「2型糖尿病」になりやすい人の特徴はご存じですか? 初期症状や対処法も医師が解説!

食事や運動など、生活習慣が原因となって発症することが多い「2型糖尿病」。じつは生活習慣だけではなく遺伝的な要素も発症に関わっており、それらの条件から「2型糖尿病になりやすい人」を推測することはある程度可能なのだそうです。どのような人が発症しやすいのか、初期症状や対処法などについて、「八木医院」の八木先生に解説していただきました。

監修医師:
八木 孝(八木医院)
2型糖尿病になりやすい人の特徴

編集部
2型糖尿病になりやすい人の特徴を教えてください。
八木先生
- 40歳以上の人
- 肥満体型の人
- 著しく運動不足の人
- 家族に2型糖尿病患者がいる人
編集部
なぜでしょうか?
八木先生
まず年齢から説明すると、40歳以上の人は糖尿病を発症するリスクが高まるとされています。なぜなら、加齢によってインスリンを分泌する能力が低下するからです。また、運動機能が低下したり、生活習慣の乱れにより肥満が起こりやすかったりするのもこの年代と考えられています。ただし、過度に肥満の人は若年層でも発症することがあるので注意が必要です。
編集部
「インスリンを分泌する能力が低下する」とはどういうことですか?
八木先生
そもそも糖尿病は、血糖値が慢性的に高い状態が続くことで発症します。人間は食事などで糖質を摂取すると、膵臓からインスリンが分泌されて、細胞内に糖を取り込みます。そのため、血糖値が速やかに正常値に戻るのですが、40歳以降になると加齢によってこのインスリンを分泌する能力が低下してきます。もともと日本人は欧米人などと比べて、インスリンを分泌する能力が低いことがわかっています。それに加え、加齢によってインスリンを分泌する能力が低下するため、血糖値が下がりにくくなるのです。
編集部
太りすぎの人も、糖尿病になりやすいのですね。
八木先生
はい。太りすぎの人は内臓脂肪が蓄積していますが、内臓脂肪が増えるとインスリンの効きが弱くなってしまうのです。このように、インスリンの効きが悪くなることを「インスリン抵抗性」と言います。インスリン抵抗性があると、ますます多くのインスリンが必要になるので、いずれ膵臓は疲弊してしまいます。そのため、インスリンが出にくくなり、糖尿病の発症を招いてしまうのです。
編集部
運動不足の人も要注意なのですね。
八木先生
運動量の不足は、肥満に拍車をかけます。また、筋肉量が減るとインスリンの働きが弱くなることが判明しているため、糖尿病を発症しやすくなるのです。
糖尿病は遺伝する?

編集部
家族に糖尿病を発症した人がいる場合も、要注意なのですか?
八木先生
そうですね。糖尿病患者の大半を占める2型糖尿病は、遺伝的要因に過食や運動不足などの生活習慣が加わることで発症するとされています。そのため、家族に糖尿病の人がいると発症するリスクが高まるのです。
編集部
遺伝的要因に生活習慣が加わることで発症するということは、家族に糖尿病の人がいるからといって、必ずしも発症するわけではないのですね?
八木先生
もちろん家族が糖尿病だからといって、必ずしも自分も発症するわけではありません。意識的に運動したり、食事に気をつけたりすることで、十分に発症を予防することはできます。
編集部
そのほか、「こんな人は糖尿病になりやすい」という要素はありますか?
八木先生
ストレスの多い人、タバコを吸う人、食習慣が不規則な人、夜勤シフトの人、睡眠障害の人なども糖尿病を発症しやすいとされています。
糖尿病の初期症状と対処法

編集部
糖尿病の初期症状についても教えてください。
八木先生
実際のところ、糖尿病には初期症状がほとんどありません。それが糖尿病の怖いところであり、「気づいたら進行していた」という人が多い理由でもあります。
編集部
では、糖尿病に気づくきっかけとなる症状には、どのようなものがありますか?
八木先生
受診のきっかけとなるのは主に「多尿」「のどの渇き」「多飲」です。また、「倦怠感が出る」「体重が減少する」「手足がしびれる」「目がかすむ」「見えづらくなる」といった症状がみられることもあります。
編集部
そういう症状は、ある日突然出るのでしょうか?
八木先生
多くの場合、糖尿病の症状はゆっくりと進行します。そのため、本人はなかなか気づきにくく、気づいたら糖尿病を発症していたというケースは少なくありません。ただし、急激に進行する1型糖尿病の場合では、多飲・多尿が出現して数日で高血糖による意識障害で救急搬送されるケースもあります。
編集部
どのようにして糖尿病にいち早く気づいたらいいのでしょうか?
八木先生
日本では職場や自治体の健診が実施されており、尿検査や血糖値の項目が入っていることが多いかと思います。そのような検査の結果、要精査・受診と指示されたら専門医を受診することが大事です。ただし、健診でおこなわれる血液検査はほとんどの場合、空腹時の血糖値を調べます。糖尿病の初期では空腹時ではなく、食後に血糖値の上昇が見られるため、いち早く糖尿病に気づくなら、食後の血糖値を測定する検査を受けることをおすすめします。
編集部
40歳以降の人や太っている人など、糖尿病になりやすい人の条件に当てはまる人は、どのようにして発症のリスクを軽減すればいいでしょうか?
八木先生
肥満がある人は、食べすぎないようにするのと同時に、2kgの減量を目標に運動習慣を作りましょう。スポーツジムなどの活用もいいのですが、意気込んで入会したもののほとんど利用しないままになってしまっては意味がありません。まずは、エレベーターではなく階段を利用する、近くのコンビニではなく少し離れたスーパーに歩いて買い物に行くなど、普段から体を動かす量を増やすことから始めることもおすすめです。
編集部
運動を継続することが大切なのですね。
八木先生
加えて、運動の意識づけをするために大切なのは「記録すること」です。活動量はスマートフォンの歩数計アプリが便利ですが、最近はウェアラブル端末の進歩でより正確に記録できるようになりました。ぜひこうしたサービスも活用し、日々の運動量を蓄積して、意識づけに役立ててほしいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
八木先生
糖尿病の対策として大事なのは、運動と食事です。食事については、「食べ過ぎるのを正すこと」と「食物繊維をしっかり摂ること」が大切です。極端に糖分を止めるとストレスが溜まり、長続きしないことが多いので、まずはこれまでの食事量を見直して、食べ過ぎるのをやめたり、野菜をしっかり摂取したり、できることから始めてみましょう。それから、毎日体重を測ることも重要です。体重を毎日記録すれば、日々の小さな変化もわかりますし、食事などのモチベーションを高めることにもつながります。ぜひ、自分の意識づけのためにも体重を記録してみてください。
編集部まとめ
糖尿病は遺伝的な要素に加え、肥満や運動不足など様々な生活習慣が加わって発症します。遺伝的な問題は自分で解決することはできませんが、生活習慣は努力で改善できます。ぜひ自分の生活を見直して、できることから始めてみましょう。
医院情報
所在地 | 〒152-0035 東京都目黒区自由が丘3丁目8−4 |
アクセス | 東急東横線「自由が丘駅」 徒歩4分 |
診療科目 | 内科、内分泌内科、糖尿病内科 |