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“終わりが見えない”不妊治療… かかる費用・やめ時・向き合い方を医師が徹底解説

 公開日:2024/10/14

不妊治療は多くの夫婦やカップルにとって、心身ともに大きな負担となります。特に、いつ治療を終えるべきかという決断は難しいものです。今回は、「出口の見えないトンネル」とも呼ばれる不妊治療の“やめ時の考え方”について、「ソフィアレディスクリニック」の長谷川先生に解説していただきました。

長谷川 朋也

監修医師
長谷川 朋也(ソフィアレディスクリニック(長谷川LCグループ))

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東京医科大学を卒業後、クリニックや総合病院で経験を積む。2019年から2年間はアメリカ・ハーバード大学へ留学し、2022年 長谷川レディースクリニック副院長、ソフィアレディスクリニック(長谷川LCグループ)の院長として就任。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。

不妊治療は本当に最終手段?

不妊治療は本当に最終手段?

編集部編集部

実際のところ、不妊治療を受けている人は多いのですか?

長谷川 朋也先生長谷川先生

そうですね。晩婚化やライフスタイルの変化に伴い、不妊治療を受けている人は増加傾向にあります。日本でも、不妊治療に対する社会的な理解や経済的支援が徐々に整いつつあり、治療を受けることへの抵抗感も少なくなってきています。

編集部編集部

増えてきているのですね。

長谷川 朋也先生長谷川先生

そうですね、みなさんが思っているよりも多いと思います。「約4.4組に1組のカップルが何らかの不妊治療を経験している」というデータもあるほどです。いわゆる「タイミング法」だけでなく、体外受精や顕微授精などの高度生殖医療を受けるケースも増えており、不妊治療は男女ともに身近な選択肢となっています。

編集部編集部

不妊の原因は、女性だけでなく男性にもあるのでしょうか?

長谷川 朋也先生長谷川先生

WHOの調査によると「不妊の原因は男性側が48%、女性側が65%」と報告されており、男性が不妊治療を受けることは珍しいことではないとわかります。不妊は、けっして女性だけの問題ではないのです。

編集部編集部

不妊治療を始めるタイミングはいつ頃がいいのでしょうか?

長谷川 朋也先生長谷川先生

年齢が上がると妊娠の確率が下がることは、いくつものデータからもはっきりしています。そのため、不妊治療を「最後の手段」と考えずに、子どもを持つことを考え始めたら、まずは早めに専門クリニックで相談することをおすすめします。また、お互いの健康状態を確認するためにも、不妊治療は有用です。

不妊治療にかかる費用

不妊治療にかかる費用

編集部編集部

不妊治療には、保険適用されるのでしょうか?

長谷川 朋也先生長谷川先生

以前は保険適用外でしたが、2022年4月から一部の不妊治療が保険適用の対象となり、徐々に拡充されつつあります。ただし、年齢などによって、保険適用の範囲や回数が異なるため、事前に確認しておきましょう。

編集部編集部

不妊治療にかかる費用が気になります。

長谷川 朋也先生長谷川先生

不妊治療の費用は、治療の種類や回数によって異なります。保険適用の場合、人工授精は1回あたり1~3万円程度、体外受精や顕微授精は1回あたり10〜25万円かかると考えていいでしょう。自治体の助成金制度などを活用することで、費用の負担を軽減することができます。

編集部編集部

お金のことも考えないといけないのですね。

長谷川 朋也先生長谷川先生

そう思います。治療にどのくらいのお金がかけられるか、パートナーとよく話し合っておくことが大切です。予算は治療の内容を決めるうえで、大きな指針となります。ぜひ知ってほしいこととして、保険適用となっても治療費が高額になる場合に利用できる「高額療養費制度」があります。高額療養費制度とは、病院や薬局の窓口で支払った医療費が、1カ月あたりに定められた上限額よりも上回った場合に、超えた分の医療費が返金支給される制度です。

費用だけじゃない! 時間、気持ち…不妊治療とどう向き合う?

費用だけじゃない! 時間、気持ち…不妊治療とどう向き合う?

編集部編集部

不妊治療と仕事との両立は可能なのでしょうか?

長谷川 朋也先生長谷川先生

不妊治療と仕事の両立は可能ですが、治療内容によっては頻繁な通院が必要になる場合があります。可能であれば事前に職場と相談し、理解を得ることで、治療のストレスが少しでも軽減できると思います。

編集部編集部

不妊治療って、どのくらいの期間続くのでしょうか?

長谷川 朋也先生長谷川先生

不妊治療の期間は個人差がありますが、一般的には数カ月〜数年にわたることが多く、場合によっては10年以上かける人もいます。治療の進捗や結果を見ながら、パートナーや医師と相談して進めていくことが大切です。

編集部編集部

不妊治療の「やめ時」というのはありますか?

長谷川 朋也先生長谷川先生

それぞれの考え方や年齢、経済的状況などにもよると思うので、一概に「ここがやめ時」とは言えません。一例として「排卵誘発剤を使っても、卵胞が育ってこない」「自力での生理が来ない」といった場合には、年齢に関わらず体内に卵子が残されていない可能性があるので、やめ時と考えた方がいいかもしれません。

編集部編集部

ほかにもありますか?

長谷川 朋也先生長谷川先生

やめ時とは別の話になりますが、「卵子は取れて、受精卵にもなるけれど、胚盤胞にならない」というケースが続く場合は、クリニックを変えてみてもいいかもしれません。なぜなら、受精卵の培養環境が合っていない可能性があるからです。培養環境はそれぞれのクリニックによって異なるため、環境を変えると成功するケースもあります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

長谷川 朋也先生長谷川先生

不妊治療は、年齢で妊娠率が大きく変わります。そのため、先延ばしにせず「あれ?」と思ったらまずは相談だけでもしてみることをおすすめします。また、不妊治療をする際に「不妊治療以外で家族を持つ選択肢」も、頭の片隅に置いていただければと思います。実際に、養子縁組や里親制度で幸せに暮らしている家族がたくさんいます。「これらの制度を使いましょう」というわけではないのですが、「不妊治療が失敗したら、自分の人生は終わりだ」と思い込んでいると、メンタルを保つのが困難でしょう。「妊娠・出産すること」が唯一無二の選択肢にならないよう、養子縁組や里親制度も選択肢の1つとして知っておくだけでも、心が少し穏やかになるかと思います。

編集部まとめ

不妊治療の「やめ時」は、個人の価値観や状況による部分も大きいため、一概に決めることは難しいとのことでした。そのため、夫婦でよく話し合って、不妊治療の方針を決めておくことが大切です。また、穏やかな気持ちで不妊治療に臨むためにも、治療以外の選択肢を知っておくことも大事とのことでした。思うような妊活の結果が得られないのであれば、まずは専門クリニックに相談してみてはいかがでしょうか。

医院情報

ソフィアレディスクリニック

ソフィアレディスクリニック
所在地 〒252-0233 神奈川県相模原市中央区鹿沼台2丁目12-2 サンライズアートビル 2F
アクセス JR「淵野辺駅」 徒歩3分
JR「矢部駅」 徒歩12分
診療科目 婦人科、不妊外来

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