腰痛は温めるのと冷やすのとどちらがいいの?
あまりにひどいと、息苦しさすら感じる腰痛。身のまわりの物を利用して緩和するとしたら、温めるほうがいいのでしょうか、それとも冷やすほうがいいのでしょうか。腰痛への対処法を、「みやき整形外科・脊椎クリニック」の味八木先生に伺いました。あわせて、医院での正式な治療方法についても、知っておきましょう。
監修医師:
味八木 二郎(みやき整形外科・脊椎クリニック 院長)
昭和大学医学部卒業。昭和大学藤が丘病院、麻生総合病院への勤務、昭和大学藤が丘病院整形外科兼任講師などを歴任後の2018年、東京都世田谷区に「みやき整形外科・脊椎クリニック」を開院。日本脊椎脊髄病学会指導医、日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医という専門性を生かしつつ、地域密着型の医療に専心している。医学博士。日本医師会、日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会、日本脊椎インストゥルメンテーション学会、日本低侵襲脊椎外科学会の各会員。
冷やすのはNG、温める場合でも様子をみながら
編集部
腰痛を軽減しようと思ったら、温めるべきでしょうか、冷やすべきでしょうか?
味八木先生
冷やすことに関する医学的なエビデンスは出ていませんので推奨できません。では、温めたほうがいいのかというとそうではなく、痛みが走った直後に関しては「控える」ようにしてください。まずは安静第一で、痛みが落ち着いてから温めるようにしましょう。そのうえで、痛みがひどくなるようなら、温めることも控えます。
編集部
身のまわりの物に頼る場合、温める方法を考えないといけないですね。
味八木先生
カイロを使ったり、温かいおしぼりをあてたり、いろいろなやり方があると思います。質問への答えとしては違いますけど、実際のところ、市販のシップを活用してみてはいかがでしょうか。
編集部
シップが有効なんですね! ちなみに市販のシップって、温シップなのでしょうか、冷シップなのでしょうか?
味八木先生
最近のシップは温も冷もなく、消炎作用のある成分が含まれています。なお、医院で処方するシップの中には、トウガラシなどの成分が入っているものもあります。血管を拡張し、血流を増加させる作用があります。
編集部
温める方法の一つとして、「きゅう」はいかがでしょう?
味八木先生
否定はしませんが、推奨もしません。症状は緩和するかもしれませんが、痛みの原因が取り除かれるわけではありませんからね。
腰痛の原因は、必ずしも腰にあらず
編集部
そもそも、腰痛はどうして起きるのですか?
味八木先生
骨の異常、神経の問題、関節の不具合、筋膜の炎症、内臓や血管の病気、ストレスなど、その原因はさまざまです。ですから、そのすべてを診られる整形外科のような医院でないと、適切な診断は下せないと思います。
編集部
例えば内臓の病気があったとして、それがどう、腰痛に現れてくるのでしょう?
味八木先生
本当は内臓やその周辺が“痛い”はずなのに、なんとなく腰の周りに痛みを感じて、「腰痛だ」と受けとってしまうのです。腰痛だからといって、腰に原因があるとは限りません。医師としても、腰だけ診ていてはダメなのです。ちなみに「腰痛」という病名はなく、痛みなどを総称して、そう呼んでいます。
編集部
上記原因の全てに、温める方法が有効だとは思えません。
味八木先生
そうなのです。温めることで、より痛みがひどくなるようなら、ただちにやめてください。逆に、温かいシャワーなどを当てて「楽になったな」と感じたら、他の温める方法も有効でしょう。なお、シップには鎮痛効果がありますので、あくまで「痛みの緩和方法」としてですが、上手に活用してください。
編集部
正式に受診するとしたら、やはり整形外科ですか?
味八木先生
整形外科で、脊椎(せきつい)専門医のいる医院がいいでしょう。原因を正しく特定したうえで、循環器や内科などの専門医院をご紹介することも可能です。
似て非なる「整形外科」と「形成外科」
編集部
整形外科とは、どのような領域を扱っているのでしょう?
味八木先生
一言で言うなら、「運動器」の機能的改善です。主に、①骨や関節などの骨格、②骨や骨格を取り囲む筋肉、③骨格や筋肉周辺の神経を診る外科です。似た標ぼう科に「形成外科」があるものの、「形成外科」は、生まれながらの異常や、病気や怪我による見た目の悪化を治療する外科です。
編集部
腰痛は「見た目」じゃないですから、整形外科になりますね?
味八木先生
そのとおりです。先天性の骨格異常などになると話は別ですが、一般的な腰痛の解消なら、整形外科を受診してください。
編集部
先生の医院では、腰痛の患者に対し、何をしてくれるのでしょう?
味八木先生
診察による原因の特定と、その治療です。治療に関しては、保存療法で進める場合と、手術を要する場合があります。重篤な症例でない限り、まずは、保存療法から始めていきましょう。保存療法には、痛み止めのお薬やリハビリ、電気療法など、さまざまな種類があります。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
味八木先生
腰痛を防ぐためには、体を冷やさないことが肝要です。冬場はもちろんのこと、夏場でもクーラーの冷やしすぎには注意してください。電車の中など、強い冷房が避けられない場合は、羽織れる衣料を持参するといいでしょう。
編集部まとめ
腰痛を冷やす医学的根拠は「ない」とのことでした。また、タイミングや原因によっては、温めても弊害を起こしかねません。味八木先生の指摘にあった、温水シャワーによる見極め方が、一つのヒントになるかもしれませんね。いずれにしても、受診だけはしておいて、医師と相談しながら腰痛改善に努めてください。
医院情報
所在地 | 〒154-0022 東京都世田谷区梅丘1-26-5 2F |
アクセス | 小田急小田原線「梅ヶ丘駅」より徒歩1分 |
診療科目 | 整形外科、形成外科 |