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無痛分娩の出産リスクやメリット・デメリットはご存じですか? 産婦人科医解説

 公開日:2023/10/19
無痛分娩の出産リスクやメリット・デメリットを産婦人科医が解説 注意点も知りたい

無痛分娩」についての情報は、インターネットやさまざまなメディアにあふれています。痛みが緩和されるというのは分かっていても、中にはネガティブな情報を見てしまってなかなか選択できないという方もいるかもしれません。そこで、実際に無痛分娩を行っている産婦人科医の金子英介先生(金子レディースクリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。

金子 英介

監修医師
金子 英介(金子レディースクリニック)

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2001年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、帝京大学ちば総合医療センター、関東中央病院、公立昭和病院、東京大学医学部附属病院麻酔科、国立成育医療研究センター病院新生児科での勤務を経て2009年金子レディースクリニック開院。日本産科婦人科学会専門医。母体保護法指定医。

無痛分娩とは? 陣痛・出産・自然分娩が痛い理由と無痛分娩が可能な理由を産婦人科医が説明

無痛分娩とは? 陣痛・出産・自然分娩が痛い理由と無痛分娩が可能な理由を産婦人科医が説明

編集部編集部

「無痛分娩」について教えてください。

金子 英介先生金子先生

無痛分娩とは、麻酔を使って痛みを和らげながら行う分娩のことです。出産の痛みは、「鼻からスイカを出すような激痛」などとも言われることもあります。それほどまでの苦痛や恐怖を和らげるために、無痛分娩はあります。

編集部編集部

そんな激痛をどのようにして無痛に出来るのですか?

金子 英介先生金子先生

まず、無痛分娩は「無痛」という言葉はついてはいますが、実際には「全く痛くない」というわけではありません。痛みを「大幅に軽減する」ものだと思ってください。仕組みとしては、痛みを脳に伝える「感覚神経」に麻酔をかけることによって、「痛い」と感じにくくすることができるのです。脳から体に司令を伝える「運動神経」には影響が少ないため、分娩中に力むことも出来ますし、脳そのものに麻酔がかかるわけではないので、出産の喜びなどはきちんと感じることができます。

編集部編集部

なぜ、完全に無痛にできないのですか?

金子 英介先生金子先生

ひとつは、痛みを完全になくしてしまうと運動神経も麻痺してしまい、力むことができなくなるからです。もうひとつの理由は、一回に大量の麻酔を注射するのではなく、出産の状況に応じて「複数回」「少しずつ」麻酔を入れるからです。これは、より安全に出産するための措置です。複数回に分けることにより、長い出産時間になっても麻酔が切れるリスクをなくすことができ、また少しずつ投与することにより妊婦さんに異常があってもすぐに対応することができるのです。

編集部編集部

複数回投与するということは、陣痛中や分娩中に何回も注射するのですか?

金子 英介先生金子先生

いいえ、そうではありません。出産前に、背中にカテーテル(管)を入れておきます。ここから出産の進行にあわせ、必要な時に必要な量の麻酔を注入していきます。

無痛分娩で出産するメリット・デメリットとは? 死亡事故や障害など副作用のリスクはどのくらい?

無痛分娩で出産するメリット・デメリットとは? 死亡事故や障害など副作用のリスクはどのくらい?

編集部編集部

無痛分娩にはどんなメリットがありますか?

金子 英介先生金子先生

まずは、痛みがかなり緩和されるため、穏やかな気持ちで出産に臨めるという点があります。また、痛みで血圧が上がったり、妊婦さんが必要以上に力んでしまったり、精神的に不安定になったりして母児が危険な状態になることもあるのですが、無痛分娩にすることによってそれを防ぐことができます。さらに、痛みや恐怖心が軽減することで体力の消耗を抑えることもできるため、産後の回復が早いというメリットもあります。

編集部編集部

では、デメリットはありますか?

金子 英介先生金子先生

「微弱陣痛による遷延分娩」があります。陣痛が始まってから麻酔薬を入れるのですが、麻酔薬の影響で陣痛が弱くなってしまい、分娩の進行が遅れることがあるのです。

編集部編集部

麻酔を使うリスクもありますか?

金子 英介先生金子先生

そうですね。麻酔が効いてくると足が痺れたり、足に力が入らなくなったりすることがあります。また、痛みが強いからといって麻酔薬を一度に大量に使ってしまうと血圧が下がり、妊婦さんや赤ちゃんに血液が回りづらくなって苦しい思いをすることになってしまいます。もちろん適切に対応することで回復させられますが、痛みを限界ギリギリまで我慢してから無痛分娩を開始すると、薬を大量に使わないといけなくなるリスクはあります。

編集部編集部

死亡事故や後遺症などのリスクについても教えてください。

金子 英介先生金子先生

死亡事故や後遺症のリスクの報告はありますが、はっきりとした数字はまだ出ていません。ただ、出産には必ずリスクはあり、その一部は先述のように、無痛分娩で回避できるものもあります。それらを考えると「無痛分娩であることのリスク」は、相殺される程度のものと考えられています。

※厚生労働省「無痛分娩の実態把握及ひ安全管理体制の構築についての研究」
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2017/171031/201706027A_upload/201706027A0007.pdf

無痛分娩にかかる費用は? 自然分娩より時間が長くなるって本当? 初産では受けられないの? 出産のお悩みに産婦人科医が回答

無痛分娩にかかる費用は? 自然分娩より時間が長くなるって本当? 初産では受けられないの? 出産のお悩みに産婦人科医が回答

編集部編集部

初産の場合、無痛分娩は受けられないのですか?

金子 英介先生金子先生

そんなことはありません。初産は、2度目や3度目の方と比べて陣痛が進むのに時間がかる傾向があるため、先ほどの「微弱陣痛による遷延分娩」が起こりやすいと考えられていることから、そのように言われているのだと思います。

編集部編集部

自然分娩と比べると、分娩時間が長くなってしまうのですか?

金子 英介先生金子先生

そうですね。自然分娩と比べると、無痛分娩での分娩時間が長くなる傾向はあると思います。少しでもスムーズにお産を進めるために、人工破水させたり、陣痛促進剤を使ったりして対応しています。

編集部編集部

無痛分娩の費用についても教えてください。

金子 英介先生金子先生

医療機関によっても異なると思いますが、無痛分娩にした場合、通常の分娩料金に数万円の追加料金がかかるという設定にしているところがほとんどです。当院の場合は通常の分娩料金プラス7万円から、無痛分娩をすることができます。

編集部編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。

金子 英介先生金子先生

陣痛の痛みを恐怖と感じる人はいると思います。また、陣痛の痛みに対する母体の反応で、出産自体が危険にさらされる場合もあります。そんな人がより恐怖心を少なく、より安全にお産ができるのが無痛分娩です。もちろん、「無痛分娩に対する恐怖」というのもあると思いますので、無痛分娩のメリットやデメリットなどをしっかり理解した上で、選んでいただければと思います。

編集部まとめ

痛みは大幅に軽減し、かつ、自分でいきめて、出産の喜びもしっかり味わえる無痛分娩。メリットやデメリットも吟味した上で、出産プランの選択肢のひとつとして、考えてもらえればと思います。

医院情報

金子レディースクリニック

金子レディースクリニック
所在地 〒182-0021 東京都調布市調布ケ丘3丁目19-13
アクセス 京王電鉄京王線 布田駅 車で3分
京王電鉄京王線・京王電鉄相模原線 調布駅 車で4分
診療科目 産科・婦人科

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