「2型糖尿病」発症リスクは“週5回以上のチョコレート”で低下 甘いものが糖尿病予防に!?
アメリカのハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院らの研究グループは「チョコレートを週に5回以上摂取する人は、摂取しないかほとんど摂取しない参加者と比べて、2型糖尿病の発症リスクが10%低かった」との結果を発表しました。この内容について濵﨑医師に伺いました。
監修医師:
濵﨑 秀崇(医師)
研究グループが発表した内容とは?
アメリカのハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院らの研究グループが発表した内容を教えてください。
濵﨑先生
今回紹介する研究報告は、アメリカのハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院の研究グループによるもので、その成果は学術誌「British Medical Journal」に掲載されています。
この研究は、2型糖尿病、心血管疾患、がんのない19万2208人の参加者を対象にスタートし、その後はチョコレートの種類別(ダークチョコレートやミルクチョコレートなど)の摂取と2型糖尿病リスクとの関連を調べるために、11万1654人が分析対象となりました。研究デザインは前向きコホート研究で、チョコレート摂取と2型糖尿病の発症リスクの関係を調べました。
結果として、チョコレートを週に5回以上摂取する参加者は、摂取しない、またはほとんど摂取しない参加者と比較して、2型糖尿病の発症リスクが10%低いと示されました。また、チョコレートの種類別の結果では、ダークチョコレートを週5回以上摂取する参加者は2型糖尿病のリスクが21%低く、ミルクチョコレートの摂取は体重増加リスクと関連していたものの、2型糖尿病のリスク低下に有意な関連はみられませんでした。さらに、ダークチョコレートに関しては、摂取量が週1回増えるごとに2型糖尿病リスクが3%低下することも確認されました。
研究グループは、今回得られた結果について「ダークチョコレートの摂取量の増加は、2型糖尿病のリスク低下と関連していた。ミルクチョコレートの摂取量の増加は、長期的な体重増加と関連していた。これらの知見を再現してメカニズムを解明するためには、さらなる無作為化比較試験が必要である」と結論づけています。
研究内容への受け止めは?
アメリカのハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院らの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。
濵﨑先生
チョコレートは糖質と脂質を多く含むお菓子であり、血糖値を上げるため「健康に良い食べ物ではない」という印象を持ちますが、カカオを多く含むダークチョコレートは抗酸化物質であるポリフェノール類を多く含み、一定の健康効果があるようです。最近の研究では、「ダークチョコレートの摂取は、心血管疾患リスクとは有意な関連はないものの、高血圧リスクを27%下げる」と報告されました。2型糖尿病の発症リスクを下げる機序としては、フラバノールによる「インスリン感受性(インスリンによる血糖値の下がりやすさ)の改善」や「腸内環境の改善」が考えられ、約20%の発症リスク低下は大きいものと考えます。
しかしその一方で、研究の限界もあります。本研究は、白人で高学歴な医療従事者が対象であり、結果がほかの集団にも当てはまるかは不明です。また、ほかの研究にも言えることですが、チョコレートの摂取量は自己申告で評価されているため、バイアスの存在は否定できません。さらに、一口にダークチョコレートと言ってもカカオ含有量は様々ですし、全てのダークチョコレートに同様の効果があるかどうかは不明です。
今回の研究は因果関係を示した研究ではないので、「ダークチョコレートを食べれば2型糖尿病になりにくくなる」というわけではない点にご留意ください。
今後、どのように研究成果が活用できそうか?
今回紹介していただいた研究結果は、どのようなことに活用できるものでしょうか?
濵﨑先生
「日常的なお菓子として食べるダークチョコレートに2型糖尿病の発症リスクを下げる効果がある」という研究結果は、みなさんにとって嬉しいことだと思います。ダークチョコレートに含まれるポリフェノール類は炎症や活性酸素による酸化を抑える働きがあり、健康に良い効果がありますが、チョコレートを食べ過ぎれば当然血糖値は上がりますし、太ります。糖質や脂質が多くポリフェノール類が含まれないほかのお菓子類と比べたら、健康に良い効果がある程度のものと考えてください。ポリフェノール類は野菜やナッツなどにも豊富に含まれているので、お菓子を食べるときには「美味しい」以外に「カラダに良いかも」という観点から、お菓子を選ぶのがいいと思います。
編集部まとめ
アメリカのハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院らの研究グループは「チョコレートを週に5回以上摂取する人は、摂取しないかほとんど摂取しない参加者と比べて、2型糖尿病の発症リスクが10%低かった」との結果を発表しました。さらに、この研究ではチョコレートの種類ごとにリスクに違いがあることも判明しました。チョコレートの種類や摂取量を意識して、今後の健康習慣に取り入れていくといいかもしれませんね。