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繰り返す「肘の痛み」を根本から改善する! 治療法を整形外科医が徹底解説!

 公開日:2025/05/21
繰り返す「肘の痛み」を根本から改善する! 治療法を整形外科医が徹底解説!

スポーツをする方にとって「投球時に肘が痛む」「ラケットを振るとズキッとする」など、肘の痛みは極めて身近な悩みではないでしょうか。中でもテニス肘や野球肘、ゴルフ肘といった疾患は広く知られており、その原因や対処法は、大人と子どもとで大きく異なることがあります。そこで今回は、肘に生じる代表的なスポーツ障害の種類や原因、治療法の選択肢、整形外科とスポーツ整形外科の違いなどについて、つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック院長の中谷創先生に詳しくお話を伺いました。

中谷 創

監修医師
中谷 創(つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック)

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防衛医科大学校病院や自衛隊中央病院などで医師としての経験を積み、自衛隊札幌病院 整形外科部長、自衛隊中央病院 整形外科医長などを経て、2022年12月、「つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック」を開院、院長となる。また、ラグビー日本代表チームドクターや、2021年東京オリンピック 七人制ラグビー 大会ドクターなど、スポーツドクターとしての経験も豊富。取得資格は、日本整形外科学会 整形外科専門医、日本整形外科学会 スポーツ医、日本整形外科学会 運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会 スポーツドクター、Prehospital immediate Care in Sports Level 2。

肘の疾患について知る

肘の疾患について知る

編集部編集部

スポーツをしている中で多くみられる、肘の疾患には具体的にどのようなものがありますか?

中谷 創先生中谷先生

スポーツによって生じる肘の疾患には、テニス肘やゴルフ肘といった使いすぎによる障害が多くみられます。これらはスポーツに限らず、日常生活の繰り返し動作でも発症する可能性があります。大人では骨格が完成しているため、筋肉が付着する部位に炎症が生じやすく、肘の外側や内側の痛みとして現れます。一方、子どもは成長段階であるため、未発達な軟骨部分が損傷しやすく、将来的な変形を招くリスクもあるため注意が必要です。

編集部編集部

テニス肘や野球肘、ゴルフ肘など、それぞれどこを痛めているのですか?

中谷 創先生中谷先生

テニス肘では、バックハンド動作などにより肘の外側(外側上顆)に痛みが生じます。ゴルフ肘は、スイング時の手首の動きにより内側(内側上顆)に痛みが現れます。野球肘は成長期の子どもに多く、成長軟骨が損傷しやすいため、内側や外側、場合によっては肘の後方にも痛みが及ぶことがあります。それぞれのスポーツ動作に伴う負荷が、特定部位の障害につながります。

編集部編集部

それぞれ、どのようなことが原因で痛みを発症する場合が多いのでしょうか?

中谷 創先生中谷先生

主な原因は繰り返しの動作による使いすぎです。テニス肘では、手首や指を伸ばす筋肉が肘の外側に付着しており、その部位への負担が炎症を引き起こします。ゴルフ肘では、手首を曲げる筋肉の付着部である肘の内側に負担がかかり痛みを生じます。野球肘の場合は成長期の軟骨が傷つきやすく、過度な投球や練習によって症状が出ることが多いです。

子どもの肘の疾患と受診のタイミング

子どもの肘の疾患と受診のタイミング

編集部編集部

子どもに多くみられる肘の疾患にはどのようなものがありますか?

中谷 創先生中谷先生

子どもの場合は、骨が未発達な成長期に多く見られる軟骨障害が特徴的です。外側では「上腕骨小頭」と呼ばれる部分の軟骨が剥がれてしまうことがあり、内側では「内側上顆」と呼ばれる部分に損傷が起こりやすくなります。これらは放置してしまうと変形や運動障害につながる恐れがあるため、早期発見と適切な対応が求められます。特に繰り返しの投球やラケット動作の多いスポーツをする子どもは注意が必要です。

編集部編集部

肘に痛みや違和感があったとき、最初に取るべき行動について教えてください。

中谷 創先生中谷先生

痛みや違和感があった際は、まず運動を中止し安静を保つことが第一です。特に運動直後に痛みを感じた場合には、氷などで患部を冷やすことが効果的です。軽い痛みだからと無理をすると悪化し、治療に長い時間を要することもあるため、異変を感じた時点での迅速な対応が重要です。早めに対処することで、重症化や長期離脱を防ぐことができます。

編集部編集部

肘に違和感や痛みがあったとき、病院を受診すべきタイミングについて教えてください。

中谷 創先生中谷先生

大人の場合、転倒や打撲などの外傷がなければ、痛みが数日続いた段階で受診を検討するのが一般的です。一方、成長期の子どもは骨が未成熟なため、放置すると成長に支障をきたす恐れがあります。したがって、子どもが「少しでも痛い」と訴えた場合は、早めに専門医を受診することが望ましいとされています。初期対応がその後の治癒経過に大きく影響します。

肘の治療法とスポーツクリニックの特徴

肘の治療法とスポーツクリニックの特徴

編集部編集部

スポーツに関係する肘の疾患の治療には大きく分けると、どのような方法がありますか?

中谷 創先生中谷先生

まずは安静を保ち、痛みの軽減を目指す「保存療法」が基本となります。痛みが落ち着いた後には、再発予防も含めたリハビリテーションをおこない、肘だけでなく手首や肩、股関節など全身の動きも確認します。これにより動作の癖や負荷の偏りを是正することができます。症状が改善しない場合に、最近では、超音波で炎症部位を特定し、ブドウ糖などの浸透圧の高い液を入れることで、小さな組織を一度壊して回復を促す「プロロセラピー」が選択される場合があります。その他、再生医療の「PRP療法」もありますが、それらの治療でも改善しない場合は必要に応じて手術が検討されます。

編集部編集部

子どもと大人とでは治療方針に違いはありますか?

中谷 創先生中谷先生

基本的な治療方針は変わりませんが、子どもの場合は骨の成長に配慮した慎重な対応が必要です。成長軟骨へのダメージは将来の関節機能に影響を与える可能性があるため、無理にスポーツへ復帰させるのではなく、医師の指示に従い段階的にリハビリテーションを進めることが大切です。治療中も成長の進行を見極めながら、適切な時期に運動を再開できるよう配慮する必要があります。

編集部編集部

一般の整形外科とスポーツ整形外科の違いについて教えてください。

中谷 創先生中谷先生

一般整形外科では、痛みの緩和を主目的とした治療が多いのに対し、スポーツ整形外科は「競技復帰」を重視した治療を中心におこなう点が特徴です。肘の痛みの原因を全身の動きやフォームから総合的に分析し、必要に応じて股関節や体幹、肩などの連動も評価します。また、理学療法士と連携して再発予防に努めるなど、リハビリ体制も充実しており、パフォーマンス向上まで見据えたサポートが可能です。

編集部まとめ

スポーツに励む人にとって、肘の痛みは無視できない問題の一つです。特に成長期の子どもにとっては、肘の違和感が将来の運動能力に影響する可能性もあるため、早めの対応が重要となります。大人と子どもでは痛みの原因から治療方法に至るまでの考え方が異なる点も知っておくべきかもしれません。本稿が読者の皆様にとって、肘の痛みに対する正しい理解と、適切な対処方法を知るきっかけとなりましたら幸いです。

医院情報

つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック

つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック
所在地 〒153-0052 東京都目黒区祐天寺2-14-20 祐天寺駅前ビル3階
アクセス 東急東横線「祐天寺」駅東口2を出てすぐ
診療科目 整形外科・リハビリテーション科・スポーツ整形外科

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