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「血糖値をコントロールする方法」とは? 時間栄養学からみる健康維持について管理栄養士が解説

 公開日:2024/05/30
「血糖値をコントロールする方法」とは?時間栄養学からみる健康維持について管理栄養士が解説

血糖値は健康維持や体重管理のために重要で、日々の生活において血糖値をコントロールしていくことが必要です。血糖値をコントロールするためには、日々の生活において、「何を」食べるかだけでなく「いつどのようなタイミング」で食べるかが重要なようです。食べるタイミングによって血糖値の変化は大きく異なることがわかってきており、これまでは良くないと思われがちだった間食にも実はメリットがあると専門家は言います。今回は、食事の工夫や間食の効果的な取り方について、時間栄養学の専門家である田原先生・市川先生に伺いました。

田原 優さん

著者
田原 優(広島大学大学院 医系科学研究科公衆衛生学 准教授)

プロフィールをもっと見る
早稲田大学にて博士(理学)取得。その後、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)留学などを経て現職。「食べるタイミング」を考える時間栄養学をメインに、睡眠や運動など日常行動まで取り入れた時間健康科学研究を進めている。著書に「Q&Aですらすらわかる体内時計応用法(杏林書院,編著,2022)」「体を整えるすごい時間割(大和書房,2019)」などがある。
市川 知美さん

共著者
市川 知美(広島女学院大学人間生活学部管理栄養学科 教授)

プロフィールをもっと見る
管理栄養士。大学卒業後、病院の管理栄養士として勤務。県立広島女子大学(現・県立広島大学)大学院 修士(生活科学)取得。広島女学院大学 専任講師・准教授を経て2020年より現職。広島大学大学院 博士(口腔健康科学)取得。疾病予防の観点から、生活リズムおよび生活習慣、食事摂取に関する研究をおこなっている。

血糖値と健康の関係

血糖値と健康の関係

編集部編集部

はじめに、血糖値について教えてください。

田原 優先生田原先生

血糖値とは、血液中のグルコース濃度のことを示します。糖尿病の診断などに利用される生体指標の一つで、通常、空腹時の血糖値は70〜100mg/dLです。食事に含まれる炭水化物によって、食後は血糖値が上昇しますが、2時間もすると元の値に戻ります。これは、血中の糖が、肝臓や筋肉などに取り込まれグリコーゲンに変換されるからです。

編集部編集部

血糖値は健康とどのような関係があるのでしょう?

田原 優先生田原先生

たとえば、糖尿病患者の場合、血糖値の調節がうまくできません。食後に膵臓から分泌されるインスリンは、肝臓や筋肉に作用して血糖値を調節しますが、糖尿病患者ではインスリンの分泌量や機能が低下し、食後高血糖をもたらします。この状態が長く続くと、血管が傷つき動脈硬化の原因になります。

編集部編集部

糖質を制限することが健康につながるのですか?

市川 知美先生市川先生

糖質は、脳や身体の働きを維持するために必要です。しかし、必要以上に摂りすぎると肥満や糖尿病、動脈硬化などの原因につながります。そのため、糖質を制限することが健康につながるのではなく、適切な量を摂取することが大切となります。

血糖値の変動を小さくするためには?

血糖値の変動を小さくするためには?

編集部編集部

血糖値は朝・昼・夜、いつが高くなりやすいのでしょう? 理由についても教えてください。

田原 優先生田原先生

食後の血糖値は、朝食よりも夕食後に高くなりやすいといわれています。これは腸管における糖の吸収やインスリンの分泌に、日内リズムがあるからです(※1)。この日内リズムは、体内時計によって調節されていることも分かっています。ちなみに、体内時計が乱れたマウスでは、インスリンの分泌が低く食後高血糖がより起こりやすくなります。

編集部編集部

夕食時の血糖値を上げすぎないためにはどうしたら良いですか?

田原 優先生田原先生

一つは、「食べる順番」です。サラダなどの副菜から食べ始め、主食や主菜をその後に食べるだけでも、食後高血糖を抑制することができます。また、糖の吸収を抑えるような機能性表示食品やサプリメントを、食事前または食事中に摂取することで、食後高血糖を抑えることができます。

編集部編集部

血糖値の変化を小さくするために、朝食・昼食のアドバイスはありますか?

田原 優先生田原先生

2食目の食事は、食後血糖値が上昇しづらいことが知られています。これを「セカンドミール効果」と呼びます。朝食を食べることで昼食後の、昼食を食べることで夕食後の血糖上昇を小さく抑える効果が期待できます。なので、朝食や昼食を食べないよりは、分食して食べる方が食後の過度な血糖上昇の抑制に適しているのです。

間食をとることは悪いことではない?

間食をとることは悪いことではない?

編集部編集部

間食をとることのメリットを教えてください。

田原 優先生田原先生

間食を摂ることで、夕食時にセカンドミール効果が期待できます。これまで間食はあまり良くないイメージがありましたが、時間栄養学的には間食をむしろ積極的に摂ることで、夕食後の血糖上昇を抑制することができます。

編集部編集部

間食では、何を食べるのがオススメですか?

市川 知美先生市川先生

オススメは炭水化物水溶性食物繊維ですね。例えば、バナナなどの果物や雑穀米のおにぎり、食物繊維の豊富なビスケットなどがおすすめです。普通のクッキーに食物繊維が豊富な飲料を組み合わせるのもよいですね。

編集部編集部

そのほか、血糖コントロールを意識した食事についてアドバイスや注意点はありますか?

市川 知美先生市川先生

夕食の時間が遅くなると、同じ夕食内容でも食後に血糖値が上がりやすくなります。仕事で帰りが遅く、夕食の時間も遅くなる場合は、積極的に間食を摂取するといいでしょう。間食を使い夕食を分食することも効果的です。

参考文献

※1. Time of day difference in postprandial glucose and insulin responses: Systematic review and meta-analysis of acute postprandial studies
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/07420528.2019.1683856

編集部まとめ

健康な食生活を送る上で、血糖値のコントロールは非常に重要なポイントですが、その理解や実践には多くの方がハードルを感じるかもしれません。今までダメだと思われていた間食も適切なタイミングにとることで、メリットが得られることを教えていただきました。今回の記事が、読者の皆様にとって血糖値管理について理解を深め、健康的な食生活について考えるきっかけとなりましたら幸いです。

この記事の監修管理栄養士