その頭痛・めまいなどの不調、“自律神経の乱れ”が原因かも!? 「自律神経失調症」の症状・対処法を医師が解説
動悸や発汗、めまい、頭痛など様々な身体症状を引き起こす「自律神経失調症」。検査をしても異常が見つからないことが多いため、「気のせい」で片付けられがちな疾患ですが、きちんと診断して治療をすることで症状の改善を目指すことができます。自律神経失調症が疑われる場合には何科を受診すればいいのか、どんな検査がおこなわれるのかなどについて、「せたがや内科・神経内科クリニック」の久手堅先生に教えていただきました。
監修医師:
久手堅 司(せたがや内科・神経内科クリニック)
自律神経失調症とは?
編集部
自律神経失調症とは、どんな疾患ですか?
久手堅先生
例えば、頭痛やめまい、動悸などの症状が起きているのに病院で検査をしても全く異常が見つからないことがあります。俗にいう「不定愁訴」の状態であり、これらを総称して自律神経失調症と呼んでいます。
編集部
自律神経失調症には、様々な症状があるのですね。
久手堅先生
はい。自律神経失調症は自律神経のバランスが乱れることで起こり、全身倦怠感、微熱、胃腸障害(過敏性腸症候群など)、動悸、胸部圧迫感、発汗異常(多汗症)など様々な症状を引き起こします。
編集部
自律神経について詳しく教えてください。
久手堅先生
そもそも、自律神経は自分の意志に関係なく、周りの状況に対して自動的に反応する神経です。呼吸、体温、血管や内臓の動きをコントロールするなど、人間の生命活動を維持しています。
編集部
そのバランスが乱れるとはどういうことですか?
久手堅先生
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があります。交感神経は、緊張しているときや、運動したときに優位に働きます。具体的には血圧を上げたり、脈を速くしたり、呼吸を速くしたり、胃腸の動きを鈍らせたりします。その一方で、副交感神経は、リラックスしているときや寝ているときに優位に働きます。血圧を下げたり、脈を遅くしたり、呼吸を遅くしたり、胃腸の動きを活発にしたりします。この2つの神経はシーソーのようにバランスをとっているのですが、なんらかの原因によりこのバランスが崩れてしまうことがあります。それにより、様々な症状が出現することを自律神経失調症と呼んでいるのです。
自律神経失調症が疑われるときは?
編集部
自律神経失調症は、どのようにして診断されるのですか?
久手堅先生
重要なのは、ほかの疾患との鑑別です。例えば、動悸が続く場合、心電図や血液検査などをおこなっても異常が見つからず、ほかの疾患の可能性が除外されたときに、初めて自律神経失調症と診断されます。
編集部
検査をしても異常が見つからないと、本人としては不安ですよね。
久手堅先生
そうですね。症状が1回で終わればいいのですが、何度も症状が出現すると、本人としては非常に苦しい状態が続くことになりますし、病院へ行っても「異常はありません」「ストレスじゃないですか」と言われることもあります。そのため、原因を探すためにいくつもの病院をまわる人も非常に多いのです。
編集部
しかし「気のせい」ではなくて、実際は自律神経が乱れている症状ということなのですね。
久手堅先生
はい。自律神経が乱れる原因として様々な要素が考えられ、なかでもストレスや生活習慣の乱れは自律神経を乱す大きな原因とされています。例えば、大きなストレスを抱えると食欲がなくなったり、眠れなくなったりします。こうした症状も自律神経失調症の一種であり、この状態が続くと、うつ症状、パニック障害、慢性疲労症候群などとなっていくことが少なくありません。
編集部
自律神経失調症かもしれないと思ったら、何科を受診したらいいのでしょうか?
久手堅先生
腹痛、胃痛、頭痛など、体に具体的な症状が出現している場合には、該当する標榜科を受診しましょう。頭痛なら脳神経内科や脳神経外科、めまいなら耳鼻科、倦怠感なら内科、腹痛なら内科か消化器科を受診してください。
編集部
それでも原因が見つからない場合は?
久手堅先生
体の動きや感覚、記憶など脳や脊髄、神経などの症状も診てくれる神経内科の受診をおすすめします。また、メンタル面の不調が目立つなら、心療内科や精神科を受診してもいいと思います。
自律神経失調症の治療法
編集部
自律神経失調症は、どのように治すのでしょうか?
久手堅先生
まずは、その人にどのような不調が表れているのかを詳しく問診で確認します。自律神経失調症の場合、複数の症状が出現していることも多いので、例えば「いつ頃から、どのような症状が出現したのか」など、一人ひとりに合わせて病態を詳しく確認します。そのうえで、該当した症状に対処します。
編集部
症状にはどのようにして対処するのですか?
久手堅先生
頭痛なら鎮痛薬、めまいなら抗めまい薬、不眠がひどいなら睡眠導入剤や漢方薬を使うといったように、その人に合わせた治療法を提案します。それと並行して、カウンセリングなどをおこなうこともあります。
編集部
自律神経失調症は治りにくいと聞きます。なぜ、治りにくいとされているのですか?
久手堅先生
自律神経失調症の発症には生活環境が大きく関係しており、それらの改善が必要だからです。しかし実際には、症状がゼロにはならないかもしれないけれど、6~7割治れば十分ということもあります。自律神経失調症は完治を目指すというよりも、上手に折り合いをつけることが大切です。「その人の症状がいつ、どのようにして始まったか」を詳しく確認することが、症状の原因や改善策を見つけるのに役立ちます。
編集部
原因を見つけることが大切なのですね。
久手堅先生
臨床の経験から言うと、自律神経失調症の原因で多いのは、首こりやストレートネックなどと考えられます。なぜかというと、人間は二足歩行であり、首を安定させにくいためです。自律神経の中枢は脳幹や脊髄にあり、首は自律神経の大事な通り道になっています。そのため、首が歪んでいたり、凝り固まったりしていると自律神経が正しく伝わらず、異常を起こしやすくなるのです。
編集部
その場合、どうやって治療するのですか?
久手堅先生
当院では、「自律神経失調症の原因が首にある」と診断した患者さんに対しては、マッサージやストレッチ、姿勢矯正、内服、生活指導などをおこないます。こうした治療を続けることで症状の改善や予防が期待できるので、簡単にできることからはじめてみましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
久手堅先生
まず自分が悩んでいる症状は、本当に自律神経失調症なのか、隠れた病気がないかを確認することが必要です。自分では自律神経失調症と思っていても、もしかしたら甲状腺機能亢進症など、ほかの疾患が隠れているかもしれません。そうした疾患の可能性が除外されて初めて自律神経失調症と診断されるので、必ず適切な検査を受けるようにしましょう。その上で自律神経失調症と診断された場合には、自律神経に詳しい医師の診察を受け、きちんと対策をすることが必要です。正しく治療をおこなえば、つらい症状は高確率で改善できるため、諦めずに治療を継続してみてください。
編集部まとめ
「どの病院へおこなっても異常が見つからない」と、治療を諦めてしまっている人も多いかもしれません。しかし、慢性の頭痛やめまいなどを抱えているとQOLが低下したり、仕事や勉強のパフォーマンスが下がったりします。もし困っていることがあれば、早めに専門の医療機関に相談してみましょう。
医院情報
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アクセス | 東急田園都市線「二子玉川駅」 徒歩12分 |
診療科目 | 内科、神経内科、小児科 |