40歳以上必見! 「緑内障」になりやすい人の特徴を眼科医が解説 原因・初期症状・予防法も紹介
高齢者に多く発症し、治療が遅れると失明を招くこともある「緑内障」。最近、緑内障を発症する人が増加傾向にあると聞きます。一体なぜ、緑内障の患者が増えているのでしょうか。また、どんな人が緑内障を発症しやすいのかも気になります。初期症状や診断基準などを「小江戸眼科内科 白内障・緑内障・糖尿病クリニック」の庄司先生にうかがいました。
監修医師:
庄司 拓平(小江戸眼科内科 白内障・緑内障・糖尿病クリニック)
目次 -INDEX-
緑内障になりやすい人の特徴や原因とは? 親が緑内障で遺伝したりスマホを使い過ぎたりする若者・近視があると緑内障の原因になる?
編集部
緑内障とは、どのような病気ですか?
庄司先生
※日本眼科医会「緑内障といわれた方へ-日常生活と心構え-」
https://www.gankaikai.or.jp/health/56/
編集部
なぜ、緑内障が発症するのですか?
庄司先生
緑内障が起きる原因の1つに、眼圧の上昇が挙げられます。主に、房水の流れが妨げられることで眼圧が高くなります。房水とは、目の中に栄養などを運ぶ役割をしている液体で、房水が眼内で循環しているため眼球の圧力は一定に保たれています。しかし、何らかの原因でこの房水の排出が妨げられると眼圧が高くなり、緑内障が発症してしまうのです。
編集部
眼圧が高くなると緑内障になるのですか?
庄司先生
必ずしもそういうわけではありません。なかには眼圧が正常であるにもかかわらず、緑内障を発症する人がいます。これを「正常眼圧緑内障」と呼び、欧米に比べて特に日本人に多くみられることがわかっています。日本人の緑内障患者のうち、約70%がこのタイプと言われています。日本人においては、「眼圧が正常だから緑内障ではない」とは言えません。
編集部
なぜ、眼圧が正常なのに緑内障を発症するのですか?
庄司先生
原因はまだ明らかになっていませんが、そもそも眼圧は人によって異なり、耐えられる眼圧は人それぞれです。緑内障の発症には、眼圧だけでなく、加齢、遺伝、眼血流の状態、生活習慣、近視、服用している薬の影響なども関与していると考えられています。
緑内障は失明の危険がある病気なのに初期症状がなく自覚できない? 緑内障のチェック方法・診断基準や治療法とは
編集部
緑内障は初期症状があるのですか?
庄司先生
緑内障の典型的な症状は、視野が狭くなることです。しかし、病気の進行は非常にゆるやかで、初期にはほとんど症状が出ることはありません。それだけでなく、末期になっても症状を自覚しないことがあります。
編集部
進行すると、どのような症状が出るのですか?
庄司先生
緑内障で多いのは、「上下が非対称で視野が欠ける」といった症状です。そのため、「横文字は読めるけれど、縦文字が読めない」と訴える患者さんが多いですね。そのほか、「車を運転していて歩いている人に気がつかない」「信号を見落とす」といったこともあります。いずれにしても、本人は見えているつもりでも、見えていないということが多いのです。
編集部
そのほかには、どのような症状がありますか?
庄司先生
緑内障には急性と慢性があり、急に眼圧が高くなる急性では、目の痛み、頭痛、吐き気などを起こすことがあります。
編集部
どのように緑内障と診断されるのですか?
庄司先生
診断には、眼圧検査、眼底検査、視野検査の3つが必要です。眼底検査で網膜神経線維が減った場所があり、それとほぼ一致して視野の異常が見つかった場合に緑内障と診断されます。また、緑内障で起きやすい視野欠損パターンも知られているので、これらの検査結果を総合的に判断して緑内障と診断します。
編集部
緑内障は治るのですか?
庄司先生
眼圧が高くなると視神経が傷んでしまいます。傷んだ神経は元に戻すことができないので、一度失われた視野を広げることはできません。ただし、目薬や内服薬などの薬物療法やレーザー治療、手術などで眼圧を正常に近づけ、進行を遅らせることは可能です。
編集部
緑内障の患者さんは増えているのですか?
庄司先生
緑内障は網膜の神経節細胞が減少する病気で、この細胞は健常な人でも加齢とともに緩やかに減少します。そのため、高齢者になればなるほど緑内障の有病率は高くなることに加え、進行速度も速くなることが知られています。
編集部
社会の高齢化と関係するのですね。
庄司先生
そのとおりです。日本人は長寿化し、高齢化率も上昇しているので、緑内障有病率も上昇します。また、近視が強いほど緑内障有病率が上昇することも知られています。近年、若年世代ほど近視が強いという報告もあり、この点でも今後も緑内障の有病率は上昇することが予想されます。約20年前におこなわれた疫学調査では、40歳以上の約5%と報告されていましたが、現在では7%まで上昇しているという報告もあります。
編集部
そんなに増えているのですね。
庄司先生
昭和の終わり頃までは糖尿病網膜症や白内障が失明原因の上位を占めていましたが、平成の時代に緑内障が第1位になりました。その後も緑内障の割合は増え続け、最新の調査では緑内障が中途失明原因の圧倒的第1位になっています。
緑内障を発症前に予防するには? 取り入れたい生活習慣や眼科の定期検査の重要性
編集部
緑内障は予防することができるのですか?
庄司先生
緑内障発症の根本原因は現在でも不明とされています。緑内障を完全に予防することは難しいのですが、いくつかの危険因子は知られています。また、失明予防の観点からは可能な限り早い段階で発見し、早期から治療をおこなうことが重要です。もともと緑内障は慢性疾患ですが、早期から治療をおこなえば、末期に至るまでは数十年以上かかりますし、末期になるまでは自覚症状がないので、日常生活で支障をきたすこともありません。
編集部
目を労ることで緑内障を防いだり、進行を抑制したりすることはできますか?
庄司先生
「目を使いすぎたから緑内障が進行する」という医学的な証拠は、現状まだありません。そのため、特段の生活制限もありません。しかし、「枕が高い」「うつ伏せで寝る習慣がある」「下を向く姿勢を長時間続ける」「喫煙の習慣がある」なども緑内障のリスクを高める要因になります。
編集部
生活習慣も関係するのですね。
庄司先生
睡眠時無呼吸症候群も眼圧が上がって視神経に負担がかかる原因になり得ます。「睡眠中、呼吸が止まっている」「いびきをかいている」などと指摘されたら専門の医療機関を受診しましょう。
編集部
そのほかに、気をつけることはありますか?
庄司先生
現在、緑内障は日本における中途失明原因の1位です。しかし、早期に発見して適切に治療をおこなえば、失明を避けることができます。そのため、定期的に検診を受け、早期発見に努めることが重要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
庄司先生
眼科医をしていると、残念ながら緑内障で失明に至ってしまう人と遭遇する機会も少なくはないのですが、大半の患者さんは早めに検査をして、早期から治療をしていれば失明に至ることは防げた可能性が高いのが現状です。「自覚症状がないから眼科を受診する必要がない」と考えるのではなく、40歳以降は定期的に眼科の検査を受けることが必要です。緑内障の検査をすることは、将来の失明のリスクを下げることにつながるため、ぜひ定期的に眼科で検査を受けるようにしましょう。
編集部まとめ
糖尿病で失明のリスクがあることは知られていても、緑内障が中途失明原因の第1位であることは、あまり知られていません。年齢が上がるほど発症率が高くなるので、まずは40歳になったら眼科で緑内障の検査を受けるようにしましょう。その後も定期的に検査を受け、いち早く発症に気づくことが失明を避けるためには大切です。
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診療科目 | 眼科、糖尿病内科 |