「変形性股関節症」の治し方はご存じですか? 幹細胞治療の効果・リスクを医師が解説!

変形性股関節症をはじめとして、股関節の痛みを引き起こす疾患は様々あります。特に加齢とともに発症することが多く、「薬を飲んでも良くならない」「手術しかないのでは?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そんなときに検討したいのが「幹細胞治療」。股関節の痛みに対して、幹細胞治療はどのような効果を発揮するのか、「リペアセルクリニック大阪院」の岩井先生に教えていただきました。

監修医師:
岩井 俊賢(リペアセルクリニック大阪院)
幹細胞治療とは?

編集部
まず、幹細胞治療について教えてください。
岩井先生
幹細胞とは、色々な組織や臓器になれる未分化の細胞を指します。体内に存在している「体性幹細胞」、受精卵から培養してつくられる「ES細胞」、人工的に作製される「iPS細胞」の3種類があります。なかでも、骨髄や脂肪から採り出すことができる体性幹細胞を利用した再生医療は、整形外科の分野でも注目を集めています。
編集部
幹細胞を利用した再生医療では、どのような効果が期待できるのですか?
岩井先生
幹細胞には弱った細胞を補ったり、修復したりする働きがあります。こうした働きを活用し、主に炎症を抑制したり、鎮痛を促したりする治療に用いられます。
編集部
股関節の痛みにも効果があると聞きます。
岩井先生
はい。特に、何らかの原因で股関節の軟骨がすり減ることで炎症が起きる変形性股関節症には、幹細胞治療が適しています。発症すると歩くときや立ち上がるときなどに脚の付け根や太ももの前側、お尻などに痛みが出現し、進行すると安静にしていても痛みが出たり、歩行が困難になったりすることがあります。
編集部
変形性股関節症が、幹細胞治療で改善するのですか?
岩井先生
幹細胞を股関節に注射することにより、すり減った軟骨が修復されて痛みが軽減します。その結果、従来であれば人工股関節に置換しなければならなかった患者さんでも、手術をしなくて済む可能性が高くなるのです。
変形性股関節症に対する幹細胞治療の効果

編集部
なぜ、幹細胞を股関節に注射することですり減った軟骨が修復されるのですか?
岩井先生
幹細胞には傷ついたり、弱ったりした細胞を修復する働きがあります。幹細胞治療は、この幹細胞の働きを高めたものを股関節に注射します。そうすることで軟骨の修復が促され、痛みの緩和を期待することができるのです。
編集部
幹細胞治療のリスクやデメリットはありますか?
岩井先生
副作用が少なく安全な治療法ですが、その一方で再生医療は一部を除き、健康保険が適用されません。そのため、従来の治療と比べて高額になる点がデメリットとして挙げられます。また、比較的新しい治療法であるため、長期間にわたって患者を観察した治療データが乏しいということもデメリットと言えるかもしれません。
編集部
そのほかにも注意点はありますか?
岩井先生
幹細胞に反応するかどうかが症例によって異なるため、治療成績に個人差があることにも注意する必要があります。例えば、変形性膝関節症であれば、どれくらい症状が進行しているかによって、治療成績は変わります。また、半月板損傷であれば、どの部位がどれくらい損傷しているかなどによって治療の成績が異なります。
股関節の痛みに対する幹細胞治療に期待されるもの

編集部
手術をしなくても、注射だけで軟骨が修復されて痛みから解放されるというのは大きなメリットがある治療ですね。
岩井先生
従来、変形性股関節症に対する保険診療には限界があり、主に痛みを緩和するために鎮痛剤を内服したり、体重を減らしたり、運動療法をおこなったりするしか方法がありませんでした。しかし、変形性股関節症は加齢とともに進行していき、やがて歩行が困難になることもある疾患です。これまでであれば、変形性股関節症治療の最終手段は人工関節置換術とされてきましたが、体への負担が大きく、なかには手術ができない患者さんもいます。そうした場合でも幹細胞治療であれば受けられることがあり、治療の可能性が広がったのが大きなメリットと言えます。
編集部
幹細胞治療をおこなうことで、変形性股関節症を完全に治すことができるのですか?
岩井先生
はい、幹細胞治療は根治が期待できる治療法です。変形性股関節症を一度発症すると、たとえ痛みがなくても軟骨は確実にどんどんすり減り、股関節の変形は進んでいきます。しかし、幹細胞治療をおこなうことで、軟骨のすり減りを遅らせたり、軟骨を修復したりすることができるため、病気を根治するだけでなく、進行を抑制することも期待できます。
編集部
従来の治療が対症療法である一方、幹細胞治療は軟骨そのものを修復する根本的な治療のですね。
岩井先生
そうですね。そのためにも、変形性股関節症に対する幹細胞治療は、変形が末期になる前にはじめてほしいと思います。変形性股関節症が末期になると軟骨がほとんどなくなり、骨の変形が進んでいきます。そうなると、幹細胞治療が奏功する可能性が低くなってしまいます。反対に、早い段階であれば良い治療結果が得られることが多いので、股関節の痛みに悩んでいる場合は、当院のような幹細胞治療の経験が豊富な医療機関へご相談いただくことをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
岩井先生
股関節をはじめ、関節の痛みはとても煩わしく、生活にも影響するものです。歩いたり、階段をのぼったり、屈んだりするたびに痛みなどの違和感を覚え、「自分は股関節が悪い」「関節に問題がある」と思い知らされることでしょう。従来はそうした症状を訴える患者さんに対し、リハビリや痛み止めの内服薬などによる治療をおこないながら「とりあえず様子を見ましょう」となるケースが一般的でした。しかし、そうするうちに病気が進行し、結局手術せざるを得なくなるケースは少なくありません。そうした現状に対して、なんとかできないかと思案を重ねた結果、誕生したのが幹細胞治療です。「新しい治療法」と聞くと不安に思われることもあるかと思いますが、まずはご相談だけでもいいので、関節の痛みで困っている人は、ぜひ勇気を出して来院いただきたいと思います。
編集部まとめ
幹細胞治療は比較的新しい治療法ですが、日本のみならず欧米でも積極的におこなわれており、プロのアスリートでも採用しています。関節の痛みに悩んでいる場合は少しでも早いうちに、幹細胞治療を積極的におこなっている医療機関へ相談してみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒553-0003 大阪府大阪市福島区福島1-1-51 堂島クロスウォーク4F |
アクセス | 阪神線「福島駅」 徒歩5分 JR「新福島駅」 徒歩7分 |
診療科目 | 整形外科 |