【闘病】全身性エリテマトーデスの診断まで17年 「やっぱり膠原病だったんだ」
話を聞いた辻磨帆さんは、「全身性エリテマトーデス(SLE)」と診断されるまで実に17年の時間を要しました。症状が現れたのは高校生の頃で、これまでに皮膚科、血液内科、膠原病内科、眼科、耳鼻科、整形外科、婦人科を受診したそうです。そんな辻さんに、全身性エリテマトーデスと診断されるまでに時間がかかった理由やこれまでに体験したことを語ってもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年5月取材。
体験者プロフィール:
辻 磨帆
1978年生まれ。家族構成は、夫と子ども。発症は高校生だが、「全身性エリテマトーデス」の診断が確定したのは2018年で、17年かかった。プレドニン50mgからスタートし、6年経過した現在、4mgと5mgを交互に飲んでいる。2カ月に一度の定期受診、服薬のみで寛解状態である。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
体の異変を感じていたが、自分のことは後回しにしていた
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
辻さん
高校生の頃から、しもやけ、手指の関節痛、ソーセージ様指(手指の腫れ)・痛み、慢性的な疲労感、喉が乾きやすいといった症状がありましたが、どれも我慢できてしまうものでした。家庭環境に問題があったこともあり、自分の体のことは後回しにしていたというのもあります。症状がひどい時に、一人で皮膚科を受診したこともありましたが、薬が処方されて診察は終わっていました。
編集部
整形外科や内科も受診されたそうですね。
辻さん
はい。突然、あらゆる関節が痛くて立ち上がれなくなり、整形外科を受診しましたが、スポーツによる関節の酷使と言われました。2010年に1カ月続く微熱と倦怠感により、風邪が治らないと主張し、内科クリニックも受診しました。内科の先生からは、「嫌な予感がするから今から採血をします。おそらく大学病院の血液内科を受診することになると思います。明日の朝には結果が出るから、私からの電話には必ず出てください。紹介状を書くから取りに来てもらって、そのまま受診になると思います」と言われました。
編集部
結果はいかがでしたか?
辻さん
翌日電話があり、白血球の異常を指摘されました。その先生が言っていた通り、そのまま大学病院の血液内科を受診し、骨髄検査を受けました。その結果、白血病ではないことを伝えられました。今までの症状から、「膠原病の可能性はありませんか?」と大学病院の先生に聞いたのですが、「なんの検査をしてほしいの?」と逆に質問されました。最終的に、胸部レントゲンを撮り、膠原病ではないと言われました。
編集部
なかなか診断がつかなかったのですね。
辻さん
そうですね。2012年に長時間日光を浴びて帰宅したときに、顔から足の指先まで全身に紅斑が出ました。顔が四角くなり、ボコボコ腫れてきたため総合病院の皮膚科を受診したところ、そのときは通院による点滴治療を2週間続けて終了となりました。子どもを希望していたため、のちに総合病院の内科を受診し、「私は膠原病だと思うので必要な採血をして下さい」と医師に伝えました。採血検査の数値だけで、膠原病と分かりました。内科の先生からは「紹介状書くからどの病院にする?」と言われ、自分で今の主治医を選び受診し、そこでシェーグレン症候群の診断がつきました。
17年の月日を経て、「全身性エリテマトーデス」と診断された
編集部
そこから全身性エリテマトーデスと診断がつくまでの経緯を教えてください。
辻さん
シェーグレン症候群の経過観察をしている中で、血小板減少が見られ、緊急入院することになったのです。そこで、全身性エリテマトーデスの診断(抗リン脂質抗体症候群、特発性血小板減少性紫斑病を合併)がつきました。診断がついたのが2018年でしたので、病院に通うようになって17年もかかってしまいました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
辻さん
シェーグレン症候群の診断時は、月一回の受診時に採血をして経過観察。服薬はなく、ドライアイの目薬処方のみでした。全身性エリテマトーデスは、プレドニン(ステロイド)50mgから治療開始し、最終目標は5mg以下で免疫調整剤を併用していくとのことでした。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
辻さん
あぁ、やっぱり膠原病だったんだ。もっと自分の体のことを丁寧に記録しておいたら、確定診断まで時間がかからなかっただろうなと思いました。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
辻さん
軽視しやすい倦怠感、指の関節の違和感に敏感になりました。これは「休みなさい」のサインだと。それからというもの、紫外線を避ける、予定を入れすぎない、疲れを感じたら休む、これらを徹底し、再燃を防いでいます。
編集部
全身性エリテマトーデスに向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
辻さん
寛解状態のときは、元気に暮らせることを知っています。この状態を保つには、大切な人たちとの時間が何よりの支えです。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
辻さん
自分の体の状態をきちんと知ること。不調のサインを感じ取れる精神状態を保つことを伝えたいです。
毎日の積み重ねが病気に負けない体を作る
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
辻さん
寛解状態9カ月目(取材時)にあり、2カ月に1度の定期受診と服薬のみで充実した毎日を送っています。バランスの良い食事と定期的な運動で、病気に負けない体作りを習慣化しています。起床時の手指の関節痛、血小板減少による出血過多の症状はありますが、疲れを感じたら休養することを徹底しているため、大きく体調を崩すことはありません。朝の薬は、プレドニン4mgと5mgを交互、プラケニル1錠と2錠を交互、アルファカルシドールカプセル0.5mg1錠、ポラプレジンクOD錠剤75mg ランソプラゾールOD錠15mg1錠 ユベラ50mg1錠、夜の薬は、ユベラ50mg1錠、クエン酸第一鉄Na50mg1錠 週1回ボナロンを服用しています。
編集部
あなたと同じ病気を抱えている人にアドバイスを一言お願いします。
辻さん
紫外線に気を付けること。疲労感を感じたら必ず休むこと。ストレスをためないことです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
辻さん
調べたら分かる程度の膠原病を疑う症状は、どの科の先生も把握してほしいです。14年前、大学病院の内科医に膠原病の可能性を確認するも、疑われませんでした。また、とても軽視されやすいのですが、倦怠感、関節の痛みが辛いということを理解してほしいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
辻さん
毎日の習慣の積み重ねが、病気に負けない体を作ります。バランス良い食事、運動、感情とストレスのコントロール、そして笑顔を大切にしてほしいです。
編集部まとめ
自分の体の状態をきちんと把握することで、受け身ではない受診が可能になります。現在はほとんどの人がスマートフォンを持っている時代ですので、気になることがあったらスマートフォンにメモをするなどして、記録しておくようにしましょう。そして、早めに病院を受診することも大切です。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。