「SNSを見ると疲れる」理由は心のSOSかも?放置するとうつ病に進行するリスクも

「SNSを見ているだけなのに、なぜか疲れる、気分が落ち込む」といった経験がある方は少なくないでしょう。その背景には“SNS疲れ”と呼ばれる心の消耗が潜んでいる可能性があります。SNSは単なる情報収集ツールではなく、他人との比較や評価への意識など、知らず知らずのうちに心へ負荷をかける場にもなり得ます。今回は、SNS疲れの正体や放置した場合の心への影響、見逃しやすい疲労のサイン、そして心を守るためのSNSとの上手な付き合い方について、Dr.Ridente株式会社代表取締役の種市摂子先生に詳しく解説いただきました。
※2026年1月取材。

監修医師:
種市 摂子(Dr.Ridente株式会社 代表取締役)
SNS疲れの正体:見るほど疲れるのはなぜ?

編集部
SNS疲れとは、どのような状態を指すのでしょうか? 目の疲れや、スマートフォンの見すぎとは何が違うのですか?
種市先生
SNS疲れとは、情報過多や対人刺激への過剰な曝露によって、脳の認知機能や感情処理機能が疲弊した状態を指します。SNSでは通知への反応、他者との比較、評価への配慮などが常に求められるため、ストレスによって交感神経が優位になり、脳が十分に休まりません。交感神経が優位な状態が続くと、集中力の低下や気分の落ち込み、意欲の低下、睡眠の質の悪化など、心理的・生理的な不調につながります。単なる視聴時間の長さに伴う目の疲れとは異なり、SNS疲れの本質は、心への負荷や社会的ストレスにあります。
編集部
他人の楽しそうな投稿を見ると落ち込む、「いいね」の数が気になって仕方ないといった感覚も、SNS疲れに含まれるのでしょうか?
種市先生
他人の投稿による落ち込みや自分の投稿に対する反応への過度な意識もSNS疲れに含まれます。人は本能的に他者と比較する傾向があり、競争心が強い人ほど比較による影響を受けやすくなります。SNSでは成功や幸福の場面が切り取られて流れるため、脳が自分は劣っていると判断してしまう場合があります。また「いいね」を期待する行動はドーパミン報酬系(快楽や意欲に関わる脳の神経回路)を刺激し、期待と不安を繰り返すことで精神的な消耗を招きます。落ち込みや自己評価の揺らぎ、強い疲労感は、心理学的にも説明可能なSNS疲れの症状といえます。
編集部
なぜSNSを見ているだけで心が疲れるのでしょうか? テレビやYouTubeの視聴とは何が違うのですか?
種市先生
SNSが心を疲れさせる最大の理由は、単なる受動的な視聴ではなく、対人関係の場として機能している点にあります。テレビやYouTubeは一方向の情報です。一方、SNSでは他者との比較や評価が行われる可能性、投稿内容へのコメント返信や反応への意識など、対人関係的なストレスが常に伴います。さらに、SNSは脳の報酬系を断続的に刺激し、ドーパミンの増減が繰り返されるため、精神的な疲労が蓄積しやすいことも分かっています。すなわちテレビやYouTubeとの大きな違いとは、SNSは眺める場ではなく無意識に心が参加させられる場である点です。この違いが心の疲れにつながります。
「自分は大丈夫」は危ない? 放置すると生じる悪影響とは

編集部
SNS疲れを放置すると、うつ病のリスクを高める可能性はありますか?
種市先生
SNS疲れを放置すると、うつ病のリスクが高まる可能性があります。これまでの研究から、SNSの利用時間が長くなるほど、自己肯定感の低下や孤独感の増加、睡眠の質の悪化といった、うつ病の前兆とされる心理変化が表れやすいことが示されています。他者との比較や他者からの評価に対する不安が続くと、脳のストレス関連領域および報酬系が過敏になり、慢性的なストレス状態へと移行します。こうした積み重ねが抑うつ症状に発展するため、SNS疲れに対しては早めの対処や休息、ストレスケアが重要です。
編集部
自分より大変な人がいる、まだ頑張れると感情抑制や我慢を重ねることで、心にはどのような影響が出ますか?
種市先生
自分より大変な人がいるからと感情を押し込み続けることは心に慢性的な負荷を与えます。本来、悲しみや疲労といった感情は、休息や助けが必要だという脳からの重要なサインです。感情を無視し続けると自分の不調に気づきにくくなり、突然の気分低下や体調悪化につながる場合があります。また、我慢は短期的に役立つ場合もありますが、長期化すると限界を見誤り、うつ病やバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクが高まる可能性があります。自分のつらさに気づき、適切に休む意識も大切です。
編集部
家族や友人など、周囲が本人の変化に気づくために意識すべきポイントはありますか? 本人に表れやすい具体的な行動の変化があれば教えてください。
種市先生
「いつもと違う」という違和感に目を向けることです。SNS疲れや心の不調では、投稿頻度の急な変化、会話や笑顔の減少、睡眠リズムの乱れ、疲れやすさなどが表れやすくなります。なんとなく元気がないという印象も、初期サインの一つです。周囲の人が「最近どう?」と声をかけ、関心を向けて話を聴く姿勢が、早期のサポートにつながります。
心を守るためのSNSとの付き合い方

編集部
SNS疲れにならないために、ストレス管理や自己理解の視点でできる予防法はありますか?
種市先生
SNS疲れは日常の小さな工夫で十分に予防できます。重要なポイントは、情報との距離感と、自分の心理状態への気づきです。具体的には、SNSをチェックする時間を決める、通知をオフにする、リアルな休息や対話の時間を意識的に確保するなどの対策が有効です。自分の感情や疲労のサインに耳を傾けることで、SNSの利用は “奪われる時間”ではなく“自分で選ぶ時間”に変えられます。
編集部
気分の落ち込みや疲労感がどのくらい続いたら医療機関への相談を検討すべきでしょうか?
種市先生
気分の落ち込みや疲労感が2週間以上続く場合は、休息とともに、信頼できる人や医療機関への相談を検討しましょう。特に、睡眠の乱れ、これまでできていたことが億劫になる、体が重い感覚が続く、仕事の欠勤または学校の欠席が増える、ミスが増えるといった変化が見られた場合は、早めの受診をお勧めします。不調を一人で抱え込まず、長引かせないことが回復への近道です。
編集部まとめ
SNSは便利かつ身近な存在である一方、使い方次第では心に大きな負担をかけるツールにもなります。SNSとうまく付き合うためには、自分の心の状態に気づきながら距離感を調整することが何より大切です。通知をオフにする、利用時間を決める、リアルな休息を意識するなど、小さな工夫で心を守りましょう。気分の落ち込みや疲労感が長く続く場合は、信頼できる人に相談することも重要です。本稿が、SNSとの関わり方を見直し、自分自身の心を大切にするきっかけとなりましたら幸いです。




