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糖尿病の運動療法・有酸素運動は「できることから」。強度ではなく、継続が大事

 更新日:2023/03/27
糖尿病の運動療法・有酸素運動は「できることから」。強度ではなく、継続が大事

糖尿病の治療では、「運動療法」「食事療法」「薬物療法」が基本とされています。しかし、糖尿病を発症しこれから治療を始める方は、運動療法ではどんな運動をするのか疑問に感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。そこで、糖尿病治療で行う運動療法について清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニックの清水裕史先生に詳しく話を聞かせてもらいます。

清水裕史先生

監修医師
清水 裕史(清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック 院長)

プロフィールをもっと見る

2005年名古屋大学医学部卒業。卒業後春日井市民病院、名古屋大学大学院医学系研究科などを経て2009年米国シンシナティ大学留学。2018年独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院内分泌・糖尿病内科診療部長兼糖尿病センター長に就任。2020年清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック開院。糖尿病や高血圧症のほか、甲状腺疾患の診察、かかりつけ医として一般内科治療や予防接種、健康診断などの予防医療も担う。医学博士。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医。日本糖尿病学会専門医。日本医師会認定産業医。日本内科学会、日本糖尿病学会、日本内分泌学会に所属。

有酸素運動でインスリン抵抗性の改善が期待される

有酸素運動でインスリン抵抗性の改善が期待される

編集部編集部

糖尿病に対する運動療法では、どのような効果が期待できるのでしょうか?

清水先生清水先生

運動療法を行うことで、高くなった血糖値を下げるほか、インスリンの抵抗性を改善する効果などが期待できます。インスリンの抵抗性とは、食後に高くなった血糖値を下げるインスリンの働きが低下し、十分な働きが発揮できていない状態です。このような状態が続くと、血糖値が下がりにくくなるほか、インスリンを分泌する機能が低下し、糖尿病を発症するリスクが高まるのです。

編集部編集部

運動療法ではどのような運動を行うのでしょうか?

清水先生清水先生

基本的には、有酸素運動を行います。状態によってはほかにレジスタンス(筋力)運動を併用することもあります。

編集部編集部

有酸素運動が有効とされるのはなぜですか?

清水先生清水先生

有酸素運動を行うと、筋肉への血流量が増加します。すると血液中のブドウ糖が細胞内に取り込まれ、インスリンのはたらきが改善して血糖値が低下するとされているためです。

編集部編集部

激しい運動(無酸素運動)では効果がないのですか?

清水先生清水先生

強度の高い運動などは、体を動かすためのエネルギーとして「アドレナリン」や「グルカゴン」などの血糖値を上げる作用のあるホルモンの分泌量を増やします。すると一時的に血糖値を上昇させてしまうことがあるのです。また、激しい運動を行うと血圧を上げてしまい、心臓や腎臓に負担がかかることもあります。糖尿病の患者さんは、肥満や動脈硬化などを併発していることも多いので、このように激しい運動を行うとかえって害になってしまうこともあるのです。

糖尿病治療では運動療法の継続が大切

糖尿病治療では運動療法の継続が大切

編集部編集部

運動療法は、どのように進められるのでしょうか?

清水先生清水先生

まず、検査や問診から運動療法の可否を確認します。その上で運動療法が可能であると判断した場合には、患者さんの基礎体力や体重、年齢などを考慮して運動量を設定します。最初は日常生活の中で歩数を増やすなど、身体活動量を増やすことから始め、段階的に運動を取り入れていきます。

編集部編集部

糖尿病治療のための有酸素運動では、具体的にどんな運動を行うのでしょうか?

清水先生清水先生

ウォーキングやジョギング、水泳などの全身運動が基本です。患者さんの状態によってさまざまですが、基本的には1週間のうち3〜5日程度行っていただきます。例えば、ウォーキングでは1日5000歩を目標にすることから始め、徐々に1万歩を目指すなど、段階的に運動量を上げていくことが多いでしょう。

編集部編集部

運動の強度はどのくらいで行えば良いですか?

清水先生清水先生

一般的には、中等度程度が推奨されています。軽く息が弾み、かつ苦しくない程度といえばわかりやすいでしょうか。しかし、今まで運動習慣がなかったのに、いきなり中等度の運動を行うと、不調の原因になることがあります。最初はストレッチや準備運動などから始め、主治医の指示に従って徐々に運動の強度を上げていくことが大切です。

編集部編集部

最初は軽度の運動でも、効果はあるのでしょうか?

清水先生清水先生

今まで運動を行っていなかった場合などは、軽度だったとしても運動を始めることで血糖値の改善効果が期待できるでしょう。しかし、継続しなければ効果は期待できません。運動の強度よりも、継続することが重要です。

運動療法は主治医の指示のもと行う

運動療法は主治医の指示のもと行う

編集部編集部

運動療法を行う際の注意点などはありますか?

清水先生清水先生

空腹時血糖が250mg/dl以上と高値の場合や、血糖のコントロールが不良な1型糖尿病の患者さんの場合などには、運動中に高血糖になる恐れがあります。また、反対に経口血糖下降薬を内服している場合や、インスリン注射を行っている場合などは、運動中に低血糖を生じる恐れも懸念されます。しかし、それらの場合にも、運動療法は積極的に行ったほうが良いとされているため、基本的には血糖値や症状に応じて対策を取りながら、運動療法を進めていきます。

編集部編集部

高血糖の場合や血糖値のコントロールが不良の場合には、どんな対策を取れば良いのでしょうか?

清水先生清水先生

対策などは、血糖値や症状によって異なるため、ご自身の判断では難しいでしょう。そのため、対策や注意点についても主治医の指示に従ってください。一例を挙げるとしたら、運動は低血糖を起こす心配のない食後に行うほか、万が一低血糖を生じた場合にすぐ口にできるブドウ糖やジュースなどを持っておくと良いでしょう。また、運動の前後には体を慣れさせるために、しっかりと準備運動や運動後のクールダウンを行うことも重要ですね。

編集部編集部

運動療法が制限される場合などもあるのでしょうか?

清水先生清水先生

血糖値のコントロールが不良の場合や合併症をきたしている場合などは、運動療法を制限することがあります。運動療法が制限される合併症は、網膜症によって眼底出血を生じているときや、虚血性心疾患で心臓や肺機能に異常がある場合、足の壊疽(えそ)を起こしている場合、腎不全の場合などがあげられます。

編集部編集部

では、独断で運動を行わない方が良いのですね。

清水先生清水先生

そうですね。合併症がある場合や内服治療をしている場合などは運動によってかえって不調を来す恐れもありますので、独断では行わず、主治医の指示に従って行ってください。

編集部編集部

ありがとうございました。最後に読者の皆様へメッセージをお願いします。

清水先生清水先生

糖尿病を発症している場合には、持続可能な運動を続けていくことが大変重要です。お金を払ってジムなどへ行く必要はなく、家の中でもできる運動や普段の生活の延長線で継続できるような運動を続けていきましょう。また、運動の方法がわからないという場合には、専門医に相談しましょう。中には運動が制限される場合や運動時に注意が必要な場合もありますので、くれぐれも独断では行わず、主治医の指示に基づいて行ってください。

編集部まとめ

糖尿病の運動療法では、主に有酸素運動を行います。しかし、いきなり激しい運動を行う必要はありません。最初は毎日の歩数を増やすことから始め、無理なくできる運動を継続させることが大切です。しかし、血糖値や症状によっては運動することでかえって不調を来すことがあります。運動は独断で行わず、必ず主治医の指示に基づいて行いましょう。

医院情報

清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック

清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック
所在地 〒467-0034 愛知県名古屋市瑞穂区彌富町桜ケ岡4-1
アクセス 地下鉄名城線「総合リハビリセンター駅」2番出口 徒歩4分
名古屋市営バス 清水ヶ岡バス停前
診療科目 内科・皮膚科

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