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食物アレルギーの原因は「遺伝」と「環境」のどっち? 発症のリスクを専門医が解説

 公開日:2023/04/11
なぜ食物アレルギーになるの?発症のリスクを専門医が解説

まだまだ社会的に認知や理解が不十分な「食物アレルギー」。当事者やご家族にとって、生活していく上で大きな問題となることも多いでしょう。食物アレルギーになる原因として、影響が大きいのは遺伝と環境のどちらなのでしょうか。また、食物アレルギーを予防する方法はあるのでしょうか。アレルギー専門医であるおやなぎアレルギークリニック院長の小柳貴人先生にお話を伺いました。

小柳 貴人

監修医師
小柳 貴人(おやなぎアレルギークリニック)

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新潟県加茂市出身。2003年に帝京大学医学部卒業、新潟大学医学部小児科学教室入局。新潟県内の複数の大学関連病院小児科で勤務。2010年よりアレルギー分野の研究に携わる。2016年新潟大学大学院修了、医学博士取得。2022年新潟県長岡市に「おやなぎアレルギークリニック」を開院。日本小児科学会認定小児科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医。日本小児科学会、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本小児臨床アレルギー学会、日本小児呼吸器学会に所属。

アレルギーの原因とは?

アレルギーの原因とは?

編集部編集部

どのようなことが原因で食物アレルギーになるのでしょうか?

小柳 貴人先生小柳先生

一般の方では、親に卵アレルギーがあると子供も卵アレルギーになるといったように、遺伝するものと思っている方が多いように見受けられます。しかし、近年の研究で「食物アレルギーは主に後天性の疾患であり、生まれた後にアレルギー体質が作られる」というデータが集まってきています。

編集部編集部

食物アレルギーを引き起こす遺伝はほぼないと考えてよいのでしょうか?

小柳 貴人先生小柳先生

直接的に食物アレルギーを引き起こす遺伝子というのは見つかっていないようです。食物アレルギーを引き起こす責任遺伝子を見つけるために様々な研究がおこなわれましたが、決定的な証拠は見つかっていないというのが現状です。

編集部編集部

その他、食物アレルギーの発症に関係する要因などあるのでしょうか?

小柳 貴人先生小柳先生

食物アレルギー発症に関わる要因について様々な研究がおこなわれています。その中でも「湿疹のある赤ちゃんが食物アレルギーになりやすい」という事実が多くの研究で裏付けられています。特にアトピー性皮膚炎のような、全身に皮膚炎が起きてしまうような状態ほど発症しやすいようです。

経皮感作と経腸管感作について知る

経皮感作と経腸管感作について知る

編集部編集部

食物アレルギーになってしまう原因である「経皮感作」について教えてください。

小柳 貴人先生小柳先生

皮膚の保湿ができず、乾燥肌がひどくなると皮膚がボロボロ、カサカサになってしまい皮膚炎を起こします。結果として、皮膚のバリア機能が障害されると、皮膚の表面から食物の成分が中にしみ込んで入ってきます。それを身体が侵入してきた“敵”と認識して、食物アレルギー体質が出来上がるというのが「経皮感作」です。これが食物アレルギーの原因として1番大きいものです。

編集部編集部

ほかにも何か原因はあるのですか?

小柳 貴人先生小柳先生

最近の研究で注目されてきているのが「経腸管感作」というものです。これは、腸の中でアレルギー体質が作られているのではないかという考え方です。産まれてから3日以内に粉ミルクを飲むと牛乳アレルギーになる可能性が上がるという報告があります。また、産まれたてで大豆乳(大豆を原料とした粉ミルク)を飲むと大豆アレルギーになりやすいのではないかというデータもあり、経腸管感作も食物アレルギーの経路として無視はできません。

編集部編集部

産まれてから3日以内の子と2週間以上経ってからの子の違いは何なのですか?

小柳 貴人先生小柳先生

腸管感作については、まだ研究が始まったばかりですが、個人的な推測としては、ビフィズス菌のような腸内細菌が定着する前に粉ミルクを飲むと牛乳に感作が起こってしまい、牛乳アレルギーになるのではないかと考えています。1週間ぐらいすると腸内細菌が徐々に腸の中に定着していくので、それ以降に食物を食べると、それはアレルギーを予防していく方向に働くのではないかと考えています。

食物アレルギーの予防方法とは

食物アレルギーの予防方法とは

編集部編集部

経皮感作を予防する方法について教えてください。

小柳 貴人先生小柳先生

経皮感作については、乾燥肌や肌荒れを予防し、湿疹になってしまっても早期に治療をおこない、軽い状態で終わらせることが重要です。特に、アトピー性皮膚炎の両親のお子さんは、かなりの確率で皮膚炎を強く発症しますので、産まれたてから保湿剤を使用するなど、適切なスキンケアをおこない、アトピー性皮膚炎の発症を予防する努力が必要です。家系にアトピー性皮膚炎の方がいないお子さんでも、乳児湿疹や皮膚炎を発症する可能性がありますので肌荒れや乾燥肌が始まった段階から、保湿剤を塗るなどのスキンケアが必要であると考えられます。

編集部編集部

お父さんお母さんが日常生活で経皮感作を起こさないために、気をつけるべきことはありますか?

小柳 貴人先生小柳先生

理論的には肌荒れや乾燥肌がなければ経皮感作は起きません。しかし、明らかな乾燥肌や湿疹がなくても食物アレルギーになってしまう場合もあります。目に見えない程度の湿疹や乾燥肌でも経皮感作が起きているかもしれません。また、石鹸などで過剰に皮膚を洗ってしまうと皮膚の表面を守っている皮脂や皮膚の常在菌が減少し、皮膚のバリア機能が崩れてしまう可能性があるので注意が必要です。

編集部編集部

経腸管感作を予防する方法はあるのですか?

小柳 貴人先生小柳先生

経腸管感作に関しては、研究が始まったばかりの段階で予防まで議論が至っていないのが現状です。ただ、近年報告された研究結果から考察すると、産まれてから数日の間はむやみに母乳以外のタンパク質を摂取しない方が良いのかもしれません。母乳が出ない場合は、牛乳をアミノ酸レベルまで分解した“アミノ酸乳”という人工乳を代用することで乳アレルギーを防げる可能性があります。アミノ酸乳は値段が高いなどの問題点もあるため、全員が利用できるものではありません。今後の研究発展に期待しましょう。

編集部まとめ

食物アレルギーの原因と予防について詳しく解説していただき、食物アレルギーを引き起こす主な原因が実は遺伝ではないということを教えていただきました。食物アレルギーの多くは後天的なもので予防できるということ、とくに皮膚のケアが重要だということは、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思いました。また出産後の母乳やミルクについては、産前でこれからお父さんお母さんになる方にも興味深い情報だったのではないでしょうか。読者の皆様もこれを機に、食物アレルギーついて興味を持って頂けましたら幸いです。

医院情報

おやなぎアレルギークリニック

おやなぎアレルギークリニック
所在地 〒940-1161 新潟県長岡市左近3丁目61−2
アクセス JR「宮内駅」 徒歩20分
市立劇場前バス停下車 徒歩 5分
三和町バス停下車 徒歩 4分
診療科目 アレルギー科 小児科

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