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変形性膝関節症への再生医療「PRP療法」「PFC-FD療法」をご存じですか? 効果やメリット・デメリットを解説

 更新日:2023/11/15
変形性膝関節症と再生医療「PRP療法」「PFC-FD療法」を医師が解説 効果的な理由やメリット・デメリットとは?

「再生医療」は、まだ手の届かない高度医療というイメージを持つ読者もいるかもしれませんが、「変形性膝関節症」など一般的な膝の痛みになどに対しても普及しつつあるそうです。そこで変形性膝関節症への再生医療「PRP療法」やそれを応用した「PFC-FD療法」について、整形外科医の北里精一朗先生(北里整形外科クリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。

北里 精一朗

監修医師
北里 精一朗(北里整形外科クリニック)

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1998年、東京慈恵会医科大学医学部を卒業後、22年間にわたり、大学病院および関連の基幹病院にて整形外科の診療、教育、研究に携わり、様々な膝関節外科手術や膝関節専門外来の経験を積む。2020年10月2日、新宿区江戸川橋で「北里整形外科クリニック」を開院。現在に至る。

変形性膝関節症とは膝のどんな病気? 膝の痛みの症状にはどんな治療法がある?

変形性膝関節症とは膝のどんな病気? 膝の痛みの症状にはどんな治療法がある?

編集部編集部

変形性膝関節症とはどんな病気ですか?

北里 精一朗先生北里先生

変形性膝関節症とは、膝関節を滑らかに動かす役割をしている「軟骨」がすり減って、痛みや動かしにくさを引き起こす病気です。初期は痛みや動かしにくさのみのことが多いのですが、進行すると腫れを生じたり、関節そのものが変形したりします。

編集部編集部

進行していく病気なのですか?

北里 精一朗先生北里先生

初期には軽度の痛みや動かしにくさ程度で生活に大きな支障もないのですが、徐々に関節の摩耗が進行し、生活動作が困難になっていきます。さらに軟骨がすり減ると、関節の変形もどんどん進み、膝の関節が伸ばせない、曲げられないなどで動作の制限が増えてきます。そうならないためにも、早い段階で適切な治療を受けることが大事です。

編集部編集部

変形性膝関節症にはどんな治療がありますか?

北里 精一朗先生北里先生

保存療法と手術療法に大別されます。保存療法は生活指導や薬物療法、運動療法、物理療法などを行います。生活指導の内容としては、関節への負担を減らすための体重コントロールや、関節に負担のかからない動作の指導などがあります。

編集部編集部

手術療法についても教えてください。

北里 精一朗先生北里先生

手術療法で最も多いのは人工膝関節置換術です。関節そのものを、手術でチタンやポリエチレンなどの人工関節に取り替えます。痛みや変形などの症状はかなり改善しますが、入院が必要だったり、術後のリハビリにやや時間がかかったりします。また、人工関節にしない術式として「膝周囲骨切り術」というものもあります。こちらは自分の関節を温存できますが、人工膝関節置換術よりも長期間のリハビリが必要です。さらに最近は、保険適用外ではありますが、手術療法と保存療法の中間に位置する再生医療を用いた「PRP療法」も注目されています。

変形性膝関節症の治療に行う再生医療「PRP療法」「PFC-FD療法」とは? 手術や保存療法と比べた効果・メリットは?

変形性膝関節症の治療に行う再生医療「PRP療法」「PFC-FD療法」とは? 手術や保存療法と比べた効果・メリットは?

編集部編集部

「PRP療法」とは何ですか?

北里 精一朗先生北里先生

PRP(多血小板血漿)とは、血液に含まれる血小板を濃縮させたもので、この中には傷の治りを促進させる成長因子などが含まれています。これを患部に注入して、痛みの軽減、あるいは痛めた組織の治癒を目指していく治療法がPRP療法です。使用するのは、ご自身の血液になりますので、アレルギーなどの副作用の心配はほとんどありません。ほかにも、PRP療法を応用した「PFC-FD療法」というものもあります。

編集部編集部

「PFC-FD療法」とはどのようなものなのですか?

北里 精一朗先生北里先生

PFC-FD療法では、患者さんから採血した自己血を精製しPRPを作製したあと、さらにPRPを活性化させ、血小板由来因子濃縮物(PFC)を作製します。さらにこれを無細胞化したうえで濃縮させ、フリーズドライ加工したPFC-FDを注入するのがPFC-FD療法です。PFC-FDにはPRPの約2倍の成長因子が含まれますので、高い効果が期待できます。

編集部編集部

従来の手術治療や保存療法と比べてどんな効果やメリットがありますか?

北里 精一朗先生北里先生

まず先述のように、ご自身の血液を使用しますのでアレルギーなどの副作用の心配がほとんどありません。ほかには、痛みを緩和するための薬物療法などと異なり、組織の損傷自体を修復する効果も期待できます。また、手術療法のように入院や術後のリハビリ通院の必要もなく、受けていただいた日には外来で治療しそのまま歩いて帰宅できます。

編集部編集部

どんな疾患に効果があるのですか?

北里 精一朗先生北里先生

現在もっとも活用されている疾患は変形性膝関節症です。ほかには変形性股関節症や靱帯損傷や腱炎、テニス肘、アキレス腱付着部症といった運動器疾患での効果も注目されており、メジャーリーガーなどプロスポーツ選手の治療にも活用されています。

変形性膝関節症の再生医療PRP療法・PFC-FD療法の費用は? 再生医療のデメリット(副作用)や持続性も専門医が解説

変形性膝関節症の再生医療PRP療法・PFC-FD療法の費用は? 再生医療のデメリット(副作用)や持続性も専門医が解説

編集部編集部

PRP療法やPFC-FD療法の費用についても教えてください。

北里 精一朗先生北里先生

保険適用外の治療なので、各医療機関によって費用は異なります。事前にHPなどで費用を調べてから相談に行くのをお勧めします。

編集部編集部

治療の流れはどのようになりますか?

北里 精一朗先生北里先生

まずは問診(痛みや生活の状況)と診察(腫れはないか、可動域制限や筋力低下がないか、など)を行います。次に、レントゲンエコーMRIなど画像検査を行い、その方の膝(骨、軟骨、半月板など)の状態を確認し、その患者さんに適応となる治療方法を提示します。当院で行っているPFC-FD療法の場合、まず診察を受けてもらい、PFC-FD療法の適応かどうかの確認ができたら採血を行います。約50ml採取した血液を当院と連携している細胞加工センターへ送り、検査・加工を行います。採血してから約3週間たった後、再び来院していただき、フリーズドライ化されたPFC-FDを関節へ注射して終了です。

編集部編集部

PRP療法やPFC-FD療法を受ける際の注意点などはありますか?

北里 精一朗先生北里先生

効果の高さや持続性が個人によって異なるということです。効果の持続時間は、一般的に約6ヶ月〜1年程度と言われていますが、人によってはあまり効果を感じられない人もいますし、効果が感じられるまでの期間も人によって違います。また、アレルギーなどの副作用のリスクは少ないですが、注射をしますので、注射部位などに炎症が起き、腫れや痛みなどが現れることはあります。

編集部編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。

北里 精一朗先生北里先生

立ち座りや歩行は、生活するうえで欠かすことの出来ない動作です。膝に痛みがあると、これらの動作ひとつひとつに苦痛を伴う事になり、大変なストレスとなってしまいます。痛みがあるのにそのままにしている方や受診はしたけれど痛み止めだけで我慢している方、手術を勧められているけれど、どうしても手術を避けたい方などは、一度、再生医療を導入している医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

入院などの必要がなく、かつ組織の損傷自体を修復する効果も期待できるという比較的新しい治療法。膝の痛みに悩んでいる方は、一度、相談だけでも検討してみてはいかがでしょうか。

医院情報

北里整形外科クリニック

北里整形外科クリニック
所在地 〒162-0811 東京都新宿区水道町4-13 3F(スーパーマルエツ内クリニックモール)
アクセス 東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅4番出口より徒歩3分
東京メトロ東西線「神楽坂」駅1番出口より徒歩8分
診療科目 整形外科、リハビリテーション科、スポーツ整形外科、小児整形外科

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