無痛分娩の流れを産婦人科医が解説 出産準備・当日・産後の流れについて説明
無痛分娩が実際にどのような流れで行われるか、どのように麻酔を使うのか、分娩後はどうなのかなどを知る機会はなかなかないかもしれません。そこで無痛分娩の流れや注意点などについて、産婦人科医の金子英介先生(金子レディースクリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
金子 英介(金子レディースクリニック)
目次 -INDEX-
計画無痛分娩のための準備とは? 出産に入院は必要? 無痛分娩希望の場合最初の受診や分娩日の予約はどうするの?
編集部
無痛分娩について教えてください。
金子先生
出産の痛みはよく「鼻からスイカを出すくらいの激痛」などと言われていますが、無痛分娩はそれほどまでの苦痛や恐怖を麻酔を使って和らげながら行う分娩のことです。
編集部
無痛分娩を希望する場合、最初の受診で伝えれば良いのでしょうか?
金子先生
そうですね。もっと言うと、無痛分娩を受けられる施設は限られていますので、受診する病院を決める段階で無痛分娩に対応しているところを選ぶということが必要になります。また、無痛分娩対応でも「自然無痛分娩」と「計画無痛分娩」とがあり、それらも医療機関によって対応していたり、していなかったりする場合があります。
編集部
無痛分娩にも、自然分娩と計画分娩があるのですか?
金子先生
そうですね。あらかじめ分娩日を決め、計画的に行うのが「計画無痛分娩」で、自然な陣痛が来るのを待ち、陣痛の感覚をみながら麻酔を開始するのが「自然無痛分娩」です。
編集部
計画無痛分娩の場合、出産日や入院日はどのように決められるのですか?
金子先生
医療機関によっても異なると思いますが、妊婦健診で子宮口の開き具合などを確認しながら、分娩に適した日を予測し、予定した分娩日の当日もしくは前日に入院という流れが多いかと思います。
無痛分娩当日の流れを産婦人科医が解説 出産予定日前日から入院は必要? 麻酔はどのように行う? 陣痛が早く来た場合は?
編集部
麻酔は注射一回で投与するのですか?
金子先生
いいえ。一度に大量の麻酔を注射するのではなく、出産の状況に応じて「複数回」「少しずつ」入れます。これは、より安全に出産するための措置です。複数回に分けることにより、長い出産時間になっても、麻酔が切れるリスクをなくすことができ、また、少しずつ入れることにより、妊婦さんに異常があっても、すぐに対応することができます。
編集部
具体的に、どのように麻酔を投与するのですか?
金子先生
分娩前に、背中にカテーテル(管)を入れておきます。そこから出産の進行にあわせて、必要な時に必要な量の麻酔を投与していきます。
編集部
予定分娩の場合の無痛分娩当日の流れを教えてください。
金子先生
初産婦の場合は前日の夜に入院、経産婦であれば分娩当日の朝入院と、入院のタイミングは異なりますが、どちらの場合も分娩当日は、分娩着に着替え、背中から無痛分娩用のカテーテルを挿入し、そのあとすぐに腕から点滴のルートを確保します。その後、人工破水を行い、陣痛促進剤を使って分娩という流れですね。
編集部
では、予定分娩の日よりも早く陣痛が来た場合はどうするのですか?
金子先生
当院の場合でしたら、24時間麻酔の対応ができますので、すぐに背中のカテーテルを入れて麻酔を開始していきます。しかしながら、医療機関によっても違うため、無痛分娩に対応できなかったり、対応はできても麻酔科医が来るまで待たなければならなかったりといったことも考えられます。こちらについても、分娩予定の医療機関で確認しておくことをお勧めします。
無痛分娩で無事出産した後の流れは? 自然分娩と比べてどのぐらい安静が必要? 産後の回復・肥立ちや注意点も聞きたい
編集部
麻酔を使うと、分娩時や出産後もぼーっとしているのですか?
金子先生
そんなことはありません。痛みを伝える「感覚神経」のほうに麻酔の効果が表れやすく、体を動かす「運動神経」は麻酔の影響が少し出づらいので、痛みは軽減されていながら、分娩時に力むことなどはできます。また、脳そのものに麻酔をかけるわけではないので、出産の喜びなどはきちんと感じることができます。
編集部
自然分娩と比べて、産後に何か違いはありますか?
金子先生
痛みに耐えるために使う体力が温存されますので、産後の疲れが非常に少なく済みます。もちろん出産なので疲れはしますが、一晩寝れば元に戻る程度だと思います。自然分娩の場合、そこに育児も重なってきて、3日〜1週間くらいはお産の疲労が残ります。
編集部
では、無痛分娩後に注意する点などはありますか?
金子先生
出産直後は麻酔の影響で脚の感覚が鈍かったり、尿意がわかりにくかったりしますが、分娩を終えてから2時間経てば麻酔の影響は完全に消えますので、その後の注意点は特にありません。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
金子先生
陣痛の痛みを恐怖として感じたり、陣痛の痛みに対する母体の反応で、出産自体が危険にさらされたりするリスクがありますが、無痛分娩を選択することでそれらのリスクを大幅に減らし、より快適に、より安全にお産を進めることができます。ただそれは、「すべての人に無痛分娩が最適」ということではありません。妊娠中から、ご自分の分娩はどうなりそうかを想像したり、パートナーと話し合ったりして、さまざまな選択肢を検討することをお勧めします。また、陣痛がきてからでも、ご自身の感覚に応じて臨機応変に無痛分娩を選択していくとよいでしょう。24時間365日無痛分娩に対応している病院で出産するほうが、選択肢は広がると思います。
編集部まとめ
無痛分娩といっても、自然無痛分娩や計画無痛分娩があり、さらに計画無痛分娩も、初産婦と経産婦で、流れが異なるようです。「自分はどうなりそうか」などをしっかり考え、臨機応変に選択していけたら良いですね。
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