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糖尿病の運動で血糖値が下がる仕組みとは? 運動療法の科学的根拠を理学療法士が解説

 公開日:2023/07/06
糖尿病の運動で血糖値が下がる仕組みとは? 運動療法の科学的根拠を理学療法士が解説

糖尿病の患者は、運動をすることが推奨されることはご存知の方も多いと思います。しかし、なぜ運動は糖尿病の治療に効果的なのでしょうか。また、運動と血糖値はどのような関係にあり、体の中ではどのような反応が起こっているのかも気になります。今回は運動と血糖値の関係について、科学的に解説して頂き、適切な運動の種類やタイミング、効果について理学療法士の河江先生にお伺いしました。

河江 敏広

監修理学療法士
河江 敏広(理学療法士)

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東都大学幕張ヒューマンケア学部理学療法学科准教授として理学療法士の育成に従事し、同時に糖尿病の運動療法に対する研究も数多く行っている。日本糖尿病理学療法学会副理事。Asian Association for the Study of Diabetes、American Diabetes Association、日本糖尿病協会、日本リハビリテーション医学会に所属。

運動が与える影響とメカニズムとは

運動が与える影響とメカニズムとは

編集部編集部

運動することで血糖値はどのように変化しますか?

河江 敏広さん河江さん

運動を行うことで、筋肉での糖取り込みが増加するため相対的に血糖値は低下します。しかし、1型糖尿病では血糖値が250㎎/dL以上を呈する場合に高強度の運動を行うことで、逆に血糖値が上昇する恐れもあるため、運動前の血糖値を把握することが重要です。

編集部編集部

運動することでのインスリンの効果やインスリン抵抗性の変化についても教えてください。

河江 敏広さん河江さん

運動を行うことで得られる効果としてはインスリン感受性の亢進(インスリンの効き目が良くなる)が報告されています。そのため、膵臓から分泌されるインスリンが少なくても、血糖値をより低下させることが可能になります。また、体に蓄積されている脂肪はインスリンの働きを邪魔する作用(インスリン抵抗性)を有するため、運動で脂肪量を減らすことが出来れば、インスリン抵抗性を改善させることも期待できます。

編集部編集部

運動することで筋肉や肝臓などの組織でブドウ糖の取り込みや貯蔵はどのように変化しますか?

河江 敏広さん河江さん

筋肉は運動を行うために糖を必要とし、肝臓で血糖値が低下した場合に糖を新生したり、血糖値が高い場合には糖を貯蔵したりする役割を果たしています。運動を継続的に行うことで、筋肉で使用する糖の量が増加したり、肝臓で貯蔵する糖の量が増加したりするため、相対的に血糖値に有益な影響を与えると考えられています。

適切な運動方法を解説 運動するタイミングや時間は?

適切な運動方法を解説 運動するタイミングや時間は?

編集部編集部

糖尿病患者は、どのような運動が効果的なのですか?

河江 敏広さん河江さん

糖尿病患者に効果的な運動としては有酸素運動、レジスタンス運動が挙げられます。有酸素運動では150分/週の頻度で、運動中に会話ができる程度が効果的とされています。また、レジスタンス運動は1日あけて週2~3回が望ましいですね。運動の強度は10~15回繰り返すことができる強度を1セットとして開始し、セット数を1~3回へ増加させることが推奨されています。

編集部編集部

運動を行う適切なタイミングはいつですか?

河江 敏広さん河江さん

糖尿病患者は食後30分〜1時間で実施することが推奨されています。理由は、この時間帯に消化が進み、最も血糖値が高くなるためです。その時間に運動を行うことで、高くなりやすい食後の血糖値の上昇を抑える働きをすると考えられています。また、インスリンを使用している場合はこの時間に運動を行うことで低血糖を予防することが可能となります。

編集部編集部

運動を行う際に気をつけるべきことはありますか?

河江 敏広さん河江さん

運動を行う際に最も注意すべきことは合併症の重症度の把握ですね。糖尿病の3大合併症では重症度が高いと禁忌となる運動も存在するためです。また、インスリンの使用や低血糖を引き起こす薬剤の使用している場合も、低血糖を引き起こす可能性があるので注意する必要があります。

運動療法の効果と持続性

運動療法の効果と持続性

編集部編集部

運動療法はほかの生活習慣病や合併症にはどのような効果がありますか?

河江 敏広さん河江さん

運動療法は糖尿病以外でも高血圧や脂質代謝異常、肥満を改善させる効果も認められており、糖尿病の3大合併症発症予防や重症化予防にも効果を認めています。また、糖尿病患者においては太い血管が障害される脳血管疾患や心筋梗塞などの心臓血管系疾患の予防にも効果を認めています。

編集部編集部

運動療法の効果はどれくらい持続しますか?

河江 敏広さん河江さん

運動療法の効果は、1回の有酸素運動を実施した場合48時間継続することが報告されています。すなわち、1回の運動で筋肉がより多くの糖を取り込む働きが持続されることになります。そのため、2日以上運動を実施しない期間を作ってしまうとこの効果が消失してしまうため、運動は1日におきに実施することが望まれます。

編集部編集部

運動療法の効果を高めるために、ほかに気をつけるべきことは何ですか?

河江 敏広さん河江さん

運動療法の効果を高めるためには、食事療法を遵守することです。よく、運動を行えば食事量を増やしてもいいのか、といった質問をされますが、多く食事を摂取することで血糖値の上昇を招き、それに対して膵臓がより多くのインスリンを分泌する必要があるため、いくら運動を行って良い効果が得られたとしても膵臓は疲弊してしまいます。そのため、栄養士から指示された食事摂取量は必ず守るようにしましょう。

編集部まとめ

今回はなぜ運動は糖尿病の治療に効果的なのかについて、科学的根拠に基づいて詳しく解説して頂きました。運動をすることにより体内では、膵臓、肝臓に影響を及ぼし、血糖値を下げる働きをしているとのことでした。運動は糖尿病以外の生活習慣病や合併症の予防、重症化予防にも効果的であり、運動のみならず食事療法も重要だと痛感しました。

この記事の監修理学療法士