糖尿病の症状や原因、治療方法とは
糖尿病(読み方:とうにょうびょう)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
村松 賢一 医師 (戸塚クリニック 院長)
糖尿病とは
通常、食事をした際に一時的に血糖値が高くなりますが、しばらくすると正常値に戻ります。これは、インスリンという膵臓で作り出されるホルモンが、細胞が血液の中からブドウ糖を取り込んでエネルギーとして利用するのを助ける働きをしています。糖尿病は、このインスリンが不足したり、働きが悪くなったりしたために、血液中のブドウ糖(=血糖)が異常に高くなる病気です。
発症要因によって、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、その他などに大別できます。
1型糖尿病は、免疫の異常などにより膵臓の細胞が破壊されてインスリンが作られなくなるために発症します。2型糖尿病は、インスリンは作られていても、運動不足や過食などの生活習慣のために、量が不足したり、うまく働かなかったりすることで発症します。
妊娠糖尿病は、妊娠中にはじめて見つかる病気で、糖尿病合併妊娠とは区別されます。
糖尿病には主に1型と2型、その他に妊娠糖尿病、特定の原因によるものがあります。1型の糖尿病は、膵臓のβ細胞が壊れ、インスリンが分泌されなくなってしまうもので、小さい子供から若年成人に好発しますが 、中高年で発症する場合もあります。一方、大多数の方は2型糖尿病で、複数の遺伝因子に、運動不足、過食などが加わってインスリン作用不足を生じて発症します。
厚生労働省が3年ごとに実施している「患者調査」の平成26年調査によれば、糖尿病の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は 316万6,000人でした。
また、糖尿病予備軍(発症する手前の方、というより、現状の診断基準では糖尿病とは診断できないが、今後糖尿病の診断に近づいていく方)もたくさんいらっしゃるでしょう。初期の糖尿病は症状がありませんから、糖尿病になっていることに気がついていない人も多くいると思われます。
糖尿病の症状
1型糖尿病の場合は、体重の減少のような急激な症状の変化がありますが、2型糖尿病は初期段階では自覚症状がなく、徐々に症状が進行します。
主に2型糖尿病で見られる症状は以下のとおりです。
- 疲れやすい
- 排尿の回数が多い
- 尿量が多い
- 喉が乾きやすい
- 皮膚が乾きやすい など
糖尿病が進行すると、重大な病気を合併します。3大合併症として、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害が有名です。また、脳卒中や心筋梗塞、末梢動脈性疾患も引き起こします。
妊娠糖尿病では、お母さんが高血糖であると、おなかの中の赤ちゃんも高血糖になることで、以下のようなさまざまな合併症が起こり得ます。
お母さん:妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症・腎症およびそれらの悪化
赤ちゃん:流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、胎児死亡など
初期のころは無症状です。血糖値の高い状態が続くと、高血糖の尿がたくさん出るとか、やせるとかといった症状が出てきます。さらに重くなると、体調不良になるとか、意識がもうろうとしてくるといった症状も出てくることがあります。1型糖尿病は比較的急性の経過のものが多いですが、2型の場合、症状は徐々に進行していきます。
糖尿病の原因
1型糖尿病
インスリンをつくる膵臓の機能が壊れ、インスリンが作られなくなることが原因です。子供や若年者に多く見られます。ストレスやウイルス感染の影響が考えられています。
2型糖尿病
主に2つのタイプがありますあります。
- インスリンの分泌量が少ないタイプ:膵臓機能が低下している可能性があります。
- インスリン抵抗性:インスリンの働きが弱いタイプ。運動不足や食べすぎが原因の可能性があります。
どちらの場合も、遺伝・過食(食べ過ぎ)・運動不足と肥満・不規則な生活習慣などによるストレスによって発症すると言われています。また、肥満はなくても、内臓脂肪が増えるメタボリックシンドロームの患者さんは発症しやすくなります。
その他
遺伝子の異常によるものや、他の病気や薬剤による影響で発症します。
妊娠糖尿病
妊娠中にはじめて見つかる糖尿病に至っていない糖代謝異常です。妊娠中に胎盤が作るホルモンが、インスリンの働きを抑える作用もあるため、十分なインスリンが作られない場合に血糖が上昇します。肥満、高齢妊娠、家族に2型糖尿病患者がいる、過去の妊娠で高血糖を指摘された場合に起こりやすいとされています。
糖尿病の検査法
血液検査で診断が可能です。検査は次の4項目です。
①HbA1c(ヘモグロビンA1c)
血糖値が上昇すると赤血球の中のヘモグロビンとくっつきヘモグロビンA1cになります。 この検査の値は過去1~2カ月間の平均的な血糖値を表しているため、普段の血糖値を調べるので重要な役割を果たします。
②早朝空腹時血糖値
通常であれば、夕飯を食べてから朝起きるまで何も口にしないため、朝食前が最も血糖値が高いと考えられます。この値が高いという事は、血糖値を体がコントロールできていないという事を示します。
③75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)
最も確実な検査です。 ブドウ糖液を摂取し、時間経過ごとに血糖値を測定するという検査です。わざと血糖値を上げ、どのような反応を示すかで、判断しようという検査です。
④随時血糖値
通常状態の血糖値を計る検査です。
・随時血糖検査(空腹時に限らずに、測ったその時点での血糖の値を検査)
・空腹時血糖値(検査当日の朝食を抜いた空腹の状態で血糖値を測る検査)
・グリコヘモグロビン検査(HbA1c)(グリコヘモグロビンが、ヘモグロビンのなかにどれくらい含まれているかを調べる検査)
・尿糖検査(尿に糖が混ざっていないか調べる検査)
などです。
糖尿病の治療方法
糖尿病治療の目的は血糖をコントロールして、合併症が起こるのを防ぐことにあります。治療は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つです。食事療法は、最も重要です。
食事療法
糖尿病の食事療法は、病気を治すための特別な食事をとることではなく、「食べ過ぎず、栄養バランスの良い食事を、毎日規則正しくとる」ことです。この食事は、生活習慣病を予防し長生きするための健康食といえます。
運動療法
2型糖尿病では、過食や運動不足を解消することが重要です。
どのような運動を、いつ、どのくらい行うかは、主治医と相談しましょう。
薬物療法
食事療法や運動療法だけでは、血糖をうまくコントロールできない場合は薬物療法を行います。
薬物療法には、体内のインスリン不足を補うためにインスリン注射を行う治療と、飲み薬による治療の2つがあります。
薬物療法を始めてからも、食事・運動療法を続けていくことが大切です。
食生活の乱れや運動不足が主たる原因なので、食生活の改善や運動の励行が第一にあります。それに加えて補助的に薬を使用していきます。ただし症状が重い方の場合、インスリンを使用することもあります。2型糖尿病は遺伝的素因の下に発症する一種の“体質”のようなものですので、その“糖尿病体質”が治るといったことはありませんが、食生活の改善や運動の強化をずっと続けることによって、高血糖を回避して、糖尿病でない方と同じ健康を維持することは可能だと思います。1型の場合は主に自己免疫の下に発症する病態で、“発症の予防”という点では、自身ではどうしようもないところもあります。が、2型の場合先に述べてある通り、調和のとれた食事、適切な運動などを心がけることで、高血糖の出現=2型糖尿病の発症、を抑えることができますから、適切な食生活と定期的な運動はとても大切です。
皆さんが糖尿病であるかどうかは、専門医を受診の後、前述の4つの検査(のうち必要な項目を測定)の結果から診断します。最近、隠れ糖尿病という概念が出ています。空腹時の採血では見逃してしまうからです。その場合糖負荷検査なども追加して糖尿病なのかその予備軍なのか診断していきます。少しでも気がかりであれば、お気軽に専門医にご相談されることをお勧めします。