「超加工食品」にたばこ並みの依存性が? どのような健康被害があるか管理栄養士が解説
「料理をする時間がない」「お腹が満たされれば何でもいい」と、すぐにインスタント食品やポテトチップス、菓子パンなどに手を伸ばし、食べていませんか? これらの食品は「超加工食品」と呼ばれ、食べすぎると健康被害や依存性があると研究で報告されています。今回は、超加工食品と加工食品の違い、超加工食品の健康被害と、超加工食品を避ける方法について、管理栄養士の高木さんに解説していただきました。
監修管理栄養士:
高木 美奈子(管理栄養士)
超加工食品を摂取すると体にどんな健康被害があるの?
編集部
菓子パンなどの超加工は体に悪いと聞いたことがあります。実際、どうなのでしょうか?
高木さん
- 死亡率が高くなる
- 認知機能が低下する
- 糖尿病やがんの発症のリスクが高くなる
- 中毒性があり太りやすくなる
上記は、あくまで超加工食品と健康被害との関連性を示す研究結果にすぎませんが、超加工食品が体によくないのは間違いなさそうです。
■参照:
PubMed「フランスの中年成人における超加工食品の摂取と死亡リスクの関連性」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30742202/
JAMA ネットワーク「超加工食品の摂取と認知機能低下の関連性」
https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/article-abstract/2799140
eClinicalMedicine「超加工食品の摂取、がんリスク、がん死亡率:英国バイオバンクにおける大規模な前向き分析」
https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(23)00017-2/fulltext
PubMed「超加工食品の食事は過剰なカロリー摂取と体重増加を引き起こす:入院患者における自由摂取食品のランダム化比較試験」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31105044/
編集部
なぜ超加工食品を摂取すると、認知機能が低下するのでしょうか?
高木さん
毎日超加工食品を食べると、実行機能を司る脳の働きが悪くなることが報告されています。詳しい原因はまだ分かっていません。中年成人1万人以上を対象とした研究によると、1日の食事のうち超加工食品が摂取カロリーの20%以上を占める人は、10年後に認知機能の低下リスクが高まることがわかっています。また、研究によるとアメリカ人の摂取するカロリーの約60%が超加工食品から来ており、これが早期死亡や糖尿病、がんのリスクと関連していることが分かっています。毎日、超加工食品を摂取すると、認知機能が低下する可能性が高いということです。
編集部
超加工食品は、高カロリーなイメージがあります。それで太りやすくなったり、糖尿病やがんになるリスクが高まったりするのでしょうか?
高木さん
超加工食品は、栄養の欠点だけでなく、健康に害を及ぼす調理方法が使われていると言われています。超加工食品には多くのカロリーや脂質、糖分、塩分が含まれていますが、タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しています。これにより、体の栄養バランスが崩れ、健康を守ることが難しくなり、結果として糖尿病や心臓病のリスクが高くなるのです。
編集部
がんのリスクが高まる原因についても教えてください。
高木さん
加工食品の調理過程で発がん性物質であるアクリルアミドが生成されたり、多くの食品添加物ががんのリスクを高めたりするからです。超加工食品は手軽で美味しいため、満腹感が得にくく食べ過ぎが起こりやすいのです。その結果、依存性に似た状態を引き起こすことも指摘されています。つまり、毎日超加工食品を摂取すると、偏った栄養面や調理方法から健康被害のリスクが高まるのです。
そもそも超加工食品とはなに? 加工食品との違いは?
編集部
そもそも「超加工食品」と「加工食品」の違いは何でしょうか?
高木さん
超加工食品とは、5つ以上の食材が使用され、多くの食品添加物が加えられ、工業的に製造加工された食品です。一方で加工食品は、1つの食材から保存を高めるために調味料を加えて作られた食品と、2つ以上の食材から自宅で簡単に作られた食品を指します。
編集部
超加工食品や加工食品はどのように分類されているのでしょうか?
高木さん
2009年にブラジルのサンパウロ大学で、食品を分類するための「NOVA分類」やいくつかの分類方法があります。また、東京大学大学院医学系研究科栄養疫学・行動栄養学講座では、米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究者らが開発した「食品分類の枠組み」を用いて、分類されています。
編集部
実際にはどのように食品を分けているのでしょうか?
高木さん
- 未加工食品・最小限の加工:卵、玄米、はちみつ、ハーブ、香辛料、野菜、果物など
- 基本的な加工:濃縮還元でない無糖の果物ジュース、卵白、全粒粉、油、無塩バターなど
- 中程度の加工:加糖の果物ジュースや野菜ジュース、加糖ヨーグルトなど
- 高度な加工(超加工食品):ゼリー、マーガリン、ポテトチップス、ソーセージ、ハム、菓子パン、アルコール飲料、清涼飲料など
参考:東京大学「日本人成人における超加工食品の摂取量と食事の質との関連」
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400214590.pdf
超加工食品を避けるための具体的な方法を解説
編集部
超加工食品を避けるための具体的な方法はありますか?
高木さん
- 超加工食品であるか区別できる能力を身につける
- 裏面の栄養成分表示を確認し、原材料が丸ごと使用または調理されているか確認する
- まとめて多めに作っておく
- よく使う調味料は手作りする
一度、キッチンの周りを整理し、超加工食品が保管されていないか確認してみましょう。
編集部
超加工食品であるかを簡単に区別する方法はありますか?
高木さん
食品そのものを見て、素材のままか、加工されて作られているか、見分けることです。「食品分類の枠組み」で解説したとおり、未加工食品か超加工食品かは見た目で判断可能です。また、食品を購入する際は、裏面の栄養表示を確認しましょう。乳化剤や果糖ぶどう糖液糖などの食品添加物が記載されている食品は、超加工食品です。
編集部
超加工食品の摂取を避けるためには自炊が有効とわかりましたが、毎日料理できない場合はどうすればいいでしょうか?
高木さん
どうしても忙しくて毎日料理ができない場合は、1日でまとめて多く作っておきましょう。また、メニューを考えるとき、主食・主菜・副菜と定食形式に揃いやすくなり、栄養バランスが整います。超加工食品は「単品食べ」になってしまい、糖質や脂質が偏り、栄養バランスが崩れます。手作りの調味料は、健康な体にとって効果的です。市販で売られているマヨネーズやソース、ドレッシングなどの加工された食品から避けられ、食費も節約できます。
編集部まとめ
超加工食品はとても便利ですぐに食べられますが、食べすぎると健康被害を起こしてしまいます。疲れてしまって、料理する時間も取れなかったりしますよね。スーパーやコンビニで買い物する際は、栄養成分表示を確認してみてください。なるべく多めに料理する時間と量を作ることで、健康的な生活が送れるでしょう。