FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「ボーエン病」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

「ボーエン病」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/07/12
「ボーエン病」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

ふと肌を見たときに、赤い湿疹のようなものが出来ていた経験がある方はいるのではないでしょうか。その湿疹のようなものに痛みや痒みがない場合、気にせずそのまま放置することもあるでしょう。

しかしただの湿疹ではなく、気がついたらがんが内臓器官などに進行している可能性があります。一見湿疹にも似ているボーエン病は、皮膚の表皮内部にできる早期がんです。

本記事では聞き慣れない方も多いボーエン病についてどのような病気か、治療方法や転移するのかなどについて詳しくご紹介します。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

ボーエン病とは?

医師

ボーエン病はどのような病気ですか?

ボーエン病とは、皮膚の1番外側にある表皮内に有棘細胞がん(表皮の中間層を占める有棘層を構成する細胞から発生するがん)が留まっている表皮内がんの一種です。早期がんであり、進行はゆっくりで高齢者の方によくみられます。ボーエン病の「ボーエン」とは米国人医師の名前が由来となっています。
表皮内にはリンパ組織や血管は存在していないため表皮内に留まっている間は、有棘細胞がんが転移する問題はありません。しかし、有棘細胞がんが表皮内から真皮内に深く入り込んでしまうとボーエンがんと呼ばれ、リンパ節や内臓に転移を起こし死に至ります。
進行はゆっくりですが、気がついたときには手遅れになる可能性を持っている病気です。

どのような症状がみられますか?

ボーエン病が生じると皮膚表面は赤色や褐色の見た目となり、形は楕円形であったりいびつであったりします。比較的平らですがときに隆起状になることもあり、表面はざらざらで細かいフケのようなものが付着していたり、鱗屑やかさぶたのようになったりします。
大きさは米粒ほどの小さなものから、手の平くらいまでの大きさや広範囲に及ぶ場合もあり、さまざまです。通常は単発で発症しますが、多発する場合もあります。患部に痛みや痒みはなく、湿疹のように見えるのが特徴です。
人によってはシミのような見た目や、角質増殖があるとイボのような見た目にもなります。ボーエン病は全身どこにでも発症しますが、普段日光に当たらない体幹部・下肢・隠部に多くみられるのです。また外陰部に発症すると紅斑ができ、ケイラー紅色肥厚症ともいわれています。
以上のように症状の現れ方は人によってさまざまなため、ボーエン病とは気がつかず発見が遅れる危険性があります。

発症の原因を教えてください。

ボーエン病の発症の原因は以下が挙げられます。

  • 砒素(ひそ)
  • 紫外線
  • 放射線
  • 外傷
  • HPV(ヒトパピローマウイルス)

単発ではなく多発している場合や広範囲に症状がみられる場合、砒素が関係していることが多いです。砒素を使用する工場で働いていたことや、井戸水や農薬などに含まれた砒素を摂取したことが要因と考えられます。
日本人の場合、紫外線の影響はあまり関係ないといわれています。しかし、紫外線に当たったことで皮膚が赤くなるが黒く色素沈着が起こりにくいタイプは、有棘細胞がんが発症しやすいため紫外線には注意しましょう。X線などの放射線治療後の慢性放射線皮膚炎に発症する場合や、外傷がきっかけとなり傷口が長い期間経っても治らない場合、ボーエン病の可能性が考えられます。
また近年ではHPVウイルスの感染で発症しやすい場合もあります。HPVウイルスは性感染症の1つであるボーエン様丘疹症を引き起こすHPV16を中心に、2・18・31なども関与しているイボウイルスです。ボーエン様丘疹症をそのまま放置しているとボーエン病に発展する要因となります。

ボーエン病と湿疹の見分け方はありますか?

ボーエン病は湿疹などと見た目が似ているため、鑑別は容易ではありません。しかし、以下のような見分け方があります。

  • 痛みや痒みがない
  • 湿疹用の塗り薬やステロイド剤が効かない
  • 数ヶ月以上消えない
  • 徐々に範囲が広くなったり大きくなったりしている

以上のような場合、ボーエン病の可能性があるでしょう。ただし、ステロイド剤にはわずかに反応する場合があるため注意してください。
なかなか症状の改善がみられない場合、がんが進行している恐れがあります。湿疹だと自己判断せず、皮膚科専門医を受診してください。

ボーエン病の治療と進行速度

照明

受診するべき初期症状を教えてください。

初期症状は、皮膚表面が湿疹のように赤くなっていても先述したような痛みや痒みがなかったり、数ヶ月以上消えなかったりするなどの症状がある場合です。例えば、放置することで平らだった患部が次第に盛り上がり広がりをみせます。
また、進行することでリンパ節をはじめ内臓に転移し、死に至る可能性も考えられるため早期発見や治療が重要です。

どのような検査でボーエン病と診断されますか?

確実に診断するために病変の一部を切り取り、顕微鏡で調べる皮膚生検といわれる病理検査が必要です。そのほかに、ダーモスコピーと呼ばれる拡大鏡を用いた検査方法もあります。

治療方法を教えてください。

ボーエン病の治療方法は以下の通りです。

  • 外科的切除
  • 凍結療法
  • PDT
  • 5-FU軟膏
  • イミキモドクリーム

ボーエン病の治療方法の第1選択は外科的切除です。局部麻酔を行い病変の範囲にもよりますが、1〜4ミリメートル離して切除を行います。病変が小さいならそのまま傷口を縫い合わせますが、5〜10センチメートルなど皮膚欠損の範囲が大きいと直接縫い合わせることは難しいです。そのため植皮術や皮弁形成術などを行い修復します。
ボーエン病と疑われる病変の3〜5%は、皮膚の真皮層まで到達している可能性があるため、外科的切除を優先して行なっているのです。ただし高齢者や病変の大きさなどにより手術が困難な場合、液体窒素を用いた凍結療法がとられます。
液体窒素を病変に押し当て凍結・壊死させ除去させる方法で、数週間空けて1〜3回程度行います。液体窒素を押し当てることで表皮が剥がれますが、真皮にまで損傷させ傷跡が残る可能性が考えられるため、受ける際はよく考えましょう。
またレーザー光を照射するPDTといわれる光線力学的療法もあります。病変に取り込まれやすい光感受性物質を投与しレーザー光を照射することで、光感受性物質に光化学反応を引き起こします。すると活性酸素が発生するため、がん細胞を変性や壊死させるのです。凍結療法よりも病変消滅率が高いとされていますが、治療が行える施設が限られています。
治療方法はほかにも外用剤を使用する方法もあります。1つは5-FU軟膏です。1日1、2回塗布を3〜4週間行います。5-FU軟膏を使用する場合、ラップなどで密閉する閉鎖密閉療法(ODT)が必要となるため、自宅での治療は難しいでしょう。
そしてイミキモドクリームは、自然免疫を活性化することで抗ウイルス作用を発揮します。週3回塗布するだけのため使用しやすく、重篤な副作用もとくにみられていません。ただし、赤みやかさぶたが伴う場合もあります。
ボーエン病は外科的切除を第1と考えますが、最適な治療方法をとり治療に臨みましょう。

ボーエン病の転移と再発

女医

ボーエン病は転移しやすいのでしょうか?

発見や治療が遅れ真皮内にがんが進行すると、リンパ節や内臓まで転移を起こします。ボーエン病だと気がついたときには手遅れにならないように、皮膚表面に改善が見込めない病変がある場合、軽視せず皮膚科専門医へ相談しましょう。

再発するのでしょうか?

外科的切除を行った場合の再発は5%といわれています。病変を切除したから確実に再発しないとはいえません。
どのような治療方法を選択しても、治療後の経過観察やセルフチェックなどを欠かさないようにしてください。

ボーエン病は自然治癒しますか?

残念ながら自然治癒はしません。表皮内にがん細胞が留まっている間に治療を行えば問題ありませんが、先述したように放置することでリンパ節や内臓に転移を起こします。
放置した期間だけがんは進行するため放置せず、皮膚表面に治らない症状や気になる症状がある場合、皮膚科専門医を受診してください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

ボーエン病は全身どこにでも発症する可能性があるため、普段ご自身が目につきにくい箇所に発症していることも十分に考えられます。一見湿疹のように見える症状が、がんの可能性になり得るのです。
しかし必ずしも死に至るのではなく、放置せず初期症状のときに治療を行うと完治が目指せます。皮膚表面の気になる症状は決して放置せず、皮膚科専門医にてきちんと検査し、治療を行ってください。

編集部まとめ

夫婦
ボーエン病は皮膚表面に発症し静かにゆっくり進行するがんの一種です。進行を防ぐために何よりも早期発見・治療が重要です。

湿疹などと似ていて痛みや痒みがない場合、そのまま放置して様子を見ることもあるでしょう。しかしその期間が命取りになる可能性は十分考えられます。

後悔しないためにもご自身の身体の異変を逃さず、生活していきましょう。

この記事の監修医師