「PRP療法」のメリット・デメリットを医師が解説!
著名なメジャーリーガーやトップアスリートも治療を受けたとして知られる「PRP療法」。まだ日本ではそれほど有名ではありませんが、徐々に注目を集め始めている新しい治療法です。一体、どのような疾患に対して有効なのでしょうか。また、どのようなメリットがあるのでしょうか。六本木整形外科内科クリニックの前田先生に教えてもらいました。
監修医師:
前田 真吾(六本木整形外科内科クリニック 院長)
2008年聖マリアンナ医科大学卒業。聖マリアンナ医科大学病院整形外科学講座入局。同病院勤務、横浜市スポーツ医科学センターにて研鑽を積む。2018年より東京ひざ関節症クリニック銀座院勤務を経て2020年に六本木整形外科・内科クリニックを開院。自身のケガの経験から、「痛みでスポーツをあきらめる人を一人でもなくしたい」という強い信念をもち、「ありがとう」「来てよかった」と言われるクリニックをめざす。
再生医療の「PRP療法」とは?
編集部
PRP療法とはなんですか?
前田先生
PRPとは、Platelet Rich Plasmaの略のこと。日本語に翻訳すると「多血小板血漿療法」となり、簡単にいえば、患者さん自身の血液から抽出した「多血小板血漿(PRP)」を注射する「再生医療」です。
編集部
再生医療とはよく耳にする言葉ですが、一体、どのようなものですか?
前田先生
再生医療といってもいろいろな種類がありますが、たとえば、ケガや事故が原因で組織が損傷した場合、自分の体から「幹細胞」という特別な細胞を使って体の組織を再生する医療も、再生医療のひとつです。幹細胞は体内の細胞であれば、どんな細胞にもなれる能力を持った細胞のこと。この力に着目し、細胞そのものを薬として利用することで、ケガや病気を治すことを再生医療といいます。
編集部
PRP治療も、幹細胞を活用しているのですか?
前田先生
厳密にいうと違います。多血小板血漿(PRP)は血液中の血小板を濃縮して活性化したもののことをいいます。血小板は、白血球や赤血球と同じく、血液に含まれる細胞成分の一種であり、血管が損傷して出血した時に、血液を凝固させたり、止血したりする働きを持っています。
編集部
そのPRPが、なぜ、医療に用いられるのですか?
前田先生
なぜなら、この血小板には「成長因子」がたくさん含まれているからです。一般に成長因子とは、人体の組織の修復を促したり、細胞分裂を活性化したりするタンパク質のことをいいます。PRP療法ではその作用を利用することで、関節や筋・腱の疼痛軽減や組織修復、機能回復を促進する効果が期待できるのです。
編集部
つまりPRP療法とは、その血小板に含まれる成長因子を使って、ケガを治す方法なのですね。
前田先生
いってみれば、PRPも幹細胞も体の“修理屋”であり、その機能を最大限に使ってケガを治す治療法です。PRP療法は変形性膝関節症や筋腱靭帯の疾病に多く用いられ、近年ではメジャーリーガーやトップアスリートもこの治療法を活用したことで話題になりました。
編集部
たしかに、そうしたニュースも目にしました。
前田先生
この治療法は、日本ではあまり普及していませんが、これまでにも10年以上の実績があります。試合を控えている、あるいは、早期復帰が必要というアスリートから、趣味でテニスやゴルフ、ジョギングをしている一般の方まで、幅広くお勧めできる治療法です。
PRP療法のメリット
編集部
PRP療法のメリットを教えてください。
前田先生
まずは、自分自身の血液を利用するため、拒絶反応のリスクが少ないという点が挙げられます。ほかの薬はアレルギーがあって使えないという人も、PRP療法なら安心して受けていただけますし、感染症のリスクもほとんどありません。
編集部
ほかには、どのようなメリットがありますか?
前田先生
患者さんにとって低侵襲であり、体への負荷が少ないということもメリットです。たとえば重度の変形性膝関節症の場合、症状が進行すると、従来は手術を行うしか治療の手立てがありませんでした。しかしPRP療法を使えば、外科手術を行わなくてもすり減った軟骨を再生し、痛みを除去したり、歩行を楽にしたりすることができる可能性があります。このように、患者さんにとって侵襲性が低く、安全に治療を行えることもPRP療法のメリットです。
編集部
これまで手術しか選択肢がなかった人にとっては、ありがたい治療法ですね。
前田先生
また、「入院する必要がなく、通院で治療を受けることができる」ということや、「治療後に日常生活の制限がない」ということもメリットといえるでしょう。
編集部
さまざまなメリットがあるのですね。
前田先生
ほかの治療法で効果が見られなかった場合にも、痛みの軽減が期待できますし、傷ついた細胞の修復を行うことで、自己治癒力を高めることにもつながります。
PRP療法のデメリット
編集部
反対に、PRP療法のデメリットはありますか?
前田先生
日本では保険が適用になっておらず、自費診療となることです。そのため治療費が高額になることがあります。
編集部
ほかには、どのようなデメリットがありますか?
前田先生
10年以上の治療実績の蓄積があるとはいえ、認知の低さからそれで十分とは言い切れないことも、デメリットといえるかもしれません。治療効果は個人差があり、すぐに効果が感じられたという人もいれば、効果が現れるまでの期間が長いという人もいますね。
編集部
副作用はないのですか?
前田先生
アレルギーや感染症の心配はほとんどありませんが、治療後、まれに痛みや腫れなどを起こすことがあります。ただし、これらは患部を冷やしたり、安静にしたりすることで、数日後にはおさまってくるので、安心してください。
編集部
PRP療法は、誰でも受けられるのですか?
前田先生
がんと診断を受けたことがある人や、抗がん剤、生物学的製剤または免疫抑制剤を使用している人には、行うことができない場合があります。また、感染症にかかっている人はできないこともあります。そのほか、治療を開始する前には適性があるかどうか判断する必要があるため、PRP療法の治療を考えている場合には医療機関にご相談ください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
前田先生
PRP療法は非常に効果があり、海外ではトップアスリートも多く採用している治療法です。しかしその一方、PRPを注射するタイミングと、注射をする場所が非常に重要で、その見極めが治療の成否を握っているといっても過言ではありません。日本ではまだ、この治療法を行っている医療機関はそれほど多くありませんが、今後、間違いなく整形外科の分野で主流となる治療法です。当院では、変形性膝関節症のほか、いわゆる四十肩や五十肩、テニス肘、ゴルフ肘でお悩みの患者さんが多く来院しています。そうした症状でお困りの方は、ぜひ、ご相談ください。
編集部まとめ
自分の血液から抽出した成分で痛みを取り除いたり、損傷した部位を治癒したりするPRP療法。「今まで当たり前のようにできていたことが、痛みのせいでできなくなった」「どんな治療を試しても痛みが消えない」という場合は、ぜひ医師に相談してみると良いと思います。
医院情報
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診療科目 | 整形外科、スポーツ整形外科、小児整形外科、リハビリテーション、内科、ペインクリニック内科 |