無痛分娩は本当に痛くない? 麻酔による失敗例や悪影響について説明!
副編集長の佐藤あやが、20~30代女性の気になる医療情報を専門医に聞く対談企画。産婦人科専門医・陣内理子先生に無痛分娩の麻酔方法やメリットデメリットについて徹底解説してもらいました。
監修医師:
陣内 理子(はぐくみ母子クリニック 医師)
久留米大学医学部、順天堂大学大学院修了。大学病院及び関連施設に勤務。2016年より2年間ヨーテボリ大学留学。2020年よりはぐくみ母子クリニック勤務。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、医学博士。
佐藤あや(「Medical DOC」副編集長)
モデル。最新医療に関心が高く、2021年8月から「Medical DOC」副編集長に。YouTubeチャンネル『教えてドクター・Medical DOC』でMCとして活動。一児の母としての目線にも注目。
無痛分娩は本当に痛くない? 麻酔について深堀!
陣内先生
無痛分娩は、ほとんどのケースで硬膜外麻酔という下半身の麻酔を使ったものになります。背骨の中に脊髄という神経が走っていて、脊髄から脳への伝達をブロックするのが硬膜外麻酔です。
佐藤あや
硬膜外麻酔を使って分娩するのが無痛分娩なのですか?
陣内先生
静脈麻酔もありますが、硬膜外麻酔を使うのが日本でも国外でもスタンダードですね。
佐藤あや
無痛分娩って本当に痛くないのですか?
陣内先生
無痛分娩とは痛みをとるような処置をした分娩のことで、全く痛くなかったという話ではありません。無痛分娩の理想は、痛みを完全に取り除くことですが、そうすると脚に力が入らなくなるので、さじ加減が大事なところですね。
佐藤あや
痛みを完全に感じないわけではないのですか?
陣内先生
お薬の量とか配合で痛みの少ない状態に持っていくこともありますが、個人差があるのも事実ですね。
佐藤あや
麻酔を入れるタイミングもあるのですか?
陣内先生
陣痛がきて、患者さんが希望したときに麻酔は入れます。あるいはタイミングとして、お産が急に進む子宮口4cmぐらいになった時点には麻酔を入れたいです。 計画分娩といって、事前に無痛分娩の準備をした後に誘発剤で陣痛を起こすこともあります。
佐藤あや
無痛分娩に使われる硬膜外麻酔はどのように使用されるのですか?
陣内先生
背骨と背骨の間に針を刺してカテーテルという長い細い管を入れて、局所麻酔を流して痛みをとっていきます。妊婦さんは横に寝てもらい、背骨を触りながら場所を確認して患者さんの背後で処置をします。時間としては10分もあれば終わると思います。一番痛いのは局所麻酔をした上でカテーテルを入れるときですね。そこが一番痛いかなと思います。
無痛分娩の麻酔による失敗や悪影響はないのか
佐藤あや
無痛分娩をするメリットとデメリットは何がありますか?
陣内先生
メリットとしては痛みの緩和、緊張、ストレスを軽減できるなどの効果があって、産後の回復は早いと言われています。デメリットは麻酔による合併症なのですが、お母さんの血圧が下がってしまうと、赤ちゃんの心拍も一時的に下がることがあるので、お母さんも赤ちゃんも麻酔を入れた後は容体を診ていくのが大事になります。カテーテルが本来入れたい場所と違うところに入ると、麻酔 が効きすぎて呼吸を止めてしまったり、脚に力が入らなかったりすることもあります。また、妊婦さんは血管が発達しており、血管の中にも麻酔が入りやすくなっています。そうすると、局所麻酔が体中に回り、不整脈を起こして心臓が止まってしまうこともありえます。しかし、麻酔を入れた後の管理で早期発見することはできます。命にかかわることも起こり得ますが管理で回避はできます。
佐藤あや
実際の割合として結構デメリットは起こるのですか?
陣内先生
脈が下がると赤ちゃんの心拍が落ちることはあります。麻酔が違うところに入ってしまうことも、熟練者がやっても起こり得ることではあります。
佐藤あや
麻酔をすると感覚が鈍くなると思いますが、いきむタイミングはわかるのですか?
陣内先生
理想はうまくいきめることですけど、お腹の張りが最初は感じにくいので張ってきましたと教えながら、いきんでみるというのを練習して分娩に臨むよう指導しています。
佐藤あや
無痛分娩じゃなくても、いついきんだらいいのか、初めてだとわからないですよね。
陣内先生
呼吸の仕方なども含めて助産師が指導してくれます。いきむときはお通じする感覚と伝えています。違うところに力入ってしまったり、ずっと緊張してしまったりするので、助産師の指導は肝ですね。