足の血流が滞る「下肢静脈瘤」の治し方をご存じですか? 主流の2つの方法と選び方

足の血管がボコボコと浮き出たり、むくみやだるさが続いたり……。そんな悩みの原因となる「下肢静脈瘤」は、良性の病気ながら進行すると見た目や日常生活に大きく影響を及ぼすことがあります。そこで「おかざき足の血管外科・痛みのクリニック」の藤原圭史先生に、下肢静脈瘤の治療法とその選択の仕方について話を聞きました。

監修医師:
藤原 圭史(おかざき足の血管外科・痛みのクリニック)
下肢静脈瘤の治し方にはどんなものがある?

編集部
下肢静脈瘤の治療にはどのような選択肢がありますか?
藤原先生
下肢静脈瘤の治療には、大きく分けて「対症療法」と「根治療法」があります。対症療法としては、弾性ストッキングの着用や、生活習慣の見直しによって症状の進行を抑える方法などがあります。一方、静脈弁の壊れた血管を処置する根治療法には、さまざまな手術の選択肢があります。
編集部
弾性ストッキングについて詳しく教えてください。
藤原先生
弾性ストッキングは、足から心臓へ血液を戻す流れをサポートするための医療用着圧ストッキングです。特に軽症の人や、お仕事などで手術をすぐに受けられない人に有効な対処法としてお勧めしています。医療用のストッキングは、市販品とは圧力の強さやかかり方が異なり、適切に使用する必要があるため、必ず医師の指導の下、ご自身に合った製品を選ぶことが大切です。
編集部
一方の「手術」と言うとハードルが高いように感じます。
藤原先生
たしかに「手術」という言葉で身構えてしまう人もいますが、今では多くの治療が日帰りでおこなえて、身体への負担も少なくなっています。下肢静脈瘤を根本治療するには手術治療しかありませんし、患者さん一人ひとりの状態や生活に応じて、適した治療を提案ができますので、まずは詳しく説明を聞いてみても損はないと思います。
下肢静脈瘤は放っておいて大丈夫?

編集部
手術にはどんな種類がありますか?
藤原先生
根治を目的とした治療にはいくつかの方法がありますが、現在の主流は「血管内治療」と呼ばれるカテーテルを使った低侵襲な治療法です。とくに多くおこなわれているのが「血管内焼灼術(ラジオ波またはレーザー)」と「血管内塞栓術(グルー治療)」の2つで、それぞれに特徴があります。ほかに「硬化療法」という治療法もあります。
編集部
血管内焼灼術とはどのような治療ですか?
藤原先生
血管内焼灼術は、細いカテーテルを病変静脈内に挿入し、内側から高周波(ラジオ波)やレーザーで熱を加えて静脈を塞ぐ治療です。なお、血管が塞がれても、半年ほどで体内に吸収されるため問題ありません。当院ではラジオ波を採用していますが、ラジオ波とレーザーの治療成績や合併症の頻度は同等とされています。局所麻酔で、片脚あたり20~30分ほどの短時間でおこなえる日帰り治療です。
編集部
血管内塞栓術(グルー治療)についても教えてください。
藤原先生
グルー治療は、2019年に保険適用となった新しい治療法で、カテーテルを用いて血管内に医療用の接着剤(グルー)を注入し、静脈を閉塞させます。焼灼とは異なり、熱を使わないため痛みが少なく、TLA麻酔(周囲への局所麻酔)も不要です。針を刺す回数も少なく、術後の弾性ストッキングの装着も必要ないケースが多いのがメリットです。
編集部
2つの治療はどんな人でも受けられるのですか?
藤原先生
グルーには接着剤成分が含まれているため、アレルギーのある人には適さない場合があります。また、血管内焼灼術、血管内塞栓術どちらの治療法も万能というわけではなく、静脈瘤の種類や広がり、患者さんのライフスタイルなどを踏まえて適切な方法を選ぶことが大切です。静脈瘤の径(大きさ)があまりにも大きい場合には、グルー治療は向いていません。痛みや費用も異なりますので、どちらが向いているかは診察の上で判断していきます。
編集部
硬化療法についても教えてください。
藤原先生
硬化療法は、硬化剤という薬剤を静脈に注入し、外から圧迫することでその血管を閉塞させる治療法です。ものごく細い針を用いるため、通常の注射より痛みは少ないとされています。適応となるのは、くもの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤、側枝型や軽度の伏在型静脈瘤と呼ばれるもので、再発例や出血性の静脈瘤にも用いられます。なお、副作用として注入した部位に一時的なしこりや皮膚の色素沈着が見られることがありますが、これらは時間の経過とともに軽快するケースがほとんどです。
下肢静脈瘤の治療はここがポイント

編集部
下肢静脈瘤の治療は何科へおこなったらよいのですか?
藤原先生
下肢静脈瘤は「血管外科」または「心臓血管外科」「外科」の中で静脈瘤を専門に扱っている医師がいる医療機関での受診が適しています。医療機関によっては「足の血管外科」や「静脈瘤外来」「足の痛みクリニック」などの名称で診療をおこなっているところもあります。かかりつけ医に相談して紹介状をもらうのも一つの方法ですが、専門性の高い施設を選ぶことで、より的確な診断と治療を受けられるでしょう。
編集部
ほかに医療機関を選ぶポイントはありますか?
藤原先生
検査や治療の実績が豊富で、血管内焼灼術などの新しい治療に対応しているかどうかは大切なポイントです。先程の弾性ストッキングについても、日本静脈学会認定弾性ストッキングコンダクター資格を有する医師のいる医療機関だと安心かと思います。
編集部
最後に読者へのメッセージをお願いします。
藤原先生
浮腫の原因の一つである下肢静脈瘤は、放置すると徐々に進行し、日常生活に影響を及ぼすこともあります。現在では、体への負担が少なく効果的な治療法も確立されてきており、症状や状態に応じた選択肢も増えています。足のむくみやだるさが気になる人は、早めに血管の専門医へ相談してみてください。
編集部まとめ
「見た目の問題だけ」と思われがちな下肢静脈瘤ですが、放っておくと進行し、生活に支障をきたすこともあります。現在では、身体への負担が少ない治療法も確立されていますので、気になる症状がある方は、我慢せず、専門の医師に相談することが大切です。治療を通して、日々の快適さを取り戻す一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒444-0838 愛知県岡崎市羽根西1丁目6-4 |
アクセス | JR「岡崎」駅西口より徒歩1分 |
診療科目 | 血管外科、整形外科 |