「納豆を食べ過ぎると痛風になる」ってウソ? ホント? 痛風予防のポイントを管理栄養士が解説
「納豆が痛風の原因になる」と聞いたことはありませんか? 納豆といえば健康にいい食品の代表格ですが、健康を害することもあるのでしょうか。また、痛風にならないためには普段からどのような点に気を付けて生活するべきなのでしょうか。今回は、そんな痛風の予防について管理栄養士の中村さんに解説していただきました。
監修管理栄養士:
中村 友也(管理栄養士)
目次 -INDEX-
「納豆が痛風の原因になる」は正しいのか
編集部
そもそも痛風とは、どのような病気なのですか?
中村さん
痛風とは、血液中に含まれる尿酸という物質が関節で結晶化することで痛みを引き起こす病気です。症状は急に表れることが多く、ひどいときは2~3日歩けないほどの痛みが出ることもあります。また、本来余分な尿酸は尿から排泄されるようになっていますが、尿酸の原料であるプリン体の摂りすぎやアルコールによる排泄の低下などが原因となり、体内に蓄積することで痛風を発症します。ちなみに、痛風を発症する人の9割が男性と言われています。
編集部
では、プリン体は体に悪い成分なのですか?
中村さん
実はそうではありません。プリン体は細胞の核に含まれている核酸と呼ばれる成分の一種で、細胞の代謝や増殖などに必要なものです。また、体内でエネルギーを作る材料にもなっているため、食べ物から摂取するだけではなく体内でも合成されています。そのため、プリン体そのものが悪者というわけではなく尿酸が体に蓄積することが問題といえます。
編集部
では、噂になるぐらいなので納豆にはプリン体が多く含まれているのですか?
中村さん
実は、納豆はプリン体が「少ない」食品なのです。なので、「納豆が痛風の原因になる」というのはあまり正しくありません。ちなみに、納豆のプリン体は1パック(50g)あたり約57mg含んでおり、この量は、「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」で示されている基準でいうと「少ない」部類に入ります。
編集部
なぜ納豆が痛風の原因になるという噂が浸透しているのでしょうか?
中村さん
納豆を1日に数回食べるような場合はプリン体の過剰摂取になる可能性があるため、このような噂が流れているのだと思います。1パックあたりでみるとプリン体量が少ない納豆ですが、1日に3パック食べればそれだけで約170mgのプリン体を摂取することになります。詳しくは後述しますが、この生活を続けていると痛風が発症するリスクの高い量に到達してしまうため、注意が必要です。
プリン体が多く含まれている食品を紹介 1日の摂取量目安はどれくらいなのか
編集部
プリン体の1日の摂取量はどのくらいですか?
中村さん
「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」では、1日400mgまでと示されています。毎日厳格にこの基準値以下に抑える必要はありませんが、尿酸値が高いと言われている方や予防を考えている方はこの数値を意識してみてください。特に男性は発症リスクが高いので注意が必要です。
編集部
プリン体が多く含まれている食品を教えてください。
中村さん
プリン体は動物の内臓などに多く含まれており、レバーや白子、えび、イワシ、カツオなどがその代表です。これらの食品は100gあたりに約200~300mgのプリン体が含まれており、基準値の400mgにすぐに到達してしまうため、摂取量と頻度に注意しましょう。
編集部
プリン体を摂りすぎるとすぐ痛風になるのですか?
中村さん
尿酸値が正常な場合は、プリン体の多い食事を短期間続けただけでは痛風を発症する可能性は低いですね。しかし、習慣的にプリン体の多い食事を続けると、痛風の発症リスクが高まるため気を付けましょう。特に外食では食べる量自体が増えたり、プリン体を多く含む食品を食べる頻度が増えたりしてしまいます。外食に行った際は、普段より意識するようにしましょう。
痛風を予防・改善する食事のポイントは? アルコールは控えた方がいい?
編集部
どんな食事を心がければ痛風を予防できるのですか?
中村さん
まずは、プリン体を多く含むものの摂取に気を付けましょう。プリン体をゼロにすることはできませんが、プリン体を多く含む食品の摂取量や摂取頻度を意識するだけでも効果があります。
編集部
痛風というと禁酒をイメージするのですが、やはりアルコールは控えたほうがいいのですか?
中村さん
アルコールは尿酸の排泄を抑制するため、適正飲酒に努めましょう。医師の指示がない限り禁酒する必要はありませんが、アルコールは痛風の危険因子となります。特に、ビールはアルコールと同時にプリン体も含むため要注意です。それ以外の酒類も、アルコールそのものが尿酸の排泄を抑制するため、飲みすぎには注意が必要です。また、習慣的な飲酒は痛風のリスクを上げるため、週に2度は休肝日を作りましょう。
編集部
プリン体が少ないものなら気にせず食べても大丈夫ですか?
中村さん
基本的に制限するような食品はありませんが、適量摂取を意識しましょう。プリン体が少ない食品であっても、食べる量が増えれば自ずとプリン体の量も増加します。また、肥満やほかの生活習慣病によって痛風のリスクが上がることもありますので、適量摂取は常に気を付けておきたいですね。
編集部
ほかに気を付けることはありますか?
中村さん
水分をしっかりとることも意識しましょう。尿酸はそのほとんどが尿からしか排泄されません。そのため、水分摂取量が少なく尿量が減ると尿酸の排泄量も低下します。また、体内の水分が少なくなると血液中の尿酸濃度が上がり痛風発作を起こしやすくなります。一般的に、1日に自身の体重×35ml程度の水分摂取が望ましいといわれていますので意識してみましょう。また、特にお酒を飲んだ時はアルコールの分解で大量に水分を使い脱水になりやすいので意識的に水分をとるようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中村さん
痛風は日ごろの食生活が大きな原因となる病気ですので、普段から気を付けていれば十分予防できます。今回紹介した情報や食事のポイントを意識しながら、生活習慣を改善し痛風の予防・改善に努めてもらえると嬉しいです。
編集部まとめ
今回は納豆と痛風の関連について伺いました。納豆1パックあたりでみるとプリン体が少なく痛風に直結するわけではありませんが、1日に数パック食べる方は目標値に到達しやすくなってしまうため気を付けたいですね。また、お酒を飲みすぎると痛風になりやすかったり食べる量が多いとリスクが上がったりということもあるそうなので、何事も適量を意識しておくことが重要ですね。