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「腰痛」は内視鏡手術で治せることをご存じですか? メリット・デメリットや注意点も医師が解説!

 公開日:2024/10/08

内視鏡手術による腰痛治療は、従来の手術と比べて多くのメリットがあります。一方で、リスクや適応疾患についても正確な情報を知ることが大切です。今回は、腰痛を内視鏡手術で治療するメリットやリスクなどについて、「平井整形外科クリニック」の平井志馬先生に解説していただきました。

平井 志馬

監修医師
平井 志馬(平井整形外科クリニック)

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埼玉医科大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院整形外科入局、東京都立墨東病院、横浜労災病院などで経験を積む。2023年、神奈川県横浜市に位置する「平井整形外科クリニック」の副院長に就任。現在も国立病院の脊椎外科部長、脊椎治療センター長として年間300件以上の脊椎手術をおこなう。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医、日本脊椎脊髄病学会専門医・指導医。

脊椎内視鏡手術とは?

脊椎内視鏡手術とは?

編集部編集部

まず、脊椎内視鏡手術について教えてください。

平井 志馬先生平井先生

脊椎内視鏡手術は、文字通り内視鏡を使っておこなう脊椎の手術のことを指します。従来の脊椎手術は、皮膚や筋肉などを大きく切開して、術部を直接肉眼で確認しておこなっていたのですが、脊椎内視鏡手術は2cmほどの小さな皮膚切開から内視鏡を挿入し、4Kのモニターに映し出された画像を見ながらおこないます。アメリカで1996年頃からはじまった手術で、現在は日本でも年間約2万件の実績があります。

編集部編集部

内視鏡と聞くと、お腹の手術というイメージがあります。

平井 志馬先生平井先生

そうですね。元々は胃がんや大腸がんなどに用いられる術式でしたが、近年ではカメラなどの技術の進歩や医療機器の発達に伴い、脊椎の分野でも内視鏡手術が可能になりました。胃カメラや大腸カメラは口や肛門からカメラを挿入しますが、脊椎内視鏡は皮膚を2cmほど切開し、そこからカメラや医療機器を挿入して手術をおこないます。

編集部編集部

傷口が小さいというのは嬉しいですね。

平井 志馬先生平井先生

そうですね。これまでの脊椎手術は、脊椎の部分をしっかり見るために、病変と直接関係のない筋肉や骨などの組織も切除や剥離をしていたので、傷口が10cm前後になったり、術後の痛みも強く出たりしました。その一方、内視鏡の手術であれば傷口は約1~2cm、手術時間は約1時間、出血は10mlほどなので、手術翌日から歩くことができます。特に高齢で手術を諦めていた人や、若くて長期入院ができない人などに、非常にメリットの大きい治療法です。

内視鏡手術の適応疾患は?

内視鏡手術の適応疾患は?

編集部編集部

どんな脊椎疾患でも内視鏡手術はできるのでしょうか?

平井 志馬先生平井先生

基本的には、神経痛(坐骨神経痛)を伴っている腰椎疾患が適応となります。適応疾患としては、「腰部脊柱管狭窄症」や「腰椎椎間板ヘルニア」が代表的です。内視鏡手術をおこなえる医師や医療機関が限られており適応も異なりますが、最近では腰だけではなく、首(頚椎)に対してもおこなわれるようになってきています。

編集部編集部

手術について詳しく教えてください。

平井 志馬先生平井先生

腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアの手術では、神経を圧迫している骨や椎間板などを切除し、神経への圧迫を解除して症状の軽減を目指します。従来からおこなわれている神経の圧迫を解除する方法は、原因となっている病巣に、正常な皮膚や筋肉を切って到達していました。その一方で、内視鏡の場合はその犠牲となる正常な組織が非常に少ないのが特徴です。脊椎は身体の非常に深い場所にあるため、視野が悪い状態で手術せざるを得ないこともあります。もし手術中に神経を傷つけてしまうと、神経は回復することがないため、非常に深刻な後遺症を残すことがあります。しかし、脊椎内視鏡手術であれば、体内の手術をする深い場所にまでカメラが挿入できて光源もあるため、視野が非常に良好で安全に手術をおこなうことができるのです。

編集部編集部

だから傷口が小さくても安全に手術をおこなうことができるのですね。

平井 志馬先生平井先生

はい。私がおこなう手術では全身麻酔を使用しますが、手術翌日から歩けますし、術後3~5日で退院することができます。出血も平均すると10mlほどしかしないので、体への負担は非常に少ないと言えるでしょう。

編集部編集部

脊椎内視鏡手術にもいくつか種類があるのですか?

平井 志馬先生平井先生

現在、日本国内では「MEL」「FESS」「UBE」という3種類の脊椎内視鏡手術の方法があります。日本で最も多くおこなわれている「MEL」の傷は18mm、2番目に多くおこなわれているのが「FESS」で傷は7mm、最先端で最も傷の小さい内視鏡手術である「UBE」の傷口が3~5mmです。医療機器の進歩に伴い、脊椎内視鏡手術も新たな術式が誕生し、進化とともに傷口は小さくなってきています。

脊椎内視鏡手術

脊椎内視鏡手術の傷

手術のリスクや注意点

手術のリスクや注意点

編集部編集部

手術にはリスクもあると思います。

平井 志馬先生平井先生

そうですね。脊椎手術は内視鏡の出現により、以前よりも安全に気軽にできるようになっていますが、神経(脊髄)を直接触る手術もあるため、リスクもゼロではありません。特に神経の場合、一度傷つけてしまうと回復が困難になるケースが多いので、慎重におこなう必要があり、整形外科の手術の中でも難易度が非常に高いと言われています。

編集部編集部

例えば、どのようなリスクが考えられますか?

平井 志馬先生平井先生

神経にぶつかっている椎間板や靭帯を取り除く必要があるので、その際に神経を傷めてしまう「神経損傷」や、神経を包んでいる硬膜を傷つけてしまう「硬膜損傷」が代表的な合併症です。ほかにも、脊椎の近くにある腎臓、肺、腸管を傷つけた場合には、臓器損傷が生じる可能性もあります。これらのリスクを考慮すると、万が一の合併症やトラブルにも対応できるように、ほかの診療科と連携とれる体制、集中治療室などの緊急対応できる設備がある医療機関で受けることが望ましいと考えます。

編集部編集部

手術以外の治療法についても教えてください。

平井 志馬先生平井先生

最初におこなうのは、内服や湿布薬です。最近は、神経痛に対しての痛み止めもあり、内服薬の選択肢も増えてきています。内服で効果がない場合は、神経ブロック注射やリハビリテーションなどの選択肢があります。

編集部編集部

もし、先生が治療を受ける側の立場だったら、どのように考えますか?

平井 志馬先生平井先生

もし私自身が患者さんだったら、どの治療法を選ぶかを考え、可能な限り手術以外の方法を全て試したうえで、症状が改善しない場合の最終手段として手術をおこなうべきで、その際は可能な限り傷の小さい手術が望ましいと考えます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

平井 志馬先生平井先生

「背骨の手術をすると寝たきりになる」と昔から言われており、いまだに脊椎手術についてそう考えている患者さんの声を耳にします。たしかに、手術の難易度が高く、術後に神経症状が改善しなかったり、悪化したりする可能性もゼロではありません。しかし、最近ではカメラをはじめとする医療機器や診断技術の進歩により、手術の成績も非常に良くなり、合併症の頻度も格段に低下してきています。脊椎手術は、担当する医師や医療機関によって術式や手術適応も異なってくるので、「自分がどのような手術を受けたいのかを明確にする」「複数の医療機関を比較して、そこが得意としている手術を調べる」といったことも大切です。脊椎手術を以前のようなマイナスのイメージで考えず、まずは専門医に相談してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

脊椎の内視鏡手術について解説していただきました。腰痛に悩む人にとって、内視鏡手術は効果的な治療法の1つです。従来の手術と比べて、傷口が小さく回復が早いなど、多くのメリットがあるとのことでした。もちろん、薬やリハビリテーション、装具療法など、手術以外の治療法もあるので、内視鏡手術の利点と注意点を理解し、自分に合った治療法を選んでいきましょう。

医院情報

平井整形外科クリニック

平井整形外科クリニック
所在地 〒223-0053神奈川県横浜市港北区綱島西1-6-11
アクセス 東急東横線「綱島駅」 徒歩1分
診療科目 整形外科、リハビリテーション科、リウマチ科

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