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【闘病】「これは遺伝なの?」 妹と同じ難病・全身性エリテマトーデスになった女性

 更新日:2024/08/20
~実録・闘病体験記~ 「これは遺伝なの?」 妹と同じ難病・全身性エリテマトーデスになった女性

全身性エリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)」とは、全身のさまざまな臓器に炎症や障害を起こす自己免疫疾患です。20~40歳台の女性に発症しやすく、症状が関節、皮膚、腎臓、神経などを中心に現れます。日本全国に約6~10万人の罹患者がいると考えられていますが、発症の原因や治療法などは、いまだ不明なことが多い疾患です。SLEを経験された福井さんに、難病だからこそわかること、そして周囲の反応に苦労することなどについて、話を聞かせてもらいました。

福井利恵さん

体験者プロフィール
福井 利恵

プロフィールをもっと見る

千葉県在住、1974年生まれ。現在は結婚し1児の母。診断時の職業は獣医師・会社経営。2020年にSLEを発症し、同年12月に検査と治療のため約4ヶ月間入院。現在はステロイド、免疫抑制剤、抗凝固薬、抗生物質を服用している。食事制限と運動制限がある中、日々、自分の体と相談をしながら暮らしている。著書『ペットのための手当て療法』(BABジャパン)

今村 英利

記事監修医師
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

全身性エリテマトーデスの診断確定まで

全身性エリテマトーデスの診断確定まで

編集部編集部

最初に気づいた症状、全身性エリテマトーデス(SLE)が判明した経緯について教えてください。

福井利恵さん福井さん

もともと子宮筋腫の持病があり、貧血の治療をしていました。その後、2020年4~6月にかけて、不正出血が月経と関係なく起きたり、脱毛が始まったりと体調を崩しました。そして、貧血を改善するため、9月に子宮全摘出手術を受けました。

編集部編集部

そこから、どのようにSLEが発覚したのでしょうか?

福井利恵さん福井さん

手術直後、頭痛や神経痛がひどかったため、処方された薬を飲んだのですが、異常な発汗と関節痛が続きました。また、体力は回復せず、短期間で急激に痩せていったのです。20年前からSLEで闘病中の妹に相談したら、アレルギー科を奨められ、検査を受けたところ、結果はSLEだったという経緯です。検査と治療のため、合計約4ヶ月間入院しました。

編集部編集部

妹さんもSLEだったのですね。

福井利恵さん福井さん

はい。昔、妹がSLEで悩んでいた時、あまりにもネガティブなことばかり相談してくるので、聞きたくないと思ったことがありました。そのときはわかりませんでしたが、今では私自身がだいぶ無神経だったと思います。両方の立場を経験して、そう実感しているところです。

編集部編集部

SLEが判明した時、どのような心境でしたか?

福井利恵さん福井さん

実感が持てませんでした。病気の遺伝性については、そういう議論もされているようですが、実際に私の家系の健康について考えると、ありえる話だと思います。でも、発病当時はコロナ対策の緊急事態宣言が始まったり、体にむちを打って働いていた時期で、ストレスが極度にあり、遺伝や環境要因が重なって体の免疫力が耐えられなくなったのだと思います。

ガイドラインに沿うだけが治療方法なのか

ガイドラインに沿うだけが治療方法なのか

編集部編集部

SLEと診断が出た後、どのように治療をおこなうと説明がありましたか?

福井利恵さん福井さん

ステロイドを投与、免疫抑制剤の使用、食事制限などをおこなうとの話がありました。私の職業が獣医師なので、血液検査や治療方法について多少知識があり、「どう治すのか」という自分なりの考えもありました。しかし、担当医の考え方とは異なっていて、担当医曰くSLEの治療ガイドラインの通りに進めるとのことでした。

編集部編集部

そうだったのですね。治療の副作用もかなりキツいと聞きました。

福井利恵さん福井さん

はい。ステロイドの副作用はとくに。ムーンフェイスという顔が真ん丸になる症状が出てしまい、自分の外見が非常に受け入れがたかったです。体が浮腫んで、足が思うように上がらず、プールの中を歩いているようでした。胸に水が溜まって、胸が苦しかったですし、感覚がおかしい日が続きました。このときは、心底「薬は毒」だと感じました。また、自分の体のことなのに、病院の先生へ気を遣って薬を変えられなかったり、自由にできなかったりする人が多いように思います。もし副作用が出たら困るのは、医師ではなく患者自身です。

編集部編集部

闘病において自身で工夫されていることはありますか?

福井利恵さん福井さん

自然治療を専門とする医師のセカンドオピニオンを聞いたり、統合医療的観点から治療の効果が出るよう、自分なりに工夫しています。最初は治療に対する不安感を抱いていましたので、ほかの医師の意見を聞くのも大切だと思いました。もっとセカンドオピニオンを聞きやすい医療環境になってほしいと願います。

編集部編集部

治療開始後、生活にはどのような変化がありましたか?

福井利恵さん福井さん

「ループス腎炎IV型」と診断され、予後不良といわれました。腎臓病食を食べるのが大変で、生活習慣の確立には苦労しましたね。いまは家事ができずに支援を受けており、このように社会が支援してくれることで救われています。

編集部編集部

SLEが仕事や生活に影響したことなどはありませんでしたか?

福井利恵さん福井さん

SLEとステロイド治療により、一般の人と比べて何倍も感染症などに罹患(りかん)しやすくなったため、「今までのように外で仕事はしないように」と医師から言われました。そのため、オンラインでの仕事がメインになりました。日常生活も困難だと感じるところは多かったです。今は、ようやく減薬が進み、少しずつ活動を始めています。以前よりも自分の体を休ませるようになりました。自分を大切にすることを、病気が教えてくれたのだと感謝しています。

患者側の気持ちはとてもセンシティブ

患者側の気持ちはとてもセンシティブ

編集部編集部

治療中の心の支えとなったものは、何でしたか?

福井利恵さん福井さん

医療スタッフの優しい声かけや、一緒に入院していた仲間との友情です。入院中、「ゆっくり休みなさい」と言われているような感じがしました。また、家族や友人がお見舞いに来て、とても励みになりました。

編集部編集部

やはり、周りの人々にも心配されましたか?

福井利恵さん福井さん

はい。ただ、周囲は「大変な病気だ」と心配してくれるのですが、私自身が知識もほとんどないまま急に難病と宣告されたので、大変さの実感が湧かない部分がありました。加えて、入院しても体が痛いこと以外には、自覚症状もなかったので、なおさら現実味がなかったのです。苦労したのは、SLEに理解を示してくれない人や、付き合いをやめる人がいたことです。逆に、私にとって本当に大切な人が誰なのかもよくわかりました。

編集部編集部

もし、病気になる前の自分に声をかけるとしたら?

福井利恵さん福井さん

もっと早く検査して、治療が始められたらよかったと思います。また、子宮筋腫によるものだとしてSLEを疑わなかった当時の医師に「もっとしっかり調べてほしい」と声をかけたいですね。あとは、自分に「もっと自分を大切にして」と言いたい。今だからわかることです。

編集部編集部

SLEと闘っている仲間に伝えたいことはありますか?

福井利恵さん福井さん

毎日を楽しく過ごすことで免疫が上がると思うので、できるだけ笑っていてほしいですね。物事を前向きに考えることで、こんなに体調に変化があると思いませんでした。病院では、毎朝にっこり笑った写真をSNSにアップして、自分の心を持ち上げていました。体と心に良い言葉だけを使い、良い習慣を身につけ、食生活をし、心身が元気になる環境に身をおく。そういうことを毎日実践し続けていると、病気は軽くなる気がします。私は、心がめげそうな状態から脱するために、ステロイドの副作用のムーンフェイスをどうにかできないかと思い、「ミセスコンテスト」に出ることを決意しました。そうしたら、思ったよりも早く薬を減らすことができ、外見も元通りになりました。元気なとき、調子の悪い時はありますが、どんな自分も自分と認めることができるようになりました。今は元気に暮らしています。この度、念願の書籍を出版することもできました。以前よりも充実した日々を送っていると思います。

編集部編集部

医療関係者に伝えたいことはありますか?

福井利恵さん福井さん

お医者さんによっては、治療ガイドラインに縛られすぎていると感じることがありました。難病は薬だけでは治りません。病気への不安を抱えている患者の、人生を背負っていることを自覚して臨み、常に視野を広げて医療に目を向けて、勉強してもらいたいです。

編集部編集部

医師側と患者側との双方向のコミュニケーションが重要だと?

福井利恵さん福井さん

そうですね。患者さんとのコミュニケーションを密に取ってほしいと思っています。コミュニケーションエラーによって、患者さんの症状が悪化することは十分に考えられます。また、患者側も自分と合う医師と出会うことはとても大事なことです。合わなければ、セカンドオピニオンも検討していいと思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

福井利恵さん福井さん

急に難病と診断され、しかも一生付き合わなければならず、いつ再燃するかわからない。こんな病気と付き合いながら「いかによく生きるか」を模索する日々です。だからこそ1日1日を、有意義だと感じられています。私は妹と同じ病気で、名前と症状は一通り知っていましたが、詳しい症状はあまり理解していませんでした。闘病者の気持ちは、その病気にならないとわからない部分もありますが、ぜひこれを機会に少しでも多くの人に知ってほしいです。

編集部まとめ

難病と聞いた周囲の反応から、「自分にとって大切な人かどうかがわかった」というのはとても印象的でした。また、福井さんは獣医師として医学の知識をお持ちですので、より病気に対して深く感じるところもあり、悩まれたようです。医師も闘病者の気持ちにできるだけ寄り添った対応が必要で、治療法もガイドラインに縛られるのではなく、柔軟性を持った対応が必要だと感じました。

この記事の監修医師