「下肢静脈瘤」の3つの主な症状はご存じですか? なりやすい人の特徴・チェックリストも医師が解説!

「夕方になると足がむくむ」「ふくらはぎがよくつる」「足の痛みが出る」など、日常生活で感じる足の不快感。これらの症状は、もしかすると「下肢静脈瘤」が原因かもしれません。そこで今回は、下肢静脈瘤の症状やセルフチェック方法、病院での検査・治療などについて「まつもとデイクリニック」の松本先生に解説していただきました。

監修医師:
松本 康久(まつもとデイクリニック)
下肢静脈瘤になりやすい人の特徴

編集部
まず、下肢静脈瘤について教えてください。
松本先生
「下肢」は脚という意味の専門用語で、「静脈」は、みなさんご存知のように全身から心臓に血液を戻すための血管、そして「瘤」は「こぶ」という意味の言葉です。つまり、下肢静脈瘤は、脚の静脈がこぶのようになった状態を指します。
編集部
どうして、そのようになるのですか?
松本先生
何らかの原因で、足から心臓に血液が上手く戻らなかった場合、血液が逆流して主に膝から下の静脈に血液が溜まってしまうのです。すると、血液でいっぱいになった静脈が膨らんで、こぶのようになってしまいます。
編集部
下の方に血液が溜まってしまうのはなぜですか?
松本先生
足は心臓よりも下に位置しています。足の血液が心臓に戻るためには、重力に逆らって上がっていく必要があるので、足の静脈には血液の逆流を止めるためのバルプ(弁)がついています。しかし、足の付け根や膝裏などの太い血管への合流部にあるバルプは、腹圧を受けやすいため壊れやすいのです。壊れた場合は血液が心臓に戻っていかず、下の方に溜まってしまいます。
編集部
実際のところ、下肢静脈瘤の人は多いのですか?
松本先生
そうですね。実際に医療機関で診断されてない人も含めると、日本人の6人に1人が発症しているというデータもあり、頻度の高い疾患と言えます。
編集部
下肢静脈瘤になりやすい人の特徴はありますか?
松本先生
下肢静脈瘤は女性に多く、特に妊娠や分娩をきっかけに起こるケースが多くみられます。また、「家族に下肢静脈瘤の人がいる」「立ち仕事である」なども発症しやすい要因であり、さらに年齢を重ねるにつれて発症頻度は上がってきます。
下肢静脈瘤の主な3つの症状

編集部
下肢静脈瘤になると、どのような症状がでるのでしょうか?
松本先生
初期のうちは症状がなく、全く気づくことのないまま進行していきます。しばらくすると、「足のだるさ」「むくみ」「痛み」の3つの代表的な症状が表れます。さらに進行すると、皮膚の硬化や色素沈着、さらには皮膚潰瘍ができることもあります。ほとんどの場合、こぶ自体も徐々に大きくなっていきます。
編集部
見た目も変わっていくということですか?
松本先生
そのとおりです。ひとたびできたこぶは自然に治ることはなく、最初は糸とかそうめんくらい細く浮き出ていたこぶが、進行するとうどんくらいの太さになり、血管自体も曲がりくねってきます。最初はよく観察しないとわからなかった膨らみが、この頃になるとパッと見ただけでもすぐにわかるようになってしまいます。そのため、早期に発見して、できるだけ早く治療することが大事です。
編集部
下肢静脈瘤を早期発見するためには、どうしたらいいのでしょうか?
松本先生
■見た目のチェック
- 足を見たときの違和感
- 青い血管が網目のような状態で浮き出る
- 血管が瘤のようにモコモコと浮き出ている
- 血管の色が赤色や紫色になり目立つようになった
■症状のチェック
- 足の不快感
- 足がだるい・疲れやすい
- 足が重い・痛い
- 足がむくむ
- 足がかゆい・ほてる
- 足がつる・夜中にこむら返りを起こす
- 生理中に足の痛みが強くなる
■皮膚のチェック
- 皮膚の症状(かゆみやむくみなど)がある
- 足に茶色や黒のシミができた
- 足の皮膚がカサカサ、ボロボロになっている
- 足の湿疹がなかなか治らない
- 足の皮膚に黒ずみがあり、硬くなってきている
- 足に傷や潰瘍ができ、治りにくい
下肢静脈瘤を発症したときの対処法・治療法

編集部
医療機関では、どのような検査をするのでしょうか?
松本先生
一般的には、まず下肢静脈エコー検査をおこないます。下肢静脈エコー検査によって、血液が逆流している部分の特定ができたり、血栓の詰まりを発見したり、血管の太さや深さがわかったりするので、治療の方針を立てるのに役立ちます。さらに詳しい検査が可能な医療機関では、APG(空気容積脈波検査)やPPG(光電脈波検査)をおこなって、より正確に診断していくことが可能です。
編集部
下肢静脈瘤と診断されたら、どのような治療をするのでしょうか?
松本先生
ごく軽症の場合、手術ではなく「弾性ストッキング」を装着して経過を見ます。弾性ストッキングは、足首は最も圧が強く、上に行くほど圧が弱くなるようになっているため、溜まった血液を上方に上げることができるのです。履いているときは効果がありますが、履くのにややコツがいることや、保険適用されない点には注意が必要です。中等度以上の下肢静脈瘤では、根本治療が必要になり「血管内レーザー治療」「高周波カテーテル治療」「血管内塞栓術」の3つが主流です。
編集部
下肢静脈瘤の治療法はいくつかあるのですね。
松本先生
血管内レーザー治療と高周波カテーテル治療は、熱を使って血管壁を縮小させ、血液の逆流を止める方法で、血管内塞栓術は下肢静脈瘤ができた血管内に医療用の瞬間接着剤を注入して、血管を閉塞する方法です。いずれの治療法も入院の必要はなく、日帰りでおこなうことができます。それぞれの治療法によって適応やメリット、デメリットがあるので、主治医とよく相談して、治療を選択するようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
松本先生
下肢静脈瘤は良性の疾患ではあるものの、重症化すると皮膚潰瘍など、皮膚にも影響が出ますし、見た目も変わってきてしまいます。また、悪化すると皮膚が硬くなって弾性がなくなり、こぶが小さくなることもあるため、「良くなった」と思って受診が遅れることもあります。そうならないためにも、早期に検査・診断し、治療する必要があります。チェックリストで症状を疑って、こぶが大きくなる前に専門の医療機関に相談いただけたらと思います。
編集部まとめ
足のむくみや痛みは、下肢静脈瘤が原因となっている場合があります。放置すると症状が悪化する可能性もあるため、早めの対策が大切です。チェックリストに当てはまる項目の多かった人は下肢静脈瘤の可能性があるので、専門の医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒781-0088 高知県高知市北久保2-39 |
アクセス | JR「高知駅」 バスで25分 |
診療科目 | 血管外科、こう門外科(内視鏡)、腹部外科、内科 |