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【現場の介護福祉士に聞く】介護による辛い腰痛…予防や対処法はある?

 公開日:2023/12/08
【現場の介護福祉士に聞く】介護による辛い腰痛...予防や対処法はある?

介護をしていると、だんだん腰が痛くなってきた……というように、介護作業で腰痛が伴うことはよくあります。原因は様々ありますが、介護作業時の姿勢や日々のちょっとした工夫・注意で軽減させることができるようです。そこで今回は、介護福祉士の若山さんに介護と腰痛の関係や対処法について聞きました。

若山 慎吾

監修介護福祉士
若山 慎吾(介護福祉士)

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介護福祉士として10年にわたる介護の現場経験を持ち、現在は特別養護老人ホームにてユニットリーダーを務める。また、実務に基づいた豊富な知識と経験を活かし、福祉ライターとしても多くのメディアで監修や執筆を手掛けている。専門家としての知見を分かりやすく伝えることを重視し、介護に関わる全ての人々が質の高い情報にアクセスできるよう、日々執筆活動に励んでいる。

介護時のどんな姿勢が腰痛の原因になる?

介護時のどんな姿勢が腰痛の原因になる?

編集部編集部

介護作業中に腰痛を引き起こすような姿勢にはどのようなものがありますか?

若山 慎吾さん若山さん

介護の仕事中や、自宅での介護の際に腰痛を引き起こす姿勢はいくつかあります。特に多いのが、前屈みの姿勢です。例えば、足を開かずに前屈みになると腰への負担が増えるため注意が必要です。また、片足だけに体重をかけるようなアンバランスな立ち方も、長時間続けると腰痛の原因となります。

編集部編集部

介護現場でよく見られる、誤った姿勢による腰痛の例を教えていただけますか?

若山 慎吾さん若山さん

介護現場でよく見られる誤った姿勢による腰痛の主な例としては、利用者を移乗させる際の姿勢が挙げられます。例えば、利用者をベッドから車椅子へ移動させる時、腰を曲げて腕だけで持ち上げようとすると、腰に非常に大きな負担をかけてしまいます。正しい方法は、膝を曲げて利用者との距離を近く保ち、体全体を使って持ち上げることです。このように、日頃から腰に負担をかけない正しい姿勢を心がけることが重要です。

編集部編集部

長時間の介助作業で避けるべき姿勢を教えてください。

若山 慎吾さん若山さん

長時間の介助作業で避けるべき姿勢としては、重心の不安定な姿勢があります。例えば、トイレのような狭い場所では両足を広げられないため、腰に負担がかかります。このように支持基底面(両足に囲まれた床の面積)を広くとれない場所での作業は、腰痛の原因となりやすいので注意しましょう。また、利用者を介助する際に、体をねじるような動作も腰に負担をかけます。利用者の移乗や着替えの際に体を大きくねじると、腰の筋肉に過度なストレスがかかり、腰痛を引き起こすリスクが高まります。常に腰への負担を意識し、できるだけ体を正対させるよう心がけることが大切です。

在宅介護で腰痛を予防するための対策法は?

在宅介護で腰痛を予防するための対策法は?

編集部編集部

在宅介護において腰痛を予防するために日常生活で意識すべきことはありますか?

若山 慎吾さん若山さん

在宅介護において腰痛を予防するためには、日常生活での姿勢の工夫が重要です。例えば、物を持ち上げる際は膝を曲げて腰を低くし、背筋をまっすぐに保つことが大切です。また、長時間同じ姿勢を続けることは避け、定期的に体勢を変えることも効果的です。加えて、家具の配置を工夫することも腰痛予防につながります。例えば、ベッドの周りには必要最低限の物だけ置いて、介助するスペースを確保しましょう。

編集部編集部

在宅介護での正しい介助方法を具体的に教えてください。

若山 慎吾さん若山さん

正しい介助方法を身につけることで、無理な力の入れ方を避け、腰への負担を軽減できます。例えば、オムツ交換やシーツ交換の際は、ベッドの高さを高くして、腰を曲げない姿勢にするとよいでしょう。また、ベッドから車椅子へ移乗させる際は、利用者と自分の体を近づけ、自分の足をしっかりと床につけて腰を安定させることが重要です。利用者の体重を支える際には、自分の体の中心軸を保ち、体全体でバランスを取るよう意識すると良いでしょう。

編集部編集部

在宅介護での腰痛予防において、ストレッチや運動は効果的でしょうか?

若山 慎吾さん若山さん

腰痛予防において、ストレッチや運動は効果的だといわれています。例えば、腰回りの筋肉を伸ばすストレッチや、腹筋・背筋を強化する運動は、腰痛予防に役立ちます。また、散歩などの軽い有酸素運動も、筋力の維持と血行促進に効果的であり、腰痛予防におすすめです。日々のルーティンにこれらの運動を取り入れることで、腰への負担を軽減できるでしょう。

介護で腰痛になってしまったら、悪化させないための方法は?

介護で腰痛になってしまったら、悪化させないための方法は?

編集部編集部

介護で腰痛を抱えてしまった場合、仕事を続ける上での具体的な負担軽減の方法は何ですか?

若山 慎吾さん若山さん

介護で腰痛を抱えている場合、仕事を続ける上で負担を軽減するためには、介助方法の見直しが重要です。例えば、膝を曲げて低い姿勢を取る、自分の腰ではなく太ももの筋力を活用するなど、ボディメカニクスの基本を意識することが大切です。介護の仕事は忙しく、時間に追われることが多いため、ついつい基本をおろそかにしがちですが、基本こそ最も重要です。さらに、仕事中は適度に休憩を取り、腰に負担がかかり過ぎないようにしましょう。

編集部編集部

腰痛を感じた際に、すぐにできる簡単な対処法を教えてください。

若山 慎吾さん若山さん

腰痛の度合いにもよりますが、軽度の腰痛なら、まずは手軽にできるストレッチをおすすめします。例えば、椅子に座った状態で足を組み、背筋を伸ばしたまま前傾姿勢になることで臀部の筋肉をストレッチできます。腰回りをゆっくりと伸ばすストレッチは、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する効果が期待できます。また、痛みが強い場合は、無理をせず安静にし、冷やすか温めるかで症状が楽になるか試してみると良いでしょう。ただし、これらは一時的な対処であり、痛みが続く場合は早めに医師の診断を受けることが重要です。

編集部編集部

介護職の腰痛に関して、医師に相談するタイミングはいつが適切ですか?

若山 慎吾さん若山さん

介護職の腰痛に関して医師に相談するタイミングは、痛みが日常生活に支障をきたすようになった時です。また、セルフケアを施しても痛みが数日間改善しない場合や、痛みが足に放散する場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。「腰痛は職業病だから」とあきらめず、医師による適切な診断とアドバイスを受けましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

若山 慎吾さん若山さん

介護の仕事は心身ともに大きな負担が伴いますが、特に腰痛は多くの介護者が抱える悩みの一つです。しかし、正しい姿勢や介助技術の実践、日々のストレッチや適度な運動によって、そのリスクを大きく減らすことが可能です。もし腰痛になってしまったら、早めの対処と医師への相談が重要です。また、一人で抱え込まず、職場や家族に協力を求めることも大切です。質の高い介護を提供するためには、介護者の健康は不可欠です。自分の体を大切にし、介護の仕事に取り組んでいきましょう。

編集部まとめ

介護業務における腰痛は、不適切な姿勢からくるものが大半です。特に前屈みや一方の足への偏った負荷、そして体をねじる動作は避けましょう。予防には正しい体の使い方を意識し、在宅では家具配置の工夫も大切です。軽度の腰痛時はストレッチが有効ですが、継続する痛みは医師の診断が必要です。腰痛を感じたら、基本に立ち返り、正しい姿勢と介助方法で早めのケアをしましょう。

この記事の監修介護福祉士