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糖尿病は治らない? 専門医が糖尿病になると治らないと言われる理由・対策・治療法を解説

 公開日:2023/08/13
糖尿病は治らない? 専門医が糖尿病になると治らないと言われる理由・対策・治療法を解説

日本でも患者数が急増している糖尿病「糖尿病になると、一生治らない」という言葉を聞いたことがある人もいると思いますが、はたしてこの説は事実なのでしょうか。また、糖尿病になったら、どのような治療法をするのかも気になるところです。今回は糖尿病に関する疑問を、「豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック」の澤口達也先生に解決してもらいました。

澤口 達也

監修医師
澤口 達也(豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック)

プロフィールをもっと見る
日本大学医学部医学科卒業。その後、東京医科歯科大学初期臨床研修医、東京都健康長寿医療センターや横浜市立みなと赤十字病院に勤務、獨協医科大学心臓・血管内科 / 循環器内科助教を務める。2023年、東京都江東区に「豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック」を開院。医学博士。日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会認定内科医、日本医師会認定健康スポーツ医。日本内科学会、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会、日本内分泌学会、日本甲状腺学会、日本アレルギー学会、日本ステロイドホルモン学会の各会員。

糖尿病になると治らない!? 「糖尿病は治らない」と言われる理由や完治・寛解しない原因を糖尿病専門医が解説

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編集部編集部

「一度、糖尿病になると治らない」と聞いたことがあります。これは本当ですか?

澤口 達也先生澤口先生

「治る」の定義にもよりますが、例えばこれまで生活習慣が乱れていて、それによって高血糖や糖尿病と診断された人の場合、生活習慣を改善することで血糖値が正常化することがあります。これを「治る」と定義するなら、糖尿病は「治る」と言うことができます。

編集部編集部

それなら、なぜ「糖尿病は治らない」と言われるのですか?

澤口 達也先生澤口先生

仮に、生活習慣の改善により血糖値が正常化したとしても、その人が再び以前のような生活習慣に戻ってしまえば、また血糖値が上昇してしまいます。若い頃は過食したり、運動をしなかったりしても、血糖値が上がらずに済んでいたかもしれませんが、もうその頃のようには戻りません。そういった意味で、「糖尿病は一度発症すると治らない」と言われることが多いのでしょう。

編集部編集部

基本的には、糖尿病を発症すると治らないのですね。

澤口 達也先生澤口先生

糖尿病は大きく「1型糖尿病」「2型糖尿病」「その他の糖尿病」に分類できるのですが、9割以上が遺伝的要素と生活習慣が組み合わさって発症する2型糖尿病です。2型糖尿病の場合、治療をすることで血糖値を下げることはできます。しかし、生活習慣の見直しなど、生活に気をつけないと、再びすぐに血糖値が上昇してしまいます。そのため、完治しないと言われています。

編集部編集部

生涯、ずっと注意しなければならないということですか?

澤口 達也先生澤口先生

基本的にはそうなります。ただし、病気の程度にもよりますが、必ずしも経口薬や注射薬による治療が必要になるわけではありません。生活習慣を改めたり、肥満を解消したりすることで、血糖値を低く安定させることができます。

糖尿病の治療法 インスリン治療以外にも食事療法や運動療法で血糖値は改善する?

糖尿病の治療法 インスリン治療以外にも食事療法や運動療法で血糖値は改善する?

編集部編集部

糖尿病はどのように治療するのですか?

澤口 達也先生澤口先生

糖尿病の治療法は、大きく分けると「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3種類があります。このうち、食事療法と運動療法は基本的に全ての患者さんに対して必要な治療法です。これらをおこなっても改善しない場合や初診時から高血糖を認めている場合など、医師が必要と判断した場合には薬物療法がおこなわれます。

編集部編集部

薬物療法では、どのような治療をおこなうのですか?

澤口 達也先生澤口先生

薬を投与することで血糖値をコントロールし、合併症の進行の予防や健康寿命の延長を目指します。2型糖尿病の患者さんには主に経口血糖降下薬を使用しますが、状態に応じて注射薬(インスリン、GLP-1/GIP受容体作動薬)を使うこともあります。

編集部編集部

運動療法や食事療法だけでも、血糖値が改善することはありますか?

澤口 達也先生澤口先生

初期であれば、これらをおこなうことで十分、改善が期待できます。反対に、薬物療法をおこなっている場合でも、食事療法や運動療法をきちんと継続しなければあまり治療効果を期待することができません。基本的には、食事療法と運動療法は一生涯、続ける必要があります。なお、1型糖尿病の人では体内でインスリンを作れない状態のため、病初期からインスリン注射をおこなうのが一般的です。

編集部編集部

食事療法の具体的な内容について教えてください。

澤口 達也先生澤口先生

肥満の場合は、減量することが重要です。1日の目安とするエネルギー量を設定して、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどをバランスよく摂取することが必要です。腎機能障害などの合併症がない場合には、食べてはいけないものは特にありませんが、1日のエネルギー量を超えたり少な過ぎたりしないようにしましょう。なお、日本糖尿病学会は極端な糖質制限は推奨しておらず、1日の摂取カロリーのうちの約半分程度は炭水化物(≒糖質)で摂取することを推奨しています。

編集部編集部

運動療法はどんなことをするのでしょうか?

澤口 達也先生澤口先生

運動は「レジスタンス運動(筋力トレーニング)」と「有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)」の2つに大別されます。普段、私が患者さんに指導するときは「筋トレなどのレジスタンス運動でも、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動でも、どちらでも良いので、ご自分が好きな方、続けやすい方から取り組んでください」とお話しています。どちらの運動も血糖値の改善には効果があるとされていますし、運動は長期的に続けることが最も大事なので、ご自分が取り組みやすい運動からスタートするのが大切です。

編集部編集部

運動をすると、どのような効果が期待できますか?

澤口 達也先生澤口先生

運動をすることにより血糖が消費されたり、インスリンに対する感受性が改善したりして、インスリンの効きがよくなることで血糖値が改善します。また、消費エネルギーが増すことで、肥満の改善や体重管理にも効果的です。

一生治らないと言われる糖尿病との正しい向き合い方 糖尿病治療を放置するとどんな合併症リスクがある?

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編集部編集部

治療をせずに放置すると、どうなるのですか?

澤口 達也先生澤口先生

高血糖の状態が続くと、毛細血管や神経などに障害が表れます。その結果、「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」などの合併症が進行し、場合によっては重篤な状態になることもあります。また、「脳梗塞」や「心筋梗塞」など、大きな血管の障害も起こり得ます。そうした状態を引き起こさないためにも、治療によって血糖値が安定した後も、治療を継続していくことが必要なのです。

編集部編集部

糖尿病の合併症は怖いと聞いたことがあります。

澤口 達也先生澤口先生

たしかに、糖尿病網膜症が進行すれば失明のリスクがありますし、糖尿病腎症が悪化すれば人工透析を受けなければなりません。また、神経障害が起きれば手足のしびれや痛み、感覚の麻痺が出現したり、ひどい下痢・便秘などを引き起こしたりします。手足の血流が悪くなってしまうと、最悪の場合は手足を切断する事態にもなり兼ねません。実際のところ日本において、失明の原因で2番目に多いのが糖尿病ですし、人工透析を受ける原因疾患の第1位も糖尿病と言われています。

編集部編集部

糖尿病の合併症はQOLを低下させる要因にもなるのですね。

澤口 達也先生澤口先生

そうです。そのため、糖尿病治療では合併症を予防することが目的の1つになります。

編集部編集部

糖尿病を予防するためには、どうしたらいいのでしょうか?

澤口 達也先生澤口先生

まずは「健康的な食事を摂る」「適切な運動習慣を身につける」ことが必要です。また、ストレスと糖尿病の関係性も指摘されており、ストレスが溜まったり睡眠不足だったりしても血糖値が上がりやすくなることから、日常的にストレスを溜めないよう工夫することが大切です。加えて、アルコールの多飲や喫煙も糖尿病による合併症の発症リスクを高めますから、節酒・禁煙を心がけましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

澤口 達也先生澤口先生

糖尿病の初期は自覚症状が表れないため、危機感を持つことが難しいとは思いますが、血糖値を高いままにしておくと、知らず知らずのうちに合併症が進行していきます。糖尿病の合併症は基本的に「悪化したものを健康な状態に戻す」という治療はなく、合併症の進行を抑制することしかできません。そのため、合併症が悪化する前に血糖値を正常化し、合併症を発症・進行させないことが重要です。「糖尿病を発症しても適切に治療をすることで、10年くらい寿命が伸びる」という海外の論文もあります。しかし、適切に治療をしなければ寿命が短くなる場合もあると言い換えることもできます。定期的に健診を受けて、万が一健診で異常があれば、必ず医療機関を受診しましょう。

編集部まとめ

糖尿病は規則正しい食事や運動などである程度、予防することが可能です。発症してから治療するのではなく、発症する前に予防することが肝心。万が一、血糖値が高い状態が続いても初期なら生活習慣を改善することで血糖値を安定させることができます。まずは定期的に健診を受け、血糖値に異常がないか調べるところから始めましょう。

医院情報

豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック

豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック
所在地 〒135-0061 東京都江東区豊洲5-2-12 豊洲BAYSIDEクリニックビル5F
アクセス ゆりかもめ「豊洲駅」 徒歩1分
東京メトロ有楽町線「豊洲駅」 徒歩2分
診療科目 内科、糖尿病内科、内分泌内科、皮膚科、形成外科、美容外科、美容皮膚科

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