1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 糖尿病の新治療薬「セマグルチド」とは? 効果や適応、副作用について医師が解説

糖尿病の新治療薬「セマグルチド」とは? 効果や適応、副作用について医師が解説

公開日:2021/11/10  更新日:2022/08/26

2020年、糖尿病の治療で新しい治療薬が使えるようになりました。それが「セマグルチド」です。週1回注射するタイプの治療薬であり、患者さんの負担軽減が期待されています。一体どのような薬なのか、加えて安全性も気になるところです。「上福岡くろだ内科クリニック」の黒田先生にお聞きしました。

黒田 直孝

監修医師
黒田 直孝(上福岡くろだ内科クリニック 院長)

プロフィールをもっと見る

東京医科大学医学部卒業後、東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科に所属。昭島病院、仁和会総合病院糖尿病専門外来、医療法人みなとみらいなどで経験を積む。2020年、埼玉県ふじみ野市に「上福岡くろだ内科クリニック」を開院。専門分野である糖尿病や睡眠時無呼吸症候群をはじめ、大学病院や総合病院に近い検査を院内で実施し、一人ひとりに合った最善の治療を常に追求している。日本糖尿病学会専門医、日本内科学会認定内科医。日本内分泌学会、日本睡眠学会、日本禁煙学会、日本甲状腺学会の各会員。

糖尿病の治療法

糖尿病の治療法

編集部編集部

まず、糖尿病についてあらためて教えてください。

黒田 直孝黒田先生

糖尿病を簡単に説明すると、血糖を一定に抑える役割がある「インスリン」が分泌されなかったり、十分に働かなかったりすることにより、血糖値の高い状態が続いてしまう病気です。そして、高血糖の状態が続くと血管が傷つき、心臓病や腎不全、失明、足の切断など、合併症を引き起こしてしまう可能性があります。そのため、糖尿病治療においては、血糖値のコントロールを目指していきます。

編集部編集部

具体的に、どのようにコントロールするのですか?

黒田 直孝黒田先生

基本的に、まずは食事療法と運動療法で血糖値をコントロールしていきます。それでもコントロールが難しいときは、合併症の発症や進行を抑えるために薬物療法を開始します。

編集部編集部

どのような薬を使うのですか?

黒田 直孝黒田先生

糖尿病の治療では様々な薬を使用しますが、大きく分けると飲み薬と注射に分類されます。飲み薬は、「インスリンの分泌を促す」、「インスリンの働きをよくする」、「食事で摂取した糖の分解・吸収を遅らせる」、「糖の排泄を促す」など、役割によって使い分けます。一方、注射には、「インスリンの分泌を促す注射」や「インスリンそのものを補う注射」があります。

編集部編集部

様々な手法を駆使して、糖尿病の治療が進められるのですね。

黒田 直孝黒田先生

そうですね。そして、糖尿病は1型と2型に分類されています。1型は自己免疫疾患が原因となり、すい臓がインスリンをまったく作れなくなってしまった状態を指します。そして2型は、食生活などの環境因子と遺伝的体質が原因で発症した糖尿病です。1型と2型では治療法が異なりますし、同じ型であっても、その人の体格やインスリンを作る力がどのくらい残っているかなど、一人ひとりの状態によって治療法を決めていきます。

糖尿病の新治療薬「セマグルチド」とは?

糖尿病の新治療薬「セマグルチド」とは?

編集部編集部

糖尿病の新しい治療があるという話を聞きました。

黒田 直孝黒田先生

はい。2020年、日本でも糖尿病の患者さんに対して、「セマグルチド」という薬が使えるようになりました。これは週1回、注射で投与するタイプの薬です。

編集部編集部

どのような効果があるのですか?

黒田 直孝黒田先生

セマグルチドは、GLP-1受容体作動薬という糖尿病治療薬の一種です。GLP-1とは、食事をした時に小腸から分泌されるホルモンである「インクレチン」の一種です。インスリンの分泌を促進するほか、食欲を抑えたり、食後の血糖値の上昇を抑えたり、脂肪を分解させやすくしたりといった、様々な働きを担っています。

編集部編集部

インスリンを出したり、血糖値の上昇を抑えたりすることで、血糖値をコントロールするのですね。

黒田 直孝黒田先生

そのとおりです。糖尿病の治療薬としてGLP-1受容体作動薬が優れている点は、食後に血糖値が上がったときだけインスリンを分泌させるということです。つまり、空腹時には働かず、食事をして血糖値が高くなったときだけ働くため、低血糖を起こしにくいのです。

編集部編集部

既存のGLP-1受容体作動薬に比べて、セマグルチドが注目されているのはなぜですか?

黒田 直孝黒田先生

セマグルチドには、驚くべき体重減少効果があるからです。投与することで自然と食欲が落ち、少量の食事で満腹感が持続することが研究で明らかになっています。

編集部編集部

肥満防止にもつながりそうですね。

黒田 直孝黒田先生

そこがポイントだと思います。肥満になると、インスリンの効きが悪くなり、どんどんインスリンが枯渇して糖尿病を引き起こします。そのため、セマグルチドによる体重減少効果が糖尿病治療において、非常に注目されているのです。

セマグルチドを使用する上での注意点

セマグルチドを使用する上での注意点

編集部編集部

セマグルチドは、どのような患者さんに適しているのですか?

黒田 直孝黒田先生

先ほど、糖尿病には1型と2型があるという話をしましたが、セマグルチドの治療対象となるのは、2型糖尿病の患者さんです。なぜなら、GLP-1受容体作動薬は、自分自身のすい臓からインスリンを分泌させる薬だからです。そのため、そもそもすい臓からインスリンがほとんど分泌されていない1型糖尿病の患者さんに適応していないのです。

編集部編集部

副作用が心配です……。

黒田 直孝黒田先生

嘔吐や食欲減退、下痢、便秘などの副作用が報告もありますが、基本的には安全性が確認されています。また、インスリンと一緒に使う場合は、低血糖のリスクもありますので、必ず医師の指示を守るようにしてください。

編集部編集部

飲み薬はないのですか?

黒田 直孝黒田先生

2020年には、注射に加えて飲み薬も認可されました。こちらは1日1回の服用になるので、「注射を打つのが怖い」という人には朗報だと思います。

編集部編集部

インターネットで、ダイエット薬として販売されているのを見ました。安全性はどうなのでしょうか?

黒田 直孝黒田先生

セマグルチドは、けっして痩せ薬といった類のものではありません。医学的に血糖値や体重のコントロールが必要な患者さんに対して、処方される薬です。そのため、セマグルチドをはじめとするGLP-1受容体作動薬は、病院で処方されるべきものです。個人輸入などで手に入れることもできるかもしれませんが、品質が不明瞭なものもあるので絶対に控えましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

黒田 直孝黒田先生

糖尿病の治療薬には、注射薬以外にも、SGLT2阻害薬やメトホルミンなど、エビデンスのある薬もたくさんあります。個人的には、それらの薬を飛び越えて、いきなりセマグルチドのようなGLP-1受容体作動薬を使用するのがいいとは言えないケースもあるのではないか、と考えています。一人ひとりの症状や体の状態、ライフスタイルなどによっても、最適な治療薬は変わってきます。「新しい薬だから」といって安易に飛びつかず、かかりつけ医と相談したうえで使用を検討するのがいいのではないでしょうか。

編集部まとめ

セマグルチドには、体重減少効果が期待されており、2型糖尿病に適用されているとのことでした。このように、進歩がめざましい糖尿病の治療薬。しかし、最適な治療薬は、一人ひとり異なります。特に、糖尿病治療は長期的なスパンでみていくため、医師と相談して治療方針を決定しましょう。

医院情報

上福岡くろだ内科クリニック

上福岡くろだ内科クリニック
所在地 〒356-0004 埼玉県ふじみ野市上福岡1-7-5
アクセス 東武東上線「上福岡駅」 徒歩1分
診療科目 内科、糖尿病内科、内分泌内科