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人工甘味料で「2型糖尿病」のリスク増加 知らずに陥る“ゼロカロリーの罠”とは

 公開日:2025/03/11

フランスの栄養疫学研究チーム(EREN)は、食事記録を基に人工甘味料の摂取と2型糖尿病のリスクを分析し、人工甘味料の摂取は2型糖尿病の発症リスクを高める可能性があるということを示唆しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した2型糖尿病に関する内容とは?

フランスの栄養疫学研究チームらが発表した内容を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介する研究報告はフランスの栄養疫学研究チームらによるもので、研究報告は学術誌「Diabetes Care」に掲載されました。フランスの大規模な前向きコホート研究で、人工甘味料の摂取と2型糖尿病のリスクとの関連を調査しました。研究は2009~2022年にかけて実施され、平均年齢42.5歳の成人10万5588人が参加し、食事記録をもとに人工甘味料の摂取量が評価されました。

研究の結果、人工甘味料を多く摂取する人は、非摂取者と比べて2型糖尿病を発症するリスクが高いことが明らかになりました。特にアスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースの摂取と糖尿病リスクの間には有意な関連が認められています。この研究では、人工甘味料を摂取する人は女性や若年層に多く、BMIが高い傾向にありました。また、無糖飲料や超加工食品を多く摂取することも特徴として挙げられています。研究者は逆因果関係の可能性を排除するため、多くの感度分析をおこないましたが、関連性は一貫して確認されました。ただし、スクラロースについては一部の分析で有意性が低下しました。

ただし、人工甘味料の影響メカニズムはまだ明確に解明されておらず、腸内細菌叢の変化や血糖調節への影響の関与が懸念点として示唆されています。また、人工甘味料が本当に糖尿病の発症を引き起こすのか、それとも糖尿病リスクの高い人が砂糖の代替として摂取しているのかを完全に区別することは難しい点も指摘されています。この研究結果は、公衆衛生政策の観点からも重要であり、人工甘味料が安全な砂糖代替品であるという認識に対し、慎重な再評価が求められる可能性があるでしょう。

人工甘味料とは? ゼロカロリーでも健康に悪影響がある?

今回の研究テーマに関連する人工甘味料について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

人工甘味料は、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースなどの合成甘味成分で、砂糖の100~600倍の甘さを持ちながらカロリーがほぼゼロであるため、ダイエットや糖尿病予防に役立つとされています。血糖値に影響を与えず、むし歯になりにくいという特徴がありますが、健康への影響については議論もあります。例えば、アミノ酸由来のアスパルテームは体内で代謝されますが、フェニルケトン尿症の人には摂取制限が必要です。アセスルファムKやスクラロースは消化・吸収されずに排出されますが、一腸内細菌に影響を与える可能性が指摘されています。甘味への過剰な依存が食欲を増進させ、結果的に食べ過ぎを招くリスクもあります。

現時点で、人工甘味料は各国の食品安全機関が定めた摂取許容量の範囲内であれば安全とされていますが、長期的な影響については研究が進められており、今後の知見を注意深く見守る必要があります。ゼロカロリーでも摂取量に気をつけ、適切に活用することが重要です。

研究内容への受け止めは?

人工甘味料と2型糖尿病の研究内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

フランスの栄養疫学研究チームによる研究結果は、人工甘味料が必ずしも安全な砂糖の代替品にはならない可能性を示唆しています。さらに、2023年にWHO(世界保健機関)も、「人工甘味料をダイエットや生活習慣病予防のために使用することを推奨しない」とする指針を新たに公表しています。WHOは「人工甘味料が短期的には体重減少の効果がみられるが、長期的には逆に2型糖尿病の発症のリスクを高める可能性がある」ということも警告しています。

人工甘味料の過度の摂取を避け、適度な使用を心がけることが重要です。健康維持のためには、ダイエット食品に頼り過ぎず、健康な食生活と適度な運動を継続していくことが重要と思われます。

編集部まとめ

今回紹介した研究では、人工甘味料を多く摂取すると2型糖尿病を発症するリスクが高くなる可能性が指摘されていることが明らかになりました。健康的な食生活を考えるうえで、人工甘味料をどう取り入れるかには検討が必要です。大切なのは、食材や飲み物を選ぶときに「どのような成分が含まれているのか」を意識し、自分に合ったバランスを見つけることかもしれません。

この記事の監修医師