静脈瘤といいます。見た目の変化だけでなく、だるさ、重さ、むくみ、こむら返りなどの症状を伴うこともあります。実際に、「年齢によるものだと思っていたら下肢静脈瘤による症状であった」というケースが多く見られます。命に直結する疾患ではありませんが、放置すると皮膚炎や潰瘍を起こすこともあるため、適切な診断と治療が重要です。
編集部
なぜ起こるのでしょうか?
笹嶋先生
主な原因は静脈弁の機能不全です。立ち仕事や妊娠・出産、加齢、遺伝などが影響します。特に発症しやすいのは調理師や美容師、販売職など、立ちっぱなしの時間が長い職業の人ですね。長時間立ったままの状態が続くと、重力の影響で足の血液が心臓に戻りにくくなり、弁への負担が増します。その結果、逆流が起こり、血管が拡張してしまうのです。
編集部
見た目に変化がない場合もありますか?
笹嶋先生
下肢静脈瘤にはさまざまなタイプがあり、例えば「見た目の変化がなくても足が重だるい」という場合は、皮膚の奥にある静脈弁が壊れている「伏在型静脈瘤」の可能性があります。このタイプは見た目以上に足の重だるさや、ひどいむくみを感じやすい特徴があります。一方で、細い血管が網目状やクモの巣状に広がるタイプは、見た目は気になるものの症状は軽いケースが多いですね。
編集部
診断はどのように行いますか?
笹嶋先生
診断には、体に負担の少ない超音波(エコー)検査が不可欠です。血液の逆流の有無や範囲、どの静脈が原因かを詳しく調べます。「足が疲れているだけ」と決めつけず、症状が表れたら早めに受診してほしいと思います。
どうやって治すのか? 主な治療法は?

編集部
治療法について教えてください。
笹嶋先生
軽症の場合は、弾性ストッキングによる圧迫療法が基本です。外から圧力をかけることで血液の逆流を防ぎ、症状の改善を目指します。ただし、根本的に弁を治すわけではないため、症状が強い場合や逆流が明らかな場合には、手術を検討します。
編集部
どのような手術法があるのでしょうか?
笹嶋先生
現在は、血管内焼灼術(けっかんないしょうしゃくじゅつ)と血管内塞栓術(けっかんないそくせんじゅつ)という二つの方法があります。血管内焼灼術は膝のあたりから細いカテーテルを不全血管に通し、レーザーや高周波を用いて逆流している静脈を内側から閉塞(へいそく)させる治療法です。ふさがれた血管には血液が流れなくなりますが、足には多くの静脈があり、ほかの正常な血管が代わりを務めるので問題ありません。日帰り手術が可能で、時間も片足15分程度で終わります。術後は来院時と同じく歩いて帰ることができ、個人差はあるものの術後の痛みは少ないと思います。
編集部
血管内塞栓術は、どのような手術なのでしょうか?
笹嶋先生
血管内塞栓術はグルー治療とも呼ばれ、日本でも比較的新しく保険適用となった治療法です。医療用の瞬間接着剤(グルー)を血管内に注入して血管を閉塞させ、血流をストップさせます。最大の特徴は、レーザー治療のように「熱」を使わないため、神経損傷のリスクが少なく、周囲への麻酔も不要な点です。また、ほかの治療法では腫れやむくみ、血栓を予防するため、術後に弾性ストッキングを装着する必要がありますが、この術式では不要です。さらに、血管内焼灼術と同じく日帰り手術が可能かつ、片足15分程度で済みます。ただし、アレルギーがある人や病状が進行している人は受けられないなどの条件があるため、医師との相談が必要です。
編集部
血管内焼灼術と血管内塞栓術以外の手術方法はあるのでしょうか?
笹嶋先生
以前はストリッピング手術といって、足の付け根や膝付近を約3cm切開し、壊れた静脈にワイヤーを通して引き抜く方法が行われることもありました。体への負担が大きいことから、現在では適応が限られています。
編集部
以前、「注射で治す方法がある」という話を耳にしたことがあります。
笹嶋先生
「硬化療法」という治療法ですね。薬剤を静脈内に注入し、静脈に炎症を起こして萎縮吸収させる方法で、閉塞した静脈瘤が6カ月~1年かけて体内に吸収されていきます。主に、細い静脈瘤に対して、あるいは補助的治療として行われ、太い血管などでは繰り返しの治療が必要となることもあります。病状に応じて、ほかの治療と組み合わせることが重要です。
治療を受ける際の注意点

編集部
治療後に再発することはありますか?
笹嶋先生
はい、再発の可能性はあります。別の静脈に新たな逆流が起こることもあり、生活習慣や体質も影響します。ただし、適切な治療と術後の管理によりリスクは軽減できます。定期的な経過観察も大切です。
編集部
再発を予防するため、治療後の生活で気を付けた方がよいことを教えてください。
笹嶋先生
長時間の立ちっぱなしや座りっぱなしを避け、適度に足を動かすことが重要です。体重管理や適度な運動も予防につながります。また術前だけでなく、術後も弾性ストッキングを着用することも有効です。加えて、定期的に検診を受け、再発が疑われる場合には受診して早期発見に努めることも大切ですね。再発後に長期間放置してしまうと治療が複雑になるケースもあるので気を付けましょう。
編集部
治療後の生活で制限されることはありますか?
笹嶋先生
手術当日から歩行や家事は可能ですが、激しいスポーツや重いものを持つ作業は1週間ほど控える必要があります。また、シャワーは翌日から可能で、入浴は傷口の治り具合を見て数日後から許可されることが一般的です。術後は一時的に足の突っ張り感や内出血が出ることがあるものの、数週間で自然に消えていくケースがほとんどです。
編集部
受診するなら、何科に行けばいいのでしょうか?
笹嶋先生
「血管外科」や下肢静脈瘤の治療を行っている医療機関を受診してください。皮膚の変色やかゆみがある場合は皮膚科に行きがちですが、原因が静脈瘤であるなら根本的に解決するには、血管を治療することが必要です。足の血管が目立つだけでなく、だるさやむくみ、皮膚の変色、湿疹などがある場合は早めの受診をおすすめします。
編集部
まずは早めの受診が肝心なのですね。
笹嶋先生
そうですね。下肢静脈瘤は、血管が多少ボコボコしていても痛みがないため、そのまま様子を見てしまう人も少なくありません。進行すると足のむくみや重だるさなどの症状が表れ、さらに悪化すると、足首周囲の皮膚が黒ずんだり、かゆみが出たり、皮膚に傷ができてじわじわと水が染み出すような状態になったりすることもあります。この傷は同じ場所に繰り返しでき、治りにくいのが特徴です。病気の進行は予後にも関わるため、早期受診が大切なのです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
笹嶋先生
皮膚科などで弾性ストッキングを勧められて様子を見ている人も少なくありません。症状が軽い場合は弾性ストッキングだけで落ち着くこともありますが、長く放置していると病変が複雑になり、治療が難しくなることもあります。「手術」という言葉に不安を感じる人が多いのはよく分かります。しかし、現在は体への負担が少ない治療法が主流になっており、日帰りで行えるケースも多くあります。歯が悪ければ歯科を受診するように、気になる症状があれば早めに血管外科を専門とする医師へ相談することが大切です。
編集部まとめ
下肢静脈瘤は「見た目だけの問題」と放置されるケースが多く、進行すると皮膚トラブルなどにつながることもあります。弾性ストッキングで症状が落ち着くケースもあれば、状態によっては専門的な治療が必要になる場合もあります。気になる症状があれば、下肢静脈瘤を専門とする医療機関に相談してみましょう。
医院情報

| 所在地 | 東京都中野区中野3丁目37-9 ウエストインビル3・4階 |
| 診療科目 | 血管外科 |
| 診療時間 | 午前:月~土 9:00~12:00 午後:月~金 14:00~17:00 |
| 休診日 | 日曜 |




