「下肢静脈瘤」が悪化するとどうなるかご存じですか? 治療・術式も医師が解説

下肢静脈瘤は、足の静脈が拡張し、こぶ(瘤)のように膨らむ病気です。生命に直接関わることはほとんどありませんが、症状が進行すると生活の質(QOL)を低下させる可能性があります。そこで、血管外科クリニック本厚木の黒澤弘二先生に、下肢静脈瘤の効果的な治療法とそれぞれのメリット・デメリットについて解説してもらいました。

監修医師:
黒澤 弘二(血管外科クリニック本厚木)
下肢静脈瘤って? 医師が解説

編集部
下肢静脈瘤とは何ですか?
黒澤先生
下肢静脈瘤は、足の静脈が拡張し、こぶ(瘤)のように膨らむ病気です。血液は心臓へ戻る際、静脈内の弁が逆流を防ぐ役割を担っていますが、この弁が壊れることで血液がうまく流れず、静脈に溜まってしまいます。その結果、血管が膨らみ、下肢静脈瘤が発生するのです。
編集部
どんな症状がありますか?
黒澤先生
下肢静脈瘤は、見た目のこぶだけでなく、足のだるさやむくみ、夜間のこむら返り、皮膚のかゆみなどを引き起こします。初期は無症状のこともありますが、進行すると日常生活の質(QOL)を低下させてしまいます。
編集部
どうして下肢静脈瘤が起こるのですか?
黒澤先生
主な原因は、先述の静脈内の弁が壊れることです。この弁が壊れてきちんと閉まらなくなると、静脈内の血液の流れが停滞します。そうして血液がなかなか心臓に戻らなくなり、溜まった血液により高い圧がかかることで、静脈がこぶのように膨れてしまうのです。
編集部
では、どうして静脈内の弁が壊れるのですか?
黒澤先生
これにはいくつもの要因があります。遺伝的要因もありますが、長時間の立ち仕事や妊娠・出産、加齢、肥満なども影響を与えます。下肢静脈瘤は、特に立ち仕事の多い方や女性に多く見られますが、男性にも発症する可能性はあります。
下肢静脈瘤を放置しておくどどうなる!? 医療機関での治療も知りたい

編集部
下肢静脈瘤を放置しておくとどうなりますか?
黒澤先生
下肢静脈瘤を放置しておいても、よくなることは基本的にありません。症状が悪化すると、血流の停滞により皮膚が黒ずんだり、潰瘍ができたりすることがあります。さらには、炎症を伴う血栓性静脈炎を引き起こすこともあるため、症状が進行する前に、早めに治療することが重要です。
編集部
医療機関ではどのような治療をするのですか?
黒澤先生
下肢静脈瘤の治療には、保存的治療と手術的治療があります。保存的治療では、弾性ストッキングの着用や生活習慣の改善などがおこなわれます。手術的治療には、血管内焼灼術(レーザー・高周波治療)、血管内塞栓術(グルー治療)、ストリッピング手術などがあります。
編集部
それぞれについて教えてください。血管内焼灼術とは?
黒澤先生
静脈内にカテーテルを挿入し、レーザーや高周波で血管を焼灼し閉塞させる治療です。局所麻酔でおこなうことが可能で、傷が小さく、体への負担も小さいのが特徴です。リスクとしては、皮膚の浅い部位に血管が走行している場合などに、皮膚の色素沈着が起こる可能性があることや軽度の局所的なしびれ、知覚鈍麻(感覚が鈍くなる)などの神経障害が起き得ることなどです。
編集部
では、血管内塞栓術(グルー治療)とは何ですか?
黒澤先生
グルー治療は、医療用接着剤(グルー)を静脈内に注入し、血管を閉塞させる治療法です。局所麻酔が少なくて済むため、麻酔の針を刺す回数が少ないことや術後の弾性ストッキングが不要な点がメリットです。リスクとしては、グルーに対するアレルギー反応が出ることがあること、術後一時的に静脈炎による皮膚の赤みが出る可能性などが挙げられます。
編集部
ストリッピング手術についても教えてください。
黒澤先生
ストリッピング手術は、弁不全のある静脈を特殊なワイヤーで抜去する方法です。メインの静脈だけでなく、静脈の枝も処置するため、根治的で確実な治療効果が得られますが、静脈の走行部位に沿って、複数の皮膚切開をするため、体への負担が大きく、現在の治療法としては主流ではありません。
下肢静脈瘤はどの治療法を選べばよい?

編集部
保存療法に使われる「弾性ストッキング」とは?
黒澤先生
弾性ストッキングは、足を均等に圧迫することで、血流を改善し、静脈のうっ滞を軽減します。初期の下肢静脈瘤の人やなんらかの理由で手術ができない人、または手術を希望しない人などに用いられます。特に静脈うっ滞による皮膚炎や皮膚潰瘍がある方は、比較的強い圧の弾性ストッキングによる圧迫療法が必要です。ほかにも、血管内焼灼術後の補助療法として、一定期間着用する必要があります。
編集部
どの治療法を選べばよいのでしょうか?
黒澤先生
下肢静脈瘤の症状や状態、患者さんの希望によって最適な治療法が異なります。下肢静脈瘤の治療には、ほかにも硬化療法や瘤切除などの治療もありますが、症状の進行具合やライフスタイルを考慮し、医師と相談しながら治療を決めることが重要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
黒澤先生
下肢静脈瘤の治療は、適切な診断と、各治療法のメリット・デメリットに精通した医師のもとで治療を進める必要があります。下肢静脈瘤を疑ったときは、ぜひ血管外科へご相談ください。
編集部まとめ
下肢静脈瘤の治療法は多岐にわたり、それぞれにメリットとデメリットがあります。一人ひとりの状況に合わせた適切な治療法を選択することが、症状の改善と生活の質の向上につながります。思い当たる症状のある人は、早めに専門医と相談し、自身に最適な治療法を見つけましょう。
医院情報
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診療科目 | 血管外科・美容外科・美容皮膚科・ 皮膚科・外科・内科 |