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糖尿病治療でよく聞くインスリン注射って何? 医師が解説するインスリン療法の効果や種類・打ち方

 更新日:2023/11/13
糖尿病治療でよく聞くインスリン注射って何? 医師が解説するインスリン療法の効果や種類・打ち方

糖尿病に対する治療として、多く用いられるインスリン注射。一体、インスリンを注射することでどのような効果が得られるのでしょうか? また、打ち方や注意点は? 清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック院長の清水先生に教えてもらいました。

清水 裕史

監修医師
清水 裕史(清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック)

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1999年名古屋大学医学部卒業。春日井市民病院、公立西知多総合病院内分泌・代謝内科部長、独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院内分泌・糖尿病内科診療部長兼糖尿病センター長などを経て、2020年清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック開院。専門分野である糖尿病や高血圧症など生活習慣病を中心に、これまでの経験を活かして甲状腺疾患なども診察。地域のかかりつけ医として、感冒や花粉症などの一般内科治療のほか、予防接種や健康診断などの予防医療にも力を入れている。

糖尿病治療でよく聞くインスリンとは? 糖尿病になると患者はインスリン注射が必要? 仕組みと効果を医師が解説

糖尿病治療でよく聞くインスリンとは? 糖尿病になると患者はインスリン注射が必要? 仕組みと効果を医師が解説

編集部編集部

インスリン注射とはどのような治療ですか?

清水先生清水先生

主に糖尿病の患者さんに対して行われる治療で、インスリンを注射することで不足しているインスリンを補う治療法です。

編集部編集部

糖尿病になると必ずインスリン注射が必要なのですか?

清水先生清水先生

いいえ、必ずというわけではありません。そもそも糖尿病には1型2型があり、1型は主に自己免疫の異常により、インスリンを分泌する細胞が破壊され、インスリンがまったく出なくなる、あるいは出たとしてもごく少量になってしまう病気です。その場合は、インスリンを基本的に体外から補う必要があります。

編集部編集部

1型の場合は基本的にインスリン注射が必要なのでしょうか?

清水先生清水先生

1型糖尿病は3タイプに分類されます。厳密にいうと、場合によってはインスリンを使わないこともありますが、基本的に「使う」と考えていただいて良いと思います。

編集部編集部

それでは、2型の場合はどうでしょうか?

清水先生清水先生

2型は生活習慣と遺伝的な要因が組み合わさって発症する糖尿病です。この場合、インスリンの分泌量が少なかったり、分泌のタイミングが遅かったりして、高血糖の状態になってしまいます。2型糖尿病の場合には、まず食事療法や運動療法、場合によっては飲み薬を服用し、それでも効果がなければインスリン注射が必要になります。そのほか、肝臓や腎臓に障害があったり、感染症にかかったりしているときにもインスリン注射が必要になります。

編集部編集部

2型の場合、いきなりインスリン注射を行うことはないのですか?

清水先生清水先生

極度に高血糖の状態になっている場合には、最初からインスリン注射を使うこともあります。いずれにしても、どのような治療法を採用するかは、その人の状態に応じて決定します。

編集部編集部

インスリンを注射するとどうなるのですか?

清水先生清水先生

インスリンを注射することで、体内の血糖値を適正にコントロールすることができます。またインスリンを注射によって補うことで、無理にインスリンを分泌しようとする膵臓の疲弊を防ぐ効果が期待できます。そのほか合併症の進行を遅らせる効果も望めます。

編集部編集部

2型糖尿病の場合、インスリン注射を始めたら一生、打ち続けなければいけないのですか?

清水先生清水先生

いいえ。現在では「早期インスリン療法」といって、なるべく早い段階からインスリン注射を始めるのが一般的で、それによって膵臓を一旦休ませることができ、回復が進めばインスリン注射を減らしたり、治療を中断したりすることもできます。極度に高血糖の状態が続いている場合には、この治療法を採用することが多いですね。

糖尿病のインスリン注射の種類と打ち方を知ろう 自己注射は自分で打つの? 使うのはどんな注射器?

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編集部編集部

インスリン注射には種類があるのですか?

清水先生清水先生

はい、以下の種類があります。

超速効型インスリン製剤 食事に合わせて注射。注射してから10分未満~20分程度で作用。インスリンの追加分泌を補う。注射後すぐに効き始めるが、作用は最も短い。
速効型インスリン製剤 食事に合わせて注射。注射してから30分~1時間で作用。インスリンの追加分泌を補う。注射後30分程度で聞き始め、超即効型と比べてゆっくりと効く。
中間型インスリン製剤 食事のタイミングにかかわらず、1日のうち決まった時間に注射。注射してから30分~3時間で作用。インスリンの基礎分泌を補う。注射後ゆっくりと効き始め、ほぼ1日効果がある。
持効型溶解インスリン製剤 食事のタイミングにかかわらず、1日のうち決まった時間に注射。注射から1~2時間で作用。インスリンの基礎分泌を補う。ほとんどピークがなく、中間型よりも長く効く。ほぼ1日安定して効果があるのが特徴。
混合型インスリン製剤 食事に合わせて注射。超速効型/速効型インスリン製剤と、中間型インスリン製剤のそれぞれの作用時間に効果がみられる。インスリンの追加分泌と基礎分泌を補う。
配合持効溶解製剤 食事に合わせて注射。超速効型インスリン製剤と、持効型インスリン製剤のそれぞれの作用時間にみられる。インスリンの追加分泌と基礎分泌を補う。超速効型と持効型溶解インスリン製剤の配合製剤。

編集部編集部

それぞれ種類によって、注射のタイミングなどが違うのですね。どのようにして選べば良いのですか?

清水先生清水先生

糖尿病のタイプや病状によって異なります。また、複数の種類を組み合わせて使うこともあります。

編集部編集部

注射の回数はどれくらいですか?

清水先生清水先生

どの製剤を用いるかによって違います。たとえば、「持効型溶解インスリン製剤」は効果が長く続くので1日1回打つケースが大半です。反対に、「速効型インスリン製剤」は食事の前などに打って、急速に血糖値が上昇するのを防ぐタイプの薬。そのため、1日4回注射することがあります。

編集部編集部

自分で注射するのですか?

清水先生清水先生

基本的に自分で注射するか、あるいは、家族に注射をしてもらいます。

編集部編集部

どのような注射器を使うのですか?

清水先生清水先生

現在ではペン型の注射器を使うのが一般的です。ペン型の注射器には、あらかじめインスリン製剤が内部にセットされた使い捨てタイプのプレフィルド型や注射器にインスリンのカートリッジ製剤を自分でセットするカートリッジ型があります。

糖尿病のインスリン注射・インスリン療法に副作用はある? 痛みは? 使用済みの注射針はどう処分する?

糖尿病のインスリン注射・インスリン療法に副作用はある? 痛みは? 使用済みの注射針はどう処分する?

編集部編集部

注射はどこに打つのですか?

清水先生清水先生

インスリン注射は皮下注射なので、皮膚と筋肉の間の皮下組織(脂肪)に打ちます。場所は腹部、上腕部の外側、臀部、太ももの外側などが一般的です。

編集部編集部

注射を打つときに痛みはありますか? 何か注意点は?

清水先生清水先生

最近では細い注射針も開発されているので、ほとんど痛みを感じずに注射することができます。ただし、毎回同じところに注射をすると皮膚が硬くなってしまうリスクがあるので、少しずつ場所をずらして注射します。

編集部編集部

副作用はありますか?

清水先生清水先生

最も多いのは、血糖値が下がりすぎて低血糖の状態になってしまうことです。インスリンが効きすぎることによって、正常の範囲を超えて血糖値が下がりすぎてしまい、放置すると意識障害の危険もあります。そのため普段からできるだけ同じ時間に食事をしたり、補食をしたりして、低血糖を予防することが必要です。また日頃から血糖値をしっかり測定することも大事です。

編集部編集部

ほかに、インスリン注射のリスクはありますか?

清水先生清水先生

インスリン注射は、低血糖以外副作用がほとんどありません。アレルギーが起きることがありますが、非常にまれです。糖尿病の飲み薬だと肝機能障害が起きることがありますが、注射の場合にはそのようなリスクもありません。非常に安全性の高い治療なのです。

編集部編集部

副作用がほとんどないのですね。

清水先生清水先生

はい。それからインスリン注射の特性として、容量に上限がないということも挙げられます。通常の薬は上限が定められていますが、インスリンの場合には血糖値の状態に応じて、どれだけ単位を増やしても構いません。

編集部編集部

たくさんインスリンを投与して危険性はないのですか?

清水先生清水先生

あるとしたら、体重が増加するというリスクです。しっかり血糖値を下げようとすると大量に投与することになりますが、そうすると、体重が増えるという危険があります。そのため、「インスリンを投与するから食事療法はやらなくてもいい」ではなく、「食事療法を継続しつつ、インスリンを投与する」ことが必要なのです。

編集部編集部

使用済みの注射針はどうしたら良いのですか?

清水先生清水先生

糖尿病専門医のクリニックの場合、使い終わった針はクリニックが回収し、まとめて廃棄していると思います。受診のときに持ってきていただくので、ご自宅ではペットボトルなどに入れ、安全に保管してください。

編集部編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。

清水先生清水先生

糖尿病の患者さんは、大抵の場合、インスリン注射を嫌がります。「面倒」「痛い」「怖い」という理由が大半で、なかには「インスリンを打ったら終わりだ」とおっしゃる方もいます。そのため、医師にインスリン療法を促されても先延ばしにしてしまう方も少なくありません。しかし、しっかり血糖値を下げようという場合、インスリンは非常に確実な治療法です。また、早期に治療を始めれば膵臓の疲弊が改善され、インスリン療法を中止できるかもしれません。そのため、医師からインスリン注射が必要と言われたら、できるだけすぐ始めるようにしてほしいと思います。

編集部まとめ

インスリン注射は、糖尿病治療のなかでも重要な治療法。確実に高血糖の状態を改善し、合併症を防ぐためにも必要な治療法です。先延ばしにすることで症状が重症化し、合併症が進行してしまうことも。医師から指示されたらできるだけ早く治療を開始するようにしましょう。

医院情報

清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック

清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック
所在地 〒467-0034 愛知県名古屋市瑞穂区彌富町桜ケ岡4-1
アクセス 地下鉄名城線「総合リハビリセンター駅」2番出口 徒歩4分
名古屋市営バス 清水ヶ岡バス停前
診療科目 内科・皮膚科

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