「テニス肘」は『テニスをしない人』に多いって本当? 治療法についても医師に聞く
テニス肘やゴルフ肘は、スポーツ愛好者だけでなく、日常生活動作でも発症することがあるのだそうです。そこで、テニス肘やゴルフ肘に対する保存療法や手術療法などの治療法について、片岡利行先生(かたおか整形外科手の外科クリニック)に話を聞きました。
監修医師:
片岡 利行(かたおか整形外科手の外科クリニック)
肘の痛み… やっぱりスポーツのせい?
編集部
年齢とともに、肘に痛みを感じるようになってきました。
片岡先生
そういった声はよく聞かれます。四十肩・五十肩などはどんな生活習慣の方にも起こりうるのですが、肘の痛みについては、家事やお仕事、スポーツなどによるオーバーユース(使い過ぎ)によるものが比較的多いのが特徴です。
編集部
確かに「テニス肘」という言葉を聞いたことがあります。
片岡先生
そうですね。肘の外側部分に痛みがでる疾患でよくあるものに「上腕骨外側上顆炎」があるのですが、これは中年以降のテニス愛好家に起こりやすいため、「テニス肘」と呼ばれているのです。ただ、「テニス肘」はあくまでも通称であり、テニスをしない方にも多く見られる疾患です。
編集部
具体的にどういった痛みが出るのでしょうか?
片岡先生
例えば物を掴んで持ち上げたり、タオルを絞ったりといった動作で痛みが出ます。テニスの動作だと、バックハンドでストロークした時などに肘の外側から腕にかけて痛みを感じることがあります。
編集部
ある程度決まった動きの時に痛みが出るのですね?
片岡先生
その通りです。進行すると握力が低下したり、家事動作やテニスも行えなくなったりすることがあります。一方で、安静にしているときには痛むことがほとんどないのも特徴です。
テニス肘とゴルフ肘の違いは?
編集部
では、「ゴルフ肘」とはどんな状態ですか?
片岡先生
先述の通り、テニス肘は上腕骨外側上顆炎と呼ばれますが、それに対しゴルフ肘は「上腕骨内側上顆炎」と呼ばれます。どちらも筋肉と骨が付着している部分(腱)の炎症なのですが、テニス肘は肘の外側が痛くなり、ゴルフ肘は肘の内側が痛くなるという違いがあります。
編集部
ゴルフ肘も使い過ぎによるのですか?
片岡先生
そうですね。肘の曲げ伸ばし、捻(ひね)る動作などを繰り返し行ったり、勢いよく行ったり、強い力で行ったりするとテニス肘、ゴルフ肘を起こしやすくなります。
編集部
テニス肘やゴルフ肘になったらどうすれば良いでしょうか?
片岡先生
まずはテニスやゴルフ、家事動作やお仕事など、原因と考えられるスポーツや動作を一旦控え、安静にしていただくことが第一です。数日で改善が見られる場合は良いのですが、そこで改善がみられない場合には、速やかに医療機関を受診していただくことが大事です。
テニス肘・ゴルフ肘の治療は何するの? 手術の場合もあるってホント
編集部
医療機関ではどのような治療をするのですか?
片岡先生
まずはストレッチや痛みの出にくい動作指導を行い、痛みや炎症を抑える外用薬を使用します。疼痛が強い場合は、鎮痛剤の内服や体外衝撃波治療、局所注射なども行います。また、必要に応じて専用のバンドやサポーターなどを装着する場合もあります。保存加療を続けても疼痛が続き、日常生活に支障を来たす場合などには、手術療法も検討されます。
編集部
それはどのような手術になるのですか?
片岡先生
主には、炎症を起こしたり、変性したりしている筋肉の起始部(骨格筋の動かない骨への付着部)を切除する手術です。約5cm程の切開で、日帰り手術が可能です。術後は10日ほどのスプリント固定が必要となります。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあればお願いします。
片岡先生
名前からそう思われがちですが、テニス肘やゴルフ肘はテニス、ゴルフをしていない方の日常生活でも起こってしまう病気です。実際当院の場合、多くがプレイヤーではない方々です。つまり、日々の生活の中でも痛む場面が多く、困っている人が多いのです。痛みを感じたら早めに医療機関を受診することで、早く治療に結び付けることができます。受診の際、可能であれば「手の外科」など、手指を専門にしている整形外科に相談すると良いでしょう。
編集部まとめ
テニス肘やゴルフ肘は、スポーツをしない方でも起こりうるのだそうです。痛みを感じたらまずは安静にし、それでも治らないようであれば早期に受診し、治療を受けることが大事とのことでした。気になる痛みがある場合は、お近くの整形外科、可能であれば手の外科などに相談してみましょう。
医院情報
所在地 | 〒566-0024 大阪府摂津市正雀本町1-21-4 |
アクセス |
阪急電鉄「正雀」駅より徒歩5分 JR「岸辺」駅より徒歩14分 |
診療科目 | 整形外科、手の外科、リハビリテーション科 |