汗が止まらないのは多汗症? 更年期・自律神経の乱れ? チェックリストで確認を
サウナやスポーツで汗をかくのは心地良さもあると思いますが、日常生活において、必要以上に汗をかいてしまうのは困りものです。そこで、「汗が止まらないのは多汗症?」という疑念について、医師の山本英博先生(山本英博クリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
山本 英博(山本英博クリニック)
目次 -INDEX-
「ちょっと動くと全身から汗が止まらない」「顔・手・脇・頭など局所から汗が吹き出る」のは病気?
編集部
汗っかきなのですが、これは病気ですか?
山本先生
全身にたくさん汗をかくからといって、それは病気ではありませんのでご安心ください。「汗をかく」のにはきちんとした理由があります。例えば暑い時に汗が出るのは、汗が蒸発するときに身体の表面の熱を奪って、身体を冷やしてくれるからです。汗の量には個人差があり、少ない方もいれば多い方もいます。
編集部
では、「多汗症」は「汗っかき」とどう違うのですか?
山本先生
多汗症は、暑い環境でないにもかかわらず手のひらや顔・頭部・脇・足の裏の限局した部位に多量の発汗がみられる疾患です。運動した時や暑いときに全身にたくさんの汗をかく「汗かき体質」とは異なります。
編集部
どうやって見分けたらよいのでしょう?
山本先生
「多汗症」の特徴はいくつかありますが、まずは「発症する時期が小児期である」ということが挙げられます。また、常に発汗しているのではなく、多汗と無汗の状態が交互にみられるのも特徴です。
編集部
ほかにはありますか?
山本先生
左右同時に発汗することが挙げられます。ほかの疾患でも多汗が出る場合はありますが、その場合は片側だけに多汗がみられるなど、左右差があります。発汗する部位としては、手のひら・足の裏・脇の下・顔面・頭部の5部位に多く、通常複数の部位に多汗がみられます。
汗っかき・汗が止まらない症状は何科の病院を受診すべき? 多汗症のセルフチェック方法や異常な発汗の目安を医師が解説
編集部
ほかの病気でも、多汗症状が出ることがあるのですか?
山本先生
そうですね。汗がたくさん出てしまう症状を呈する病気には、「多汗症」のほかにもいくつかあります。病的に汗をかく場合、多汗症の可能性もありますが、別の病気が隠れている可能性もあるのです。
編集部
どんな病気がありますか?
山本先生
疾患名 | 特徴 |
自律神経失調症 | 不眠や頭痛、動悸や息切れ、めまい、のぼせ、立ちくらみなどほかの症状も伴う場合が多い。 |
更年期障害 | 45~55歳頃の女性に多くみられる。 |
甲状腺機能亢進症 | 甲状腺の腫れ、眼球突出、疲れやすい、イライラする、食事をしても痩せていく、動悸などを伴う。 |
低血糖 | 脈拍が速くなる・顔色が青白くなる・手足の震えなどを伴う。甘いものを摂取すると症状が改善する。 |
編集部
では、多汗症の場合、具体的にどんな症状で多汗と判断されるのですか?
山本先生
①最初に症状が出たのが25歳以下 | ▢ |
②左右対称性で発汗が見られる | ▢ |
③睡眠時は発汗が止まっている | ▢ |
④1週間に1回以上多汗のエピソードがある | ▢ |
⑤家族歴がみられる | ▢ |
⑥多汗によって日常生活に支障が出ている | ▢ |
編集部
ではこれらを踏まえ、多汗症状が気になる方は、何科を受診すれば良いですか?
山本先生
自律神経失調症や更年期障害が疑われる場合は心療内科や婦人科、甲状腺機能亢進症や低血糖かもしれないと思う方はまず一般内科、そして多汗症かもしれないと思う方は、多汗症専門に診察してくれるクリニックの受診が良いでしょう。
汗が止まらない多汗症状の人が病院を受診したときの診察の流れとは? 病気と診断された後の治療の流れも紹介
編集部
多汗症状が気になる方が病院を受診した時、診察はどのように進められるのですか?
山本先生
医療機関によって違いはあると思いますが、例えば当院では、まず多汗症治療について知っていただくための「多汗症教室」に参加していただいています。インターネット上に載っている多汗症の情報には、健康保険が適用されない手術の解説も多かったりするので、「交感神経節切除術」(保険適用)の正しい説明を行います。
編集部
「多汗症」と診断された場合、どのように治療が進められるのですか?
山本先生
例として手のひらの多汗症の治療なら、外用薬(アポハイドローション・塩化アルミニウムの塗り薬)・手のひらへの通電療法(イオントフォレーシス)・内視鏡手術(胸腔鏡下胸部交感神経節切除術:ETS)の3つの方法があります。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
山本先生
まずは塗り薬で様子をみます。それで効果が感じられないようであれば、手のひらへの通電療法で皮膚における汗の出口である「汗孔」に対し電気的に炎症をあたえ、汗孔を閉塞させます。それでも効果が見られなければ、発汗の中心的な役割をはたす「交感神経節」を切除する手術が検討されます。手術は、3〜4mmというごく僅かな皮膚切開で行うことができ、日帰りで可能です。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
山本先生
「多汗症」は、がんや脳卒中などと比べるとまだ正しい情報が伝わっていないと感じています。例えば、多汗症の手術も種類がいくつかあるのですが、医療機関によっては1つの術式しか選択できないところもあります。そこで手術を行ってから、「もっとよい術式があった」と後悔しても遅い場合もあるので、ぜひ手術についての正しい情報を得たうえで、手術を受けていただきたいと思います。とくに、手術を受けることで「代償性発汗」となってしまうケースがあり、注意が必要です(代償性発汗:手術部位の発汗が抑えられる代わりに、別の部位の発汗が増えてしまう副作用)。もし代償性発汗にお悩みの方がいらっしゃいましたら、代償性発汗についての相談にも対応している多汗症専門のクリニックを調べて、ぜひ問い合わせてみてください。
編集部まとめ
ここで紹介したチェックリストのうち2項目以上に当てはまる人は多汗症の可能性があるため、病院受診を検討してみてください。その際、多汗症手術の術式については、しっかり知識を持っておくと良さそうです。
医院情報
所在地 | 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2-28-4 イモンビル7階 |
アクセス | JR山手線「渋谷」駅より徒歩5分 |
診療科目 | 多汗症 |