冬こそ「脱水」に注意? 症状と水分摂取のコツを管理栄養士が解説
「スキンケアを頑張っているのに肌が乾燥する」「なんとなく頭が痛い」「ときどき足がつる」など、なんとなく不調を感じていませんか? その原因は「脱水症」かもしれません。実は冬の寒い時期でも脱水症は起きると言われています。そこで今回は、「脱水症」の症状と水分補給のコツについて管理栄養士の髙橋さんが解説します。日々の水分補給を見直すことで、大きな病気も予防することができるので、ぜひ実践してみてください。
監修管理栄養士:
髙橋 沙都(管理栄養士)
冬こそ「脱水」に注意? 主な脱水症状について
編集部
冬でも水分不足がおこるのでしょうか?
髙橋さん
冬は夏と違って水を飲む量が減りやすいことや空気が乾燥しているなどの要因で、知らず知らずのうちに水分不足になることがあります。特に空気が乾燥しているので、皮膚から水分が蒸発しやすくなってしまいます。夏の暑い時期のように大量に汗をかいているわけではないので、冬の寒い時期は水分不足を自覚しにくい傾向にあります。そのため、冬でも体から健康を維持するための水分がなくなると脱水症になってしまうのです。
編集部
脱水症になるとどうなりますか?
髙橋さん
- 肌の乾燥
- 手足の冷え
- 口の中が粘つく
- 尿の色が濃くなる
人間の体は半分以上が水分でできています。口から飲んだ水は、小腸や大腸で吸収され、血液となって体中を循環します。その後、血管から筋肉や皮膚にいきとどき、髪の毛や爪の先まで全身に届けられていきます。それだけでなく涙や鼻水、よだれ、汗、尿などの体液としても利用され、体の健康を維持するための重要な役割を果たしています。よって、水分が不足すれば体を健康に保つための機能が十分に発揮できないので、体のあらゆるところに不調のサインが現れてしまうのです。
編集部
冬におこる脱水症の原因には、飲水量の減少や空気の乾燥のほかにどんなことが考えられるのでしょうか?
髙橋さん
- 過度な厚着
- 年末行事による食生活の乱れ
- 下痢や嘔吐などの体調不良
寒いからといって厚着をしすぎると意外と汗をかいてしまうこともあり、脱水につながります。また、年末は行事やイベントが重なり、食生活が乱れる時期です。野菜不足や利尿作用の高いアルコールの摂りすぎは水分不足をまねいてしまいます。さらに、冬は嘔吐や下痢を引き起こすノロウイルスなどが流行しやすい時期です。嘔吐や下痢は、水分を一気に体から排出してしまうため、注意しないと脱水症になってしまいます。
脱水を放置すると危ない! 脱水のチェック方法は?
編集部
脱水を放置するとどんな危険性があるのでしょうか?
髙橋さん
- 嘔吐やめまい
- 話しかけても答えられなくなる
- 体の痙攣
- 排尿や排便ができなくなる
- 血栓ができやすくなる
大人や子どもにかかわらず、体重の約2%の水分が失われただけで脱水症の症状があらわれます。放置すれば、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まり、命に関わることもあります。脱水症を重症化させないためにも早期発見・早期治療が大切です。
編集部
脱水症をチェックする方法はありますか?
髙橋さん
脱水症のチェック方法は3つあります。1つめは、口の中が乾燥していないか確認してみましょう。口の中がネバついたり、舌の表面が乾いたりしていたら水分が不足しているサインです。2つめは、爪の先を押してみましょう。白かった爪の先がピンク色に変わるまで3秒以上かかれば脱水症を起こしている可能性があります。3つめは、尿の色のチェックです。水分不足だと尿の色が濃くなります。
編集部
脱水症状が起きてしまったらどうすればいいですか?
髙橋さん
脱水症状を感じたら、早めに対処することが大切です。すぐに経口補水液などで水分補給をしましょう。症状が改善しない場合や意識がはっきりしない場合は、速やかに医療機関を受診してください。
管理栄養士が教える冬の水分補給のポイントは?
編集部
脱水を予防するためには、どうすればいいですか?
髙橋さん
冬は、こまめな水分補給と部屋の加湿で脱水症を予防しましょう。飲み物は糖分や塩分の少ない水やお茶がおすすめです。フルーツやゼリー、食事からも水分補給ができます。また、冬は空気の乾燥に加えて部屋のエアコン暖房などによって、さらに湿度が低くなっています。加湿器を使用したり、洗濯物を部屋に干したり、空気が乾燥しないよう工夫しましょう。
編集部
1日に必要な水分の量はどのくらいになりますか?
髙橋さん
1日に必要な水分は約2.5リットルです。体の中の水分は、呼吸や汗、尿、便などで毎日約2.5リットルも排出されています。ただ、2.5リットルの水分を飲み物で摂る必要はありません。食事から約1リットル、代謝により体の中で約0.3リットルの水分が補われているので、飲み物から摂らなければいけない水分量は約1.2リットルとなります。
編集部
適切な水分補給のタイミングはありますか?
髙橋さん
一度にたくさんの水分を摂る必要はありません。睡眠中は水分を摂ることができないので、就寝前と起床時にはコップ一杯の水でいいので飲むようにしましょう。また、汗をたくさんかく運動後や入浴後も水分を摂るようにしてくださいね。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
髙橋さん
冬の脱水症は「かくれ脱水」とも呼ばれ、体の中の水分が不足していることに、なかなか気づくことができません。「病院に行くほどでもないけど、ちょっとおかしいな」と思ったら、脱水症のサインの可能性があります。いつもよりもちょっと多めに水分を摂ることを意識して、脱水症にならないように気を付けてくださいね。
編集部まとめ
今回は、冬に起こる脱水症の原因や予防方法について管理栄養士の髙橋さんに解説してもらいました。脱水症を放置すると、命に関わる危険性も出てきます。冬の脱水症を防ぐポイントは、こまめな水分補給と部屋の加湿です。この2つのポイントを忘れずに、冬の脱水症を予防していきましょう。